決闘決闘、呪いの黒幕
今回、とりあえず節目として一つ大きな出来事が終わります。
決闘当日、俺とラミエラは学園の決闘場の入り口で待機していた。
「まさかここでやるとはな、さすがに予想外だわ」
「多分……お父様は私達を処刑したいから……決闘で死んだら困るから……」
・・・・・・・・・そこまでしててめぇの娘を殺したいか、クズが。
「ラミエラ、頑張れよ、大丈夫、お前ならいける」
「・・・・・・・うん!!」
もう怯えてないな。心配無さそうだな。
(まあ、あの手の輩はやることが大体決まっておる。今のこの娘なら負けんよ)
ガルゴのお墨付きがもらえたな。なおさら安心して見られるかな?まあ、俺はゆっくり見ておこう。
「それじゃ……行ってくる!!」
「おう、見せつけてこい」
ラミエラは、自信を持って決闘場の中に入っていった。
「さてさて……もういるな」
俺が決闘場を除くと、全ての席が満席になっており、既にラミエラの父親は中に入っていた。
「一応、あいつのステータスも見ておくか……」
ハリアド・バーボートン、48歳、男、成長率99
体力15000
筋力20000
防御力8000
俊敏性9500
魔力0
スキル、剣術A級、槍術A級、乗馬術A級、スキル鑑定B級、威圧
装備品、魔剣【ジャッジ】、魔法防御鎧
シンプルだな、このステータス。しかし、なるほどあいつらの異様な父親への恐怖心はこのスキル、威圧のせいか。
(威圧は自分の成長率より低い者を無条件で緊張させるんじゃよ。それの使い方によっては恐怖心を植え付ける事も出来るぞい)
なるほどね~、でもラミエラの成長率は99になってるから……
(威圧のスキルはもう効かぬの)
ふははははははは!!ざまぁみろでこすけめ。
『さあさあ!!ついにこの日を迎えてしまいました!!』
解説席みたいな所から学園長がアナウンスを始める。いつもの調子で喋っているが、不安で仕方が無いんだろうな、真っ青なオーラが出まくってるよ。
『父と娘、禁断の戦い!!娘は、負ければ命がありません!!どうなるのでしょうか!!』
顔面も真っ青になってるから、不安ならやめろよ。
『ルールは簡単!!どちらかが死亡ダメージを負って外に弾き出されること!!正々堂々始めて下さい!!』
「ふん、どうやら逃げなかったようだな」
「お父様……」
「どんな事をしたか知らないが……貴様のような出来損ない、すぐに絞首台に送ってやる」
そう言って、ハリアドは魔剣を抜いた。
「魔剣よ!!私の意思に従い、敵を討て!!」
そして、ハリアドの魔剣は輝きだす。
「・・・・・・・・・・・・・」
「死ねぇ!!愚か者がぁ!!」
そして、ラミエラとの距離を詰めようと駆け出す。
「火球」
ボゴォン!!シュンッ
「・・・・・・・・・・は?」
ハリアドは困惑していた、駆け出したはずの自分が、既に決闘場の外に弾き出されていたのだから。
「なんだ今の!?」「火球って言った!?」「嘘だろ!?下位魔法じゃん!!」「てか、魔法が早すぎて何も見えなかったんだけど……」「杖も持ってないのに!?」「何なんだよ今の……」
観客達はどよめきだす。この勝負は、処刑だと思っていた者達の方が多かった。それもそのはず、この男は決して弱くない、むしろ王都の中ではかなりの有力者である。その有力者が、普通の下位魔法で外に弾き出されるというのは、考え辛かった。
「う、嘘だ!!こんなのは何かの間違いだ!!貴様、何をしたぁ!!」
ハリアドも納得いかずに異議を申し立てる。
「ぷっくくく、あっはっはっはっはっは!!」
それを見ていた玲真が思わず笑い出す。
「な、何がおかしい!!」
「いやいや、あまりにも見苦しくてなぁ」
「な、なんだと!?」
「言ったろ?あいつは呪いを受けてても魔力が100万オーバーだったんだよ。呪いが解けて、更にハードトレーニングしたからな、今の魔力は……」
「1200万オーバー、です、お父様」
「1200万、だと?」
おうおう、呆けてやがる。気合いを入れて突っ込んだのに瞬殺されたからなぁ。いい気味だわ。
「そんな馬鹿みたいに多い魔力から放たれたら、下位魔法でもあの威力になるわ」
「そんな……馬鹿な……」
「学園長、ジャッジしてくれ、あんたなら分かるだろ」
「・・・・・・・この勝負、ラミエラ・バーボートンの勝ちです!!」
学園長が宣言する。周りの観客達が一斉に沸く。俺もうれしい、思わずラミエラの頭を撫でる。
「言ったろ?大丈夫だって」
「うん……」
それでも、ラミエラの表情は暗い。そうだよな、結局父親はお前を認めてない、悲しいよな。
「認めぬ!!こんなのは何かの間違いだ!!私が出来損ない如きに負ける訳など……!!」
見苦しい奴だな……まあいい、俺も確認したい事があったからな。
「ラミエラ、決闘場から出て待っててくれ」
「レイシン君……?」
「ちょっと、確かめたい事がある」
「?うん……」
ラミエラ、決闘場から出たな……よし。
「もう一度入れよ、ハリアド・バーボートン」
「なに……?」
「レ、レイシン君?何をする気かな?」
学園長が慌ててる。安心しろや、変な事はしない。
「俺に勝てたら、俺の首はくれてやる。その代わり、ラミエラは見逃してもらうけど」
「レイシン君!?何を言ってるのかね!?」
学園長、テンパり過ぎ。ラミエラはラミエラで落ち着いてるな。予想してたの?
(こんなん誰でも分かるわどあほ)
「ふ、ふふふ、良いだろう、貴様のその思い上がり、砕いてくれる!!」
そうして奴は再び決闘場内に入った。よし、それじゃ……
「やる前に一つ聞きたい」
「なんだ……命乞いか?」
質問だって言ってるだろ耳腐ってるのか。
「あんた、ラミエラの呪いのこと、知ってたな?」
「・・・・・・・・!!」
その反応……やっぱりか……。
「おかしいと思ったんだ。ラミエラの呪いはスキルと似たような表示のされ方をする。スキル鑑定があるあんたが、気付かない訳が無い」
「・・・・・・・・・それだけで、私が知っていたと?」
「もう一つあるさ、あんたがあの魔人を雇ってた事だ。魔法が嫌いなあんたなら、あんなに魔法が使える奴雇う訳ねぇからな」
奴の顔が強張る。当たりみたいだな。
「恐らく、あんたはラミエラの異常な魔力の量に気付いていた、だから魔法を使えないように呪いをかける事を容認した、自分の一族から魔道士が出ないように」
「・・・・・・・・貴様のせいで台無しだがな」
こいつ………
「あの出来損ないが魔法を使えないようにしたのは、魔道士は我が一族にとって不穏だからだ!!剣術の才能が無くとも、魔法が使えなければどうでも良かった……それを貴様が壊した、この事態は貴様のせいだ!!」
・・・・・・・ふざけんなよ
「ふざけんなよてめぇ……そんな下らない理由で、何年も何年も……ラミエラを苦しめて、あまつさえ呪いが解けたら殺そうと……」
「だからなんだ!!そもそも剣術の才能が無いあの出来損ないが悪い!!」
「もう、いい」
もう聞きたくない。こいつの話は、声は、聞きたくない。
(・・・・・・わしも本体があれば殺しちまうわ、ここまでの愚図)
だろうな、ああだろうよ。俺はもう、我慢しないからな。
「かかってこい、てめぇのプライド壊してやる」
「馬鹿が!!我が魔剣の前に倒れ伏すがいい!!」
奴が魔剣を構えて突っ込んでくる。遅い、どれだけ待てばいい?遅すぎる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ビュオン
スローだ。こいつの魔剣、遅すぎるよやっぱり、壊していいと思うか?
(ええじゃろ、ぶっ壊してやれ)
オーライ、なら遠慮無く……!!
ヒュン、バキィン
「・・・・・・・・・え?な、は!?ま、魔剣が!?」
驚くよなぁ、お前から見たら突然自分の魔剣が砕け散ったんだもんなぁ。ただ蹴り砕いただけなのに。
「悪い、あまりにもとろくて蹴り砕いちまった」
「蹴り砕いただと!?馬鹿な、魔剣だぞ!?魔剣が蹴りで壊れるわけ……!!」
ヒュン、バキッ、グチャッ
「グギャァァァァァァァァァ!!」
俺は相手の膝を蹴り砕く。こいつ程度に魔剣を抜くのは勿体ない、蹴りで充分だ。
「わ、私の足がぁぁぁぁぁ……」
「うるせぇ奴……もういいや、終われよ、お前」
「ま、待て!!待ってく」
ヒュン、グチャァン
俺は、相手の言葉を無視して頭を蹴り砕いた。奴は決闘場の外に弾き出される。
「納得いかなければ何度でも入ってこいよ、何回でも蹴り殺してやる」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げ出しやがった……本当に情けねえ奴だな、さて……
「ラミエラ」
「・・・・・・・・・・」
泣いている、声も出さず、ただ涙を流している。呪いの黒幕、自分の可能性を潰していたのが、自分の父親だった。それは、ラミエラの心に深く突き刺さった。
「・・・・・・・・・・・」
クルリ
「何処に行く」
俺は、何処かに行こうとするラミエラの手を掴んだ。
「一人に、して……」
「駄目だ、今のお前を一人に出来ない」
「お願い、だから……」
「・・・・・・・・俺さ」
「・・・・・・・・・?」
「ガキの頃、両親が死んで、父親がどういう物かよく分からねえんだ……だけど、お前が父親を好きだったっていうのは分かる」
ラミエラの感情は、ずっと見えてた。父親の事が怖くても、尊敬していた、認めて欲しかった。だけど……そんなのお構いなしに、奴は自分の一族の利益を優先した。
「ラミエラ、頼むから絶望しないでくれ、諦めないでくれ、俺は、お前にいて欲しい」
「レイシン、君……」
「その、さ……泣くんなら、せめて俺の前で泣いてくれ、俺が隠すからさ、一人で泣かないでくれ」
あー……何を言ってるんだろ俺、もっと気の利いた言葉を言えないのか……
「ありが、ど、う、レイシン、君」
ポスッ
ラミエラが俺の胸に抱きついてくる。
「うぅ、あぁぁぁぁぁ……」
そして、そのまま泣き始めた、声を出して、泣き始めた。いくらでも泣いてくれ、俺がいるから……
(まあ、泣いてる女に言う台詞としちゃ……及第点じゃの)
うるさい、茶化すな。
(はいはい、しかし、これからどうするんじゃ?)
これからは……とりあえず、ドルシンに戻ろう。そして、いろいろ考える。
(ま、構わんぞ、いくらでも付き合ってやるわい)
そうして、俺達にとっての、大きな出来事の幕が閉じた。ラミエラが泣き終わるまで、俺はその場でラミエラを抱きしめ続けていた。
次回、また学園長と対談です。




