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18.黒い影

 神殿に戻ると最高神官のマイセンは激怒していた。


「神殿を通さずに個人で治療を行ってはいけませんとあれほど指導しているでしょう!!」

「フィーの管理神官は誰ですか!連帯責任ですよ!!」


 めちゃくちゃ怒っている。無理やり寄付を渡されたので無料で治療をしたわけではないのだが。それでもだめだったらしい。


 結局俺は罰として当面は治療者としての活動は禁止され、神殿内の書類整理などの雑用を押し付けられることになった。俺の上司である神官からもこっぴどくお叱りを受けた。


 ――あれから数日。

 冒険者ギルドと酒場のオーナー夫婦であるエミリアと夫のジョセフとはとても仲が良くなった。二人には子供がおらず、俺には親がいないこともあって二人の養子になった。

 基本的には神殿で働いているが、冒険者ギルドや酒場の仕事も手伝うようになった。


 ギルドで働いていて気がついたが、今ならアレス達の探索明細を見ることができるかもしれない。だが俺はそんな下心ではなく、女神様にお礼がしたかったのが目的だったので、明細確認はしばらく保留することにした。


 ――そんなある日。

 俺は神殿の地下にある書斎で、一人で伝票整理をしていた。

 いいのかなぁ?いくら雑用を押し付けてやろうと言っても、神殿の金の出入りがわかるような書類触らせちゃって。

 興味本位で昔の伝票とかも閲覧して、自分が過去にしてきた寄付金がどのように使われたりしたかも確認した。最高神官はあんな感じだけど、寄付金の使い方はおかしなところはなさそうだ。だから見られても大丈夫ってことなのかな?


 珍しい伝票が見つかる。武器や防具の祝福を行った内容だ。装備を祝福するとアンデッドに対して強くなる。アンデッド限定で効果は高いが、効果は数日間程度で失われる。正直コスパは悪い。

 日付を見るとアレスが最後にダンジョン探索をしに行った日だった。パーティに同行した神官にも多額の寄付がされている。間違いない。アレス達のものだ。


 つまりアレスは事前に祝福を受けてアンデッド特攻の状態で探索に臨んだわけだ。しかも念を入れて後衛の分まで祝福している。アンデッド特攻だから亡霊相手にはもう十分だろう。さらに念を入れてできるだけランクの高い神官を連れて行った。万全すぎる。完璧だ。これだけの準備をしたのなら、もう一儲けしてやろうという気になってくる。


 だがこれだけの準備をしたのにも関わらず全滅した。一体ダンジョンで何が起きたんだ?


 すると壁の向こう側から声が聞こえてくる。確か向こうは……なんの部屋だったっけ。


「あぁくそっ!」

「重要な収入源だったのに治療してしまうからもう寄付金が得られなくなってしまった!」

「今思い出しても忌々しい!」

「症状を悪くして寄付金を吊り上げようとしたのが仇になったか!」


 話は断片的だが、すぐにピンときた。エミリアに刺さっていた呪いの棘はこいつが刺したものか?    1つはかなり昔から刺さっていた。それで長期にわたって寄付金を搾り取ってきたのだろう。冒険者ギルドのオーナーだから金は持っているはずだ。そして最近は俺たちの探索で大量の戦利品を持ち帰った。その一部はダンジョンを所有している冒険者ギルドの取り分になる。それで大きく儲けた金を狙って追加で呪いの棘を刺した。辻褄は合う。


 何を言っているかは分かったが、誰の声かはわからなかった。だが間違いない。悪党が神殿内に居る。だが相手が一人だとは限らないし、能力の素性もよくわかっていない。下手に嗅ぎまわったら返り討ちにあうぞ。慎重に行動しなくては。俺の女神様をあんな目にあわせた報いは必ず受けさせてやる。


 冒険者ギルドに戻ることにした。呪いの正体はいったん後回し。まずはアレスのパーティの事前探索申請を確認してみよう。

 普通の理由では全滅しそうにはない。それに、もしかしたら俺が裏切られた理由が何かわかるかもしれない。


 今は俺の家でもある冒険者ギルドに着いて資料を確認することにした。

 伝票にはこう記されている。探索は地下20階のみ。戦利品はアレスが全て受け取る。探索後の報酬はアレスから所定の金額を各メンバーへ支払い。

 金額は・・・すごい! あの日の探索で得たほとんどを各メンバーへ支払う内容になっている!


 戦利品は全部ひとり占めになっているが、いくら俺の高価な鎧を売却したとしてもこんな大金を支払う価値は無いぞ? 仮にアレスが俺の鉄槌に隠してある小切手の存在を知っていたとしても、やっぱりその価値は無い。大赤字だ。冒険者的には絶対あり得ない計画内容だ。つまり、この探索は金目的では無かった? 謎は深まるだけ。


 ――俺はアレスの妹を訪ねることにした。

 何かわかるかもしれない。いざ街を離れてみると、思ったよりも時間がかからずに隣の街についた。こんなに近いならもっと頻繁に帰ってやれよ……。


 アンナはすぐに見つけることができた。既に両親は亡くなっており、アンナは病気であまり元気じゃなかった。症状はあまりひどいものではなかったが、それでも定期的に治療が必要なほどで、アレスの仕送りはほとんど寄付で無くなっていた。


 そしてアンナの身体にも呪いの棘が刺さっていた……。やはり何重にも隠蔽されている。殺すつもりならばこんな回りくどいことはするはずがない。陰湿な嫌がらせだろうか? だが嫌がらせならば、これは嫌がらせだぞとわからせた方が精神的に追い詰めることができる。嫌がらせというわけでもなさそうだ。

 エミリアの時は寄付金目的で間違いなさそうだ。アンナの場合は少し違う目的がある気がする。


 幸い、アンナ治療したら完治してとても元気になった。アンナは歳というか、体格的には俺と同じくらいだ。一緒に連れて帰ったらアンナも養子に迎え入れられることになった。アンナはアレスと性格は似ておりまっすぐで正義感が強い感じだ。すぐに仲良くなって今は姉妹であり親友になっている。


 今の俺にはアレスへの恨みは無い。裏切られたことは事実。だが何か理由があったはずだ。その答えはダンジョン地下20階にある。

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