祠のお掃除
風神フィルネを祀っていた古い祠。
その正体を知り、中へ足を踏み入れたウィンダの前で、サブクエストが更新された。
ポン。
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『サブクエスト《風の止まる祠》が更新されました』
### 『祠を綺麗にせよ』
『長い年月によって荒れ果てた風神フィルネの祠を整えよう』
**《祠の苔の掃除 0/5》**
**《祠の草むしり 0/5》**
**《祭壇の復活 未達成》**
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「……いっぱい」
ウィンダは表示された三つの項目を見る。
そして周囲を見回した。
その直後。
祠の内部に五つの淡い光が浮かび上がる。
「?」
一つは入口近くの床。
一つは右側の壁。
一つは祭壇の脇。
残り二つも、苔や土で特に汚れている場所に表示されていた。
どうやら、そこを掃除すればいいらしい。
「これ」
ウィンダは一番近くの場所へしゃがみ込んだ。
石床には緑色の苔がびっしりと張り付き、その上には乾いた土まで積もっている。
だが。
掃除道具など持っていない。
「……」
ウィンダは自分の翼を見る。
翼の先には四本の爪。
少し考えて。
「これでいい」
かりっ。
爪を石床へ立てる。
苔の端へ引っかけ、そのまま引っ張った。
べりっ。
「おお」
意外と取れた。
面白くなったウィンダは、爪を使って次々と苔を剥がしていく。
べり。
べりべり。
苔の下から、長い間隠れていた灰色の石床が姿を現した。
最後に残った土を見る。
「……これは」
爪で掻き出してみる。
けれど、細かい土までは綺麗に取れない。
ウィンダは少し考えると。
翼を広げた。
ばさっ!
「……っ」
祠の中に風が起こる。
土が舞い上がった。
そのまま入口の方へ流れていく。
「できた」
ポン。
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『祠の苔の掃除 1/5』
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「……おお」
ちゃんと数が増えた。
なら。
残りも同じだった。
爪で苔を剥がす。
細かな汚れや土は翼で吹き飛ばす。
壁に張り付いている苔には、翼の先を器用に動かしながら爪を引っかける。
高いところなら、少しだけ飛び上がれば届く。
「んっ」
べりっ。
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『祠の苔の掃除 2/5』
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かりかり。
ばさっ!
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『祠の苔の掃除 3/5』
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「次」
べりべり。
ばさっ!
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『祠の苔の掃除 4/5』
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そして最後。
祭壇の横へ広がっていた大きな苔を剥がし、積もっていた土を翼で外へ吹き飛ばす。
ポン。
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**《祠の苔の掃除 5/5 達成》**
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「終わった」
ウィンダは祠の中を見る。
最初に入ったときと比べれば、ずいぶん綺麗になった。
少なくとも。
「汚くない」
満足そうに頷く。
次。
ウィンダは外へ出た。
すると。
今度は祠の周囲に、五つの光が表示されていた。
入口の両脇。
石碑の周囲。
祠の側面。
そして、裏側。
どこも背の高い草や雑草が生い茂っている。
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**《祠の草むしり 0/5》**
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「草むしり」
ウィンダは一番近くの草を見る。
翼の爪で一本掴む。
引っ張る。
ぶちっ。
「……」
もう一本。
ぶちっ。
その横を見る。
まだ大量にある。
「……いっぱい」
一本ずつ抜いていたら時間がかかる。
ウィンダはしばらく草を見つめた。
そして。
「ウィンド・カッター」
ヒュンッ!
風の刃が飛んだ。
ざざざっ!
指定された場所に生えていた草が、まとめて切り払われる。
ウィンダのMPが減少した。
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『MP 45/45 → 42/45』
『祠の草むしり 1/5』
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「これでいいんだ」
抜いていない。
刈っただけである。
だが。
システム的には問題ないらしい。
「なら」
ウィンダは次の光を見る。
「ウィンド・カッター」
ヒュンッ!
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『MP 42/45 → 39/45』
『祠の草むしり 2/5』
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「ウィンド・カッター」
ざざっ!
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『MP 39/45 → 36/45』
『祠の草むしり 3/5』
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石碑の周り。
「ウィンド・カッター」
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『MP 36/45 → 33/45』
『祠の草むしり 4/5』
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最後は祠の裏側。
「ウィンド・カッター」
風の刃が走り。
生い茂っていた草が一斉に倒れた。
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『MP 33/45 → 30/45』
**《祠の草むしり 5/5 達成》**
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「早い」
最初からこうすればよかった。
ウィンダは少し綺麗になった祠の周りを見渡す。
伸び放題だった草がなくなったことで、草に埋もれていた石畳も見えるようになっている。
石碑の周囲もすっきりした。
円形の広場の中央。
古びた祠が、ようやく祠らしい姿を取り戻し始めていた。
残っているのは。
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**《祭壇の復活 未達成》**
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「祭壇」
ウィンダは再び祠の中へ入った。
奥に残された古い祭壇。
苔や土は掃除した。
絡みついていた蔦も取り除いた。
だが。
改めて見ると。
「……壊れてる」
祭壇そのものが、かなり傷んでいた。
石板には大きな亀裂が走り。
角は欠け。
一部は完全に崩れて床へ落ちている。
左右には何かが置かれていたらしい台座もあるが、そこには何もない。
「どうするんだろう」
ウィンダが祭壇へ近づく。
すると。
ポン。
新しいメッセージが表示された。
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『《祭壇の復活》に必要なものを確認しました』
**必要アイテム**
『綺麗な石の祭壇 ×1』
『鉄の燭台 ×2』
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「……買う?」
どうやら。
掃除だけでは駄目らしい。
壊れてしまった祭壇そのものを、新しく用意する必要がある。
ウィンダは表示されたアイテムを見る。
綺麗な石の祭壇。
鉄の燭台二つ。
「持ってない」
大型ウェストポーチの中を確認するまでもなかった。
そんなものを持ち歩いているはずがない。
「町かな」
こういうものを売っている場所。
ウィンダが知っているのはアステリアだ。
あそこなら。
道具屋もある。
鍛冶屋もある。
いろいろな店もある。
どこかに売っているかもしれない。
「買ってこよう」
決めるのは早かった。
ウィンダは祠の外へ出る。
随分綺麗になった石造りの祠を振り返る。
苔はなくなった。
周囲の草も刈った。
残るのは。
祭壇だけ。
「待ってて」
誰に言ったわけでもない。
そう呟くと。
鳥脚で地面を蹴る。
ばさっ!
白い翼が大きく広がった。
円形の広場を飛び出し。
風の止まる場所を越える。
その瞬間。
蒼風平原を吹き抜けていた風が、再びウィンダの翼を捉えた。
「ん」
その風を掴む。
身体を持ち上げ。
そのまま旋回する。
向かう先は。
始まりの町、アステリア。
壊れてしまった風神の祭壇を元に戻すために。
ウィンダは必要なものを買いに、草原の空へ飛び出していった。




