登場人物紹介(第一話~第三話)
エリザベス・アン・ランカスター
愛称はエリー。本作の主人公。ランカスター公爵家の四女にして、九人きょうだいの末っ子。
前世は現代日本で暮らしていた十四歳の少年。
事故をきっかけに異世界へ転生し、公爵令嬢として新しい人生を始めた。
読書や料理、家事などの静かな作業を好む、穏やかで控えめな性格。
他人を放っておけない優しさを持つ一方、自己主張が苦手で、周囲が求める「正しい姿」に自分を合わせようとする傾向がある。
前世では、その気弱さや趣味を「男らしくない」と否定されていた。
しかし今世では、同じ性格や振る舞いを「淑やかな理想の令嬢」として高く評価されている。
淑女教育には早く順応したものの、それは自分を受け入れたからではない。
決められた作法に従うことで否定を避け、「理想の令嬢」という仮面の下に本心を隠している。
「僕」であることと「エリー」であることの間で揺れながら、ヘンリーとの出会い、そして結婚を経て誰かが決めた正解ではなく、自分自身の生き方を模索していく。
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メアリー・アッシュフォード
ランカスター公爵家の長女。エリーにとって、二十二歳年上の異母姉。
すでに結婚しており、エレノアという娘がいる。
明るく愛情深い性格で、年の離れた妹であるエリーを心から可愛がっている。
エリーが五歳のときに正式な顔合わせを行い、緊張していたエリーを優しく抱き上げた。
エリーの母であるシャーロットとは一歳しか違わない。
そのため、エリーから見れば姉でありながら、母に近い世代の人物でもある。
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エレノア・アッシュフォード
メアリーの娘。エリーより一歳年上の姪。
エリーの結婚時には13歳となっており、貴族の一員として婚約もしている。
戸籍上は姪にあたるが、年齢が近く、幼い頃から同じ淑女教育を受けてきた。
そのため、実質的には幼なじみであり、親友であり、姉妹のような存在。
淑女としての振る舞いに窮屈さを感じながらも、それを貴族女性に与えられた「役割」として現実的に受け入れている。
役割そのものに疑問を抱くエリーとは異なる価値観を持ち、その言葉や生き方は、エリーの人生観に大きな影響を与えていく。
実は、母メアリーから呼ばれていた愛称は、エリザベスと同じく「エリー」。
しかし、二人が一緒にいると紛らわしいため、エレノア本人が愛称を「返上」した。
もっとも、メアリーと二人きりのときには、今でも時折「エリー」と呼ばれている。
「そういえば、エレノアのことも昔はエリーと呼んでいたのよ」
メアリーお姉様が、笑いながら教えてくれました。
「昔ではありません。今も、お母様と二人のときはそうでしょう」
「でも、エリーが二人では紛らわしいもの」
「ですから、私が『返上』したのです。叔母様に譲って差し上げました」
一歳年上の姪に愛称を譲られた僕は、どう答えればよいのか分からず、ただ曖昧に微笑むことしかできませんでした。
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エドワード・アーサー・ランカスター
ランカスター公爵家当主。エリーの父。
厳格で頭脳明晰な人物。公爵家を守る家長として圧倒的な威厳をまとっており、エリーからは恐れられている。
しかし、その厳格さもまた、公爵という重い役割を果たすための「仮面」である。
その仮面の下に、不器用ながら家族を深く愛する一人の人間としての顔を隠していることを、エリーは知っている。
兄や姉たちに比べて遠慮がちで、ほとんど要求を口にしないエリーと、どのように接すればよいのか分からずにいる。
エリーのことは「最も心配な子」として見守っている。
学生時代には、身分の差を越えてジョンソン・デイヴィッドと親友になった。
卒業後も交流を続けており、その信頼関係がランカスター家とデイヴィッド家を結びつけることになる。
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シャーロット・メアリー・ランカスター
エリーの母。ランカスター公爵夫人。
穏やかで包容力がありながら、強い芯を持つ女性。転生直後のエリーを優しく抱きしめ、その不安を和らげた。
厳格なエドワードが弱音を見せることのできる、数少ない相手でもある。
公爵という重い役割を背負う夫を支え、彼が家長の仮面を脱ぎ、一人の人間に戻ることのできる場所を作っている。
エリーを深く愛している一方、貴族社会における淑女の役割を自然なものとして受け入れている。
そのため、淑女として評価されることに対してエリーが抱いている複雑な思いには、まだ気づいていない。
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マーサ
ランカスター公爵家に仕えるメイド。
もともとはシャーロットに仕えていたが、後にエリーの世話を担当するようになる。
真面目で気配りができ、シャーロットからの信頼も厚い。
幼いエリーの着替えや身支度をはじめ、日常生活のさまざまな場面を支えている。
エリーを心から大切にしているからこそ、常にそばに控えようとする。
しかし、前世では自分のことを自分でしていたエリーにとって、その手厚すぎる世話は戸惑いの原因にもなっている。
エリーがランカスター公爵家を離れることになった際には、娘のアリスとともに新しい屋敷へ同行する。
エリーに、公爵令嬢として大切にされる生活を教える人物。
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アリス
マーサの一人娘。エリーより六歳年上。
幼い頃からランカスター公爵家で育ち、エリーの身近な遊び相手として過ごしてきた。
落ち着いた性格で口数は少ないが、周囲をよく見ており、エリーが無理をしているときには誰よりも早く気づく。
エリーが公爵家を離れる際には、母マーサとともに新しい屋敷へ同行する。
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ヘンリー・デイヴィッド
辺境の領地を治める子爵。
気弱で穏やかな性格だが、誠実で領民思いの人物。
柔らかな物腰の奥に、時折、その瞳には言葉にできない寂しさが浮かぶ。
他人の弱さを否定せず、直すべき欠点ではなく、守るべき大切なものとして受け止める。
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ジョンソン・デイヴィッド
ヘンリーの父。デイヴィッド子爵家の先代当主。
エドワードとは、身分の差を越えて親交を結んだ、学生時代からの友人。
卒業後も交流を続け、両家の信頼関係を築いた。
重い病を抱えているが、息子ヘンリーの将来を誰よりも案じている。
エドワードにとっては、公爵という立場を離れて付き合うことのできる、数少ない親友でもある
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