2話の1「地下洞窟」
朝方、狭い部屋でベッドに寝転びながら天井を眺めている男の名はジェイク、年齢は二十八歳の男性だ。
部屋を照らすのは二つほど吊るされているランプ型の灯りだ。
シーツは使い古されて、壁のコンクリートには落ちないシミがついている。貼られているポスターは彼が張ったものではない。はるか前に誰かが貼ったものだ。
しばらくするとベッドから体を起こした。
洗面台に向かった彼は剃刀を手にし髭を剃る。毎日のルーティンとなっているその行為は結果として大して伸びていない毛を剃ることとなっている。
髭と違い髪の毛は規定範囲内であれば切ることはできず、散髪は二ケ月に一度ほどのペースとなっている。
髭を剃り終わるとジェイクはしばらくの間、筋力トレーニングを始める。
部屋の中でできることと言えば読書、トレーニング、部屋の隅に設置されているチャンネルを切り替えられないテレビくらいしかない。外に出ればいくつか暇つぶしもあるが朝はそうもいかない。
なぜなら、労働があるからだ。
いつも通りのトレーニングが終わり、汗を吸った服を汚染除去クローゼットに入れ部屋の隅にあるシャワーで体を洗っていると大きなアラームが鳴り響く。その後、女性の機械音声の放送が流れる。
『十分後に労働時間です。労働者は自身の持ち場に向かってください。』
ジェイクは数分前にクローゼットに入れた服を取り出し着替える。服はパリッと乾燥しており綺麗になっている。
紐の無い靴を履き部屋を出て扉を閉め、部屋の中から汚染除去スキャナーが作動する音が聞こえてくる。
自身の綺麗になった服を見下ろしながら呟く、
「部屋の中もこれくらい綺麗にしてくれたらいいのにな」
すると横から元気よく声が聞こえてくる。
「ジェイ!それは無理な話だ」
ジェイクが横を見るとそこには男が立っていた。髪の毛は薄くお腹は太っており背はジェイクより少し低い。
その小太りの男の名はカイル。ジェイクより十五歳年上の男だ。
「汚染除去クローゼットと室内の汚染除去スキャナーは両方とも同じように汚れや汚染物質を除去できるが、シミや汚れが汚染物質じゃないのであれば室内スキャナーはその見かけだけの汚れを残しちまう」
独特なジェスチャーと共にテンポよく話すこのカイルという男はジェイクの事を生まれた時から知っている。
「今日初めて疑問に思ったがなんでだ?」
その質問にカイルは得意げに話す。
「そりゃお前さん、汚染除去クローゼットは十六年前だからお前が十二歳のころに配備されたもんだ。汚染除去スキャナーなんてのはジェイが生まれる前からあるもんだからな。性能にはデカい差があるんだよ。」
ジェイクはその説明に納得しながらカイルと共に仕事場に向かう。
彼らが歩いている場所は地上ではなく地下、光が差し込まない巨大な地下空洞の中だ。いくつかのポイントには直視するのが疲れるほどの強い光を放つ灯りが設置されている。
これらが時間に則って十二時には作業場を暑いと感じるほど照らし、十八時以降は暗くし街中の街灯を少し強くすることにより昼と夜を再現している。




