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あの豆柴が望んだ青空で  作者: Y


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第8話 バックヤードの破滅

第八話:バックヤードの破滅

ハルを失ってから、俺の精神は完全に崩壊しかけていた。

俺が働く「スーパーカミシマ」の夜間シフトは、相変わらず息が詰まる現場だった。


パートリーダーのおばちゃんは家庭のストレスから常に不機嫌で、バイトのミスを見つけてはネチネチと嫌味を叩きつける。レジ打ちの女子大生は今にも泣き出しそうな顔で打刻している。同僚の青年は根は良いヤツなのだが、いつも疲れ果てていて喧嘩や雑音には一切首を突っ込まず、ただ黙々と品出しをしてやり過ごしていた。


そんな険悪な日常が完全に終わったのは、ある雨の日のことだった。


就活の最終面接でお祈りメールを受け取り、そのまま夜勤に入った俺は、極度の睡眠不足と絶望で判断力がゼロになっていた。

その時、レジ前でガタイのいい筋肉マッチョな男性客がスマホを見ながらカゴを置いた。中に入っていたのは出来立ての温かい惣菜パスタ。湯気とともに漂うガーリックとトマトの香りが、俺の鼻腔を直撃した。


(あ、美味しそう……)


次の瞬間、俺の理性の糸がブツリと切れた。

気がついた時には、俺は会計もしていないそのパスタのパックを素手でひっつかみ、マッチョな客の目の前で貪り食っていた。


「……は? おいお前、何やってんだ!?」


客の怒号が店内に響き渡る。「ちょっとアンタ! 正気なの!?」とおばちゃんが飛んできて俺の肩を掴んで揺さぶった。いつも争いを避ける同僚の青年も、絶句して固まっている。


もう終わりだ。クビどころか警察に行くだけだ。必死に稼いできたバイト代も、楽しみにしていた来週の貴重な休みも、全部吹き飛んだ。


「もう……どうでもいいや……」


俺は床にへたり込み、胸ポケットの中にある「ハルの試験管」を固く握りしめた。

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