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スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ  作者: 紫楼


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第6話 異世界人の痕跡

 さ。気を取り直してまずは情報収集と言いつつ、街ブラだ。


 知らない街を歩くときは裏道に入らないのが基本だ。向こうの都会の路地裏だって危険だったからな。

 

 大通りをゆっくり歩く。

 ざわざわした街の喧騒にホッとする。大草原でぼっちは本当に心臓に悪かった。

 威勢の良い売り込み、酔っ払いの喧嘩、子供の笑い声。全部が愛おしい。ボッチはほんの少しの時間だったけどな。


 この辺りは下町なのだろうか。庶民風の衣装、入りやすそうな商店、露店だ。

 この道の先には貴族街があるんだろうな……

 遠くに大きな城と教会、そして立派な城門が見えた。


 まずは貨幣の価値を知りたいので露店を見て回る。

 木製の食器や中古の靴、中古の服……蚤の市っぽいかな。

 

 食べるものは野菜や果物、肉串、ホットドッグ……ホットドッグ!?

 あぁ~、以前にも召喚されたって言ってたから、その中の誰かが広めたのかな。


 ホットドッグの値段は銅貨三枚……三百円くらいか。わりとボリュームがあるからお得っぽい。

「一つ、くれるか」

「お、ありがとうよ」

 

 店主はサクサクっと大振りのソーセージをパンにはさんでくれた。シンプルなやつだ。一緒に売っているエールも買った。こちらは銅貨二枚。安いな。

 俺は銅貨五枚を渡して、礼を言って店の横の木製の椅子に座らせてもらって食べる。


「……」

 エールは温い。そして安いだけあって香りが弱くてアルコール度も低めだ。

 ホットドッグはパンは素朴で少しハード寄り。ソーセージはあらびき肉っぽくてワイルドだ。ハーブがたっぷり。パリパリっと皮がはじける。悪くない。

 ……贅沢を言うなら玉ねぎかキャベツを挟みたいし、ケチャップやマスタードがあるといいな。布教した人は教えなかったのだろうか。


 ここで「ケチャップはないのか」なんて言ったら時間がとられそうなので我慢だ。ホットドッグがあるなら他にも異世界人メニューがあるかも知れないからお店の個性かもしれないしな。


「ごちそうさま」

 俺が声をかけると店主はキョトンとした。あ、「ありがとう」のほうが良かったか。しまったかもと思ったら店主は「また寄ってくれよな」っと笑顔を見せてくれた。


 次は屋内の商店を覗いてみた。

 露天より金のある庶民向けの品ぞろえだ。


 高く売れるものがどんなものか知りたいのだが、庶民向けなのでどこもそこそこの値段だ。


 調味料、砂糖とコショウが高いのはお約束なのだろうか。

 あとは柄が入っている陶器もいいお値段だった。

 記憶にあるあの美しいティーセットやお皿、花瓶なんかを〈生成〉したら貴族向け商品でめんどくさいことになりそうだ。


 貴金属店もある。裕福な庶民向けかと思ったら貴族らしき身なりの良い人が入っていった。貴族でも下町で買い物をするのか。


 ぶっちゃけ、入ってもいいのかも知れないが今の身なりで貴金属店に入るのは申し訳ない気がしたので外から眺めるだけにした。


 金、銀は普通に使われているようだし、宝石もデザインカットされたもので俺が母親や歴代彼女に贈ったものを〈生成〉すれば、それなりの金額で売れそうだ。


 ……金塊、そのものを出したほうが手っ取り早い気がする。


 今着ている冒険者服は楽だけど商売するのには向かなそうだ。それなりに見栄えのいい衣装も仕入れるべきか。

 商店の中で接客している店員を見ながらどのくらいのものが信用される衣装か観察した。

 俺は今、行商人の設定だから清潔感があればいいかなと判断した。


 ブラブラしていたら良さげ服屋を見つけたので入ってみた。

 露店の中古服とは違って新品のパリッと張りのある服が並んでいる。


「いらっしゃいませ」

 いきなり店員に声をかけられた。今の俺の手持ちで買えるか判断する時間が欲しかったぞ。

 ふくよかなかわいらしい笑顔の婦人だった。

「お探しの物は何ですか?」


 まず、何が欲しいかを考えています……とは言えないので商談向きの正装を見たいと伝えてみた。

 下町なら金貨一枚くらいでどうにかなるよな。


「そうですか。ではこちらの棚のものはどうでしょう?」

 お勧めされたのは刺繍が少し入ったジャケットとベスト、そしてゆったり目のシャツ、スラックスに似たパンツ、少し凝ったベルトだった。

 落ち着いた色合いで品の良いものだ。

 が、普段は冒険者服で過ごしたほうが楽だし、予算的にもったいないのでシャツとベストだけ買うことにした。

 それでも銀貨三十三枚だった。多分三万三千円くらい。


 夫人は大きめの布を風呂敷のように使って服を包んでくれた。


「ありがとうございます」

「綺麗めで食事がおいしい宿のお勧めないですか?」

 優しげな笑顔の婦人に宿を聞いてみた。富裕層の客がくるお店なら横のつながりで良い宿を知っているかと思った。

 安い宿でも別にいいけど、風呂に入りたいし、せっかくならおいしいものが食べたい。


「そうですねぇ。〈真昼の月〉は居心地が良いと評判ですよ」

 この店を出て左に進んで青い看板のあるところだって教えてくれた。

「ありがとう」

「はい。またどうぞ」


 宿が取れるかは分からないがとりあえず行ってみよう。

 


 



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