17.恩返し
冒険者ギルドにある酒場の厨房のほうに向かう。
「あのう、いつも厨房に立っている女の人って今日は居ないんですか?」
「ん?お嬢ちゃんうちのカミさんと知り合いかい?」
「うーん、ちょっと最近体調が悪くてな……」
「体調?」
女神様の夫は状況を説明してくれた。もともと身体があまり強くなかった。最近症状が悪化してもう働くことができなくなっているらしい。長年寄付を続けて治療を継続していたが完治できない状態が続いている。
実はこの冒険者ギルドのオーナーで、冒険者ギルドと酒場の経営をしている。ダンジョンを管理する冒険者ギルドは、いわば金鉱山を独占しているようなものだ。だがあまり裕福な様子ではないことろを見ると、かなり税金や神殿への寄付をしているようだ。
「あの!俺に診せてもらってもいいですか?」
「俺?キミ男の子だったのかい?」
「いえ、女です!女だからって馬鹿にされないように!」
「うん?最近はそう教育しているところもあるんだね」
「診てもらうのは構わないけど、高位の神官様や、時には最高神官様にも診てもらったんだよ」
「それでも完治しなかったんだ」
「気持ちは嬉しいけど、かなり難しいと思うよ?」
難しいと思うのは無理もない。熟練の神官たちで完治できないのだ。低位の神官で治療できるわけが無い。俺はなんとか熱意を伝えて会わせてもらうことになった。
薄暗い寝室で女神様はベッドの上で眠っていた。少し汗をかいていて、熱があるかのように思えた。夫が見守る中、俺はベッドの脇で両膝をつき、祈りのポーズをとる。
女神様の状態に意識を集中する。俺にかかれば全く問題無い。イージーモードだ! そう思っていた――。
おかしい。外傷もなく病気にもなっていない。異常が何も無い。それにも関わらず病気のような症状が発生している。
異常が見つけられずに時間ばかりが過ぎていく。探せ。絶対に何かあるはずだ。諦めるな! 受けた恩を返すためにここにやってきたんだろ!!
長時間集中し続けた。結構汗をかいてきた。だがわかってきた。
一見異常が無いように見える状態は幻で、それが何重にもなって本当の症状が隠蔽されている。 目には見えず、魔法でも検知できないだろう。数多の神官たちが見抜けなかったのも無理もない。
何か黒い棘のようなものが2本突き刺さっている。奇跡の力とは性質は似ているが、真逆の力。人を恨み、妬み、憎悪そのもの。呪いの力だ。
1本は最近刺されたものだ。もう1本はかなり昔に刺されている。俺はこの2本の棘を奇跡の力で浄化を試みた。
上手くいった。
女神様はゆっくりと目を開けた。
「おぉ……、おお!エミリア!目が覚めたのか!」
「体は大丈夫なのか?」
「あぁ、ジョセフ。もう大丈夫よ!」
「すごく元気になったわ!」
夫婦は喜び抱き合った。
その幸せな光景を見ると涙があふれた。
「ありがとう。小さな神官様」
「よかったらお名前教えてもらえる?」
「フィー……と言います」
「フィ……」
「あなたにパンを頂き、救って頂きました」
「あの時のお礼をしにやって参りました」
「……あの時の!」
覚えていてくれた。嬉しかった。
抱き合ってお互いにお礼を言い合った。喜びで満たされていく。今まで感じたことのないほどの祝福を受けた気がした。




