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19.冒険者ギルド経営のお手伝い

 ダンジョンに行きたい! ダンジョンに行きたいぞー!!

 体は小さくても奇跡の力を駆使すれば強い力を発揮できることはすでに証明されている。だが自分ではわかっていても客観的にはそう思うことは難しい。両親<ジョセフとエミリア(女神様)>からの許可が下りない。どうにかして許可をもらわなくては。


 現在のダンジョン冒険者ギルドの経営はあまりよくない。

 このダンジョンは地下8階では動物型モンスターから皮がとれ、それがとても需要があり名産品となっていた。だが長年人気の狩場として狩られ続けたので徐々に価格が落ちてきている。価格が落ちれば旨味が減ってしまうので、冒険者は他のダンジョンへ行ってしまうわけだ。

 冒険者が減ってしまうと、ダンジョンへの戦利品に応じて手数料を取っている冒険者ギルドビジネスとしては痛い。酒場や宿屋なども冒険者が来ることによって売り上げが上がる施設にとってもダメージだ。


 モンスターの供給はダンジョンのどこかにある核を破壊しない限りは無尽蔵だ。

 ダンジョンを作った魔術師は、ダンジョンを守るためや地上への侵攻を目的とてモンスターを作り出した。自分が直接魔法で操るモンスターは当然いるが、基本的には一度作り出したら自動的に繁殖したりして増え続けるモンスターを用意している。その点においてモンスター供給への不安は無い。だがモンスター討伐が全くされなくなったらダンジョンからモンスターがあふれてくることになる。戦利品が獲られないダンジョンではそのままだと冒険者が集まらないため、国や領主から討伐クエストが出されてその賞金目当ての冒険者を集めてモンスター数を減らしていたりする。


 この都市のダンジョンは地下10階よりも下にはアンデッドエリアはが広がっている。

 骸骨戦士達の骨は珍しくもないし、粗悪な装備しかない。さらにその下は亡霊ばかりで戦利品が獲られない。さらにその先は英雄フィディアスですら命を落としたエリアとして恐ろしくて誰も探索に行こうとしない。


 冒険者の数が減ると、当然優秀な冒険者の数も減るので深層探索の難易度が上がっていってしまう。何としても冒険者を増やして攻略難易度を下げつつギルド経営を立て直さなければならない。


「はい、ご注文のお酒ですよー!」


「んー!フィーちゃん!ちょっと座っていって一緒に飲まなーい?」


「だめだめー!そんなことしたら怒られちゃうから!」


 酔っぱらった冒険者たちを適当にあしらいつつ酒場の手伝いをする。冒険者たちが今日はどんな探索をしたのかを聞くのは割と好きだった。いろんな情報が手に入るので非常に楽しく働けている。


 今日は気になる話があった。地下8階の動物型モンスターの中に珍しい個体が見つかったらしい。

 動物型モンスターはイノシシが大きくなった感じの生き物で非常に痩せていて厚いブヨブヨの皮が特徴だ。それが少し太った個体が発見され、戦利品として死体が丸ごと回収されたらしい。


 特殊個体の死体はギルドに売却され、解体所に運ばれている。興味があったので見に行くことにした。


「これは神官様、丁度良いとこに」

「お力をお借りしようとしていたところなのです」


「お肉の鑑定ですか?」


「さすがです!」

「ちょっと試してみようと思いましてね」


 皮を剥ぎ取るだけなら問題ないが、肉を食べるとなると毒が無いか調べる必要がある。そこで神官の力で食べても問題ない肉か鑑定を行ったり、食べた後のトラブルの対応として治療の力が必要になる。今回は鑑定した結果、毒などの問題は無く、味見したところ非常に上質な肉であることがわかった。ただ今まで数回しか発見されておらず、産出量があまりにも少ないのでこれが名産になるかというと厳しそうだ。


 この個体は何を条件に生まれてくるんだ? 基本的にモンスターは機械的に量産されているため、特殊な個体が出ることは外的要因である可能性が高い。

 そういえば数日前に、キャンプ中に襲撃を受けてそのまま逃げかえったパーティがいたっけ。幸いケガは無かったみたいだけど――。


 その時の事前探索申請の明細を確認してみる。パーティの所持品にかなり多めの麦の記載がある。長期ダンジョンに潜るために食料を多めに持ち込んだようだ。もしかして!


「ねーねー。お母さーん」


「フフッ、どうしたのフィーちゃん?そんなに可愛い声だしちゃって」

「何かお願い事かしら?」


 さすが女神様!わかってらっしゃる!


「クエスト発注したいんだけどいーい?」


「クエスト?あらあら、どういうことかしら?」


 クエストの内容はこうだ。

 地下8階に大量の麦をばら撒く! ちゃんと撒いたか確認するために俺も同行するからその護衛もすること! 帰還時に報酬の支払い! もちろん文面は修正する予定。


 あの個体は麦を食べて太った個体なのかもしれない。太らせることに成功すれば、あの上質な肉が新たな名産になる!


 俺は両親にクエスト発注の理由を説明した。特殊個体出現の前に大量の麦が持ち込まれて襲撃されていたこと。特殊個体の肉は上質で量産できれば新たな名産となり売り上げに貢献できそうなこと。今はお試しで麦を撒くクエストを発注するが、今後は戦利品目的にダンジョンに潜るパーティに麦を渡すようにする。もともと戦利品回収をするためにある程度荷物には余裕があるので、行きは麦を持っていき、帰りは肉を持ち帰るようにするなど。今回の経営改善のプランをいろいろ説明した。

 細かい売り上げの見込みなど見通しが立たないものも結構あったがおおむね評価された。今まで前例が無かったため、モンスターが強力になりすぎるなどの懸念などはあったが、まずは麦を撒いてみて太らせることができるかやってみることになった。


 だが俺が同行する必要があるのかという指摘をされた。代わりの信頼できる冒険者でいいのではないかと。痛いところを突かれた。でも俺はとにかくダンジョンに連れて行ってと両親に必死になって説得した。


「やっぱりみんなダンジョンに行ってみたいのねぇ……」

「あなたはどう思う?」


「うーん、そうだなぁ」

「なぁ、フィー。やっぱり男ばっかりのパーティで女の子一人は……やっぱりあれなんじゃないかなぁ」


「あれって何?」

「はっきり言ってくれないとわかんない」


「いやー、そのー」

「やっぱり力が弱い女の子だといたずらなんかされちゃったりしちゃうんじゃないかなー?」


「それなら大丈夫!」

「酒場でもみんな酔っぱらっていても変なことしてこないでしょ?」

「全然へーきだから!」


 ジョセフがどうも前向きじゃない。やっぱり心配なのだろう。麦撒いて戻って来るだけなので、探索も半日ほどかかるが日帰りだ。それに俺はもう中位の神官へ昇格している。自分の身は自分で守ることができる。あの手この手で説得を行って条件付きで許可が下りた。


 その条件はいきなり地下8階に行く前に、低層で散歩して帰還、低層でお泊りして帰還などのステップを踏んでからというもの。そして両親の知り合いである冒険者を一緒につれていくこと。あと女の子ということがばれないようにすること。


 最後の条件は兜でもかぶってしまえば何とかなるだろう。条件付きではあるものの、目的に向かって一歩踏み出すことができた。

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