2話の2「地下洞窟」
少し歩けばすぐに入り組んだ場所に出る。
上下左右、あらゆる場所に立体的に金属の階段が伸びている。
見かけ上の分かれ道なんてものに意味はなく、大体の道が途中で目的地が変わっても問題がないように繋がっている。
下をのぞき込めば一番下にいる人が豆粒程度のサイズに見える。
そんな足場を歩きながらカイルはジェイクの相槌に合わせて昨日のご飯がどうだとか妻がどうだったとかそんな話ばかりしている。
もう何年も妻の話を聞いているが彼の口から愚痴が出たことは一度もない。
昨日は五人目の子供の誕生日だったため中々の御馳走だったそうだ。
ジェイクは質問する。
「てことは休暇を使ったのか」
「いや、午後だけ休みにして家内と合流した後、五番区域に買い物に行ったんだよ」
「五番か。この前、統制局の目が厳しくなったって聞いたが大丈夫だったか?」
カイルは驚いたように目を丸くする。
「おいおい、ジェイ!何も俺たちはドラッグを買いに行ったわけじゃないんだ。厳しくなろうと健全な家庭には関係ないさ」
ジェイクはそれもそうだなと返す。
それから数秒後、二人の会話が一時中断される。
なぜなら、ここに来た労働者たちは腹より少し高い位置まで台座が伸びた書見台のような機械に手を置かなくてはいけないからだ。
手を置いてしばらくすると軽い振動と共に少し青白く光りながらシステムが反応し文字が浮かび上がる。
『ジェイク・アニミニスター。健康状態:良好 残クレジット8,560,214。勤務態度:勤勉 犯罪歴:あり』
その後も引き続きいくつかの基本情報が生体データの更新時間の間流れる。
そして最後に本日の配属地が決まる。
『ジェイクさん、あなたの本日の作業場はA区域-124鉱山になります。尚、本日の勤務が終われば強制休暇が3日付与されます。本日も頑張っていきましょう』
ジェイドはその文字を見た後、台座の穴に手を入れる。軽快な音と共に腕輪が装着される。腕輪には出勤の文字が浮かんでいる。台座の横を通り抜けて円型の広場に行くと人だかりの中にカイルが待っていた。
カイルも既に腕輪をつけている。
「貯金は相変わらず貯まり続けているのか?」
「使ってないからな」
二人は腕輪に表示された勤務地を見せ合う。
カイルの腕輪には酪農:牛と書かれている。
「てことは」
「交換は無しだなジェイ」
労働者に割り振られた仕事は労働者間で交換が可能なのである。
楽な作業はそこそこの値段で取引されることもある。
といってもカイルとジェイクは昔からの付き合いなのでクレジットのやり取りはしていない。
「鉱山は体力も付くしありがたいよ」
軽く笑いながら二人は分かれる。
ジェイクは人だかりの中を通り自身の作業場につながる通路を探す。
だいたい検討をつけたら近くの階段から目的の方向に向かって繋がる道を歩けばいい。
「よお!ジェイク!今日も精が出るな」
「ジェイク!これ持つの一瞬手伝ってちょうだいよ」
「ジェイク兄ちゃん、この作業場ってどこから行けばいいの」
道を歩きながらさまざまな人間がジェイクに声をかける。彼は地下洞窟では有名なようだ。




