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12.完全回復

 目が覚める。朝だ。妙にすっきりとした目覚めだ。疲労がすっかりと抜けている。やっぱり睡眠は偉大だな。


 報酬の取り立てはまだあきらめていないが、それよりも今はどうやって生きていくかだ。


 酒場の女性はいつでも来ていいとは言っていたが、それは俺のプライドが許さない。何としても自力で生活できるようになろう。


 ガラクタの中に割れた鏡があった。破片の一番大きなところを使って自分の姿を映す。鏡に映った自分を見ると思わず目を背けてしまった。俺のことを避けて歩いていた人たちのようだ。


 ひどい姿だ。膝より上はほとんど火傷になっている。巻き付けてあった布は破れてしまったので火傷の部位はほとんど露出している。皮膚もただれている個所があったり水ぶくれになっていたりしている。片目は皮膚が癒着して開かない。声もガラガラだ。


 こんな姿のやつによくパンをあげようと思ってくれたな。きっと本物の女神様に違いない。


 状況は良くない。奇跡の力のおかげで苦痛も感じずに動くことができていたが、治療したとしてもどこまで回復できる? 多少ましになるだろうが、それでもかなり厳しそうだ。時間もかなりかかるだろう。

 これじゃまともな仕事にはつけないぞ。やっぱり女神様の助けを借りるしかないか?


 悲観しても事態は好転しない。両膝をついて祈りのポーズをとる。信じろ! 自分を! 奇跡の力を!


 そういえば目を閉じていても自分の身体の状態は把握できるな。表面はひどいものだったが内部はどこまでダメージを受けているのだろう?

 自分の身体の状態に意識を向ける。肺などを心配していたが特に異常はなさそうだ。次に表面層はどこまで治療できたかな? 異常なし。ん? 異常なし?


 目を開く。自分の手はすっかりと治療されていた。こんなに早く治った?!

 驚いて火傷がひどかった右腕をよく見てみるが、とても火傷を負ったとは思えないほど綺麗だ。しかも俺はいま両目で見ている。

 慌てて鏡を覗き込む。完全回復している!


 思ってみれば最近俺は治療をしたことが無かった。パーティリーダーをやっていた時は被害がほとんど出ていないことが続いていた。自分でも気がつかないうちにここまで成長していたのだ。


 嬉しい気持ちがこみあげてくると同時に嫌な予感がしてきた。

 改めて鏡をよく見てみる。皮膚の色や瞳の色や髪の色はたまたま同じままだ。体はかなり縮んでいる。そして火傷の状態がひどかったので気がつかなかったが、体は完全に女の子のそれだった。声を出してみるとガラガラ声もすっかり女の子の声だ。だが不思議な事にこの体に違和感はなく、ずっとこの体で生まれ生きてきたかのようだった。


 女の子ということは鉱山とかの肉体労働は難しそうだ。男を相手に商売ができるかもしれない? いやいや、ちょっと若すぎる。

 普通なら性別が変わったら混乱しそうだが、体に違和感が無かったので特に混乱せずに、次どのような行動を取るかを考えた。


 いろいろ考えたが、奇跡の力が使えるのだから神官になろう。

 まずはそれで生活できるようにして、安定してきたら報酬を取り立てたり、ダンジョンライフを再開しよう。

 今後の方針が決まると俺は神殿へと向かうことにした。

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