16.合理性が無い探索
俺を騙した悪い奴等に天罰が下った!
最初はスカッとした感覚があったが、次第に心の中に引っかかりがあることに気がつく。
なんだこの違和感は? 別に気がつかないふりしてこの件は忘れてしまってもいい。だがやっぱり何かがおかしい。アレスはどうしてまたダンジョンに行ったんだ?
おそらくあのパーティはアレスが集めた。戦士や魔術師たちはもう冒険者は引退すると言っていたし、自分から企画はしないだろう。アレスが最後のもう一回と頼み込んで集めたのだろう。
アレスには妹がいたはず。妹は並みの奇跡の力では治せないような病気にかかっていた。俺なら治療することができそうだけど、病気の状態でこの街に移動させるのには体力的に難しいそうだ。かといって俺がこの街から離れられるかというと、神殿の制約もあり難しい。それでもアレスからの頼みがあれば街から出てもよかったが、そこまでしなくて大丈夫だと言われていた。
大金があれば各地から高名な神官を集めて治療させることができるだろう。俺なら、そうする。だがアレスはそれをせずにまたダンジョンへ潜った。
俺は最後に一儲けしてやろうと危険を冒した前科があるし、それと同じ感覚だったのか? だがアレスはそこまで金に執着するような奴じゃなかったはずだ。本当に亡霊戦がイージーすぎてすぐに探索を終えられると勘違いしてしまったのか?
頭がこんがらがっている。アレス達がまた地下20階に行く理由がみつからない。何か見落としがあるかもしれない。いったん最初から、アレスの気持ちになって考えてみよう。
フィディアスは変化の薬をかぶって炎上した。炎上した仲間を助けるために水でもかけるか? だが飲料水だけでは消しきれないだろう。そうなると布をかぶせて消火をする。
いやいや、あんなに狭いところで倒れたんだ。まずは引っ張り出さなきゃ。いや、引っ張り出せるか?引っ張り出すには掴まないといけない。掴んだら燃えてしまう。燃えるわけにはいかないので燃えるのが終わるのを待つしかない。フィディアスは死ぬ。
うーん、これはどこかが間違っている。
そういえばアレスに胸倉を掴まれたとき、あいつの火傷をしていたな。あんな火傷無かったはず……。つまり燃えている俺の身体を掴んで引っ張り出したのか。そこまでしたのかあいつ……。
俺ならそんな行動したか? 炎上している味方が狭い部屋で倒れたら何もできない。炎が消えるまで見届けていただろう。そして時間がかかりすぎて大ダメージを負う。そしてこれはもう助からないと言って仲間の顔を伺う。神官がもう助からないというのなら、もうだめだろう。仕方がない。そんな雰囲気にさせる。そして死体は置いて帰還する。
それなのに俺は生きている。そういえば俺を運んでくれたのもアレスだっけ。アレス! 俺を助けてくれてありがとう! いやいや、ならばなぜ裏切った?
続きを考えてみよう。
引っ張り出して布で消火する。俺の甲冑を脱がす。鎖帷子はそのまま脱がせるか? 場合によっては何か道具で切断しなくてはならない。魔術師がいろいろ道具を持っているからそれで脱がしたのかな? そして傷の応急処置をする。
ここまでかなり時間が経過しているな……。地上についたときは朝だった。地下5階からは地上まであと2時間ちょっとで帰れる状況。松明の減り具合……。3時間くらいか? そんな長時間ボス部屋にとどまり続けるのはかなりリスクのある選択だな。だがそこまでして救出活動を行った。まさか俺の人望?なわけないか。
うーん、だめだ。どう考えても理由が見つからない。
事前探索申請の明細を見たら何かわかるかもしれない。だが閲覧できるのは冒険者ギルドの関係者に限られている。今のままでは情報が足りない。




