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第7話 限界の境目
第七話:限界の境目
「スーパーカミシマ」のバックヤードには、湿気を含んだダンボールと鮮魚の生臭い匂いが淀んでいた。
不機嫌なおばちゃんの吐き捨てるような嫌味も、レジ打ちの女子大生が忍ばせるすする泣き声も、まるで水中にいるように遠くぼやけて聞こえる。
同僚の青年が、心配そうにこちらをチラチラと伺っている視線すら、今の俺にはどうでもよかった。
(眠い……お腹すいたな……)
空腹感と強烈な眩暈が混ざり合い、視界の端がぐにゃりと歪む。自分が今どこにいて、なぜ商品のバーコードを打っているのかさえ怪しくなってきた。
歩くたび、胸ポケットの中に差した「ハルの試験管」が、固く冷たく俺の肋骨を小突く。その小さな突起の痛みが、俺を現実と狂気の境界線にギリギリ留めていた。
長引く就活の拒絶、愛犬を目前で殺されたトラウマ、そして極度の睡眠不足。
俺の精神のダムはすでに決壊しており、ただ表面の薄皮一枚で持ちこたえているだけの状態だった。
そして——外を叩きつける雨音が一段と激しさを増した時、運命の客がレジへ歩み寄ってきた。




