第32話 可も不可もない
俺は王都で買った普通の鳥肉にハーブを揉みこんで焼いて、パラパラと塩を振っているだけ……なのだがものすっごい期待されている。
気が付いたらチャプルたちだけじゃなくて、ファビアンとネッラ、そしてメリッサとシューサーが手元の肉をガン見していて、小さな手と大きな手がそろりと焼けてきた肉に向かって動いているのに気が付いてしまった。
「みんなが揃うまで待て。手でつかんだら火傷するぞ」
とんでもない食いしん坊たちだ。
「ライズ、率先して手を出すな」
小さな手はチャプルのピポ、大きな手はライズのものだった。リーダーが何やってんだか。シューサーやメリッサ以上食いしん坊だったのか。
チャプルたちもそれぞれ性格が違うようで、肉が楽しみ過ぎてピョンピョンと撥ねているイット、同じく身体を横に揺らしているフーガ、そして我慢しきれず手を出そうとしたピポ。みんなヨダレが垂れていてかわいい。
そんな中、シューサーたちが焼いていたミミズも焼きあがった……味付けは塩コショウ。素材の味が引き立ちそうだな。
メリッサが用意された皿に……葉っぱ?ドーンと盛って、アーノルドが従魔たちの分だけそれぞれの皿に分けた。
俺が焼いた鳥肉も同じようにして、スープはそれぞれのカップ、従魔たちには平皿にと分けた。
「よし!!みんな食べようか」
「「「「「「「おー」」」」」」」
「ウォーン」
「「「ウッキュー」」」
「キキーッ」
「……ぉー」
ハンクの合図でみんながバッと動いた。
……人間は大皿(葉っぱ)で奪い合うスタイル。
みんな手に取り皿を持っている。そこに平等に盛れば良かったと思う。
ゲームで戦闘開始するときのような音声あるじゃん、「うぉぁぁぁぁぁぁ!!」みたいなのを生で聴いている気がする。
あんなにミミズで喜んでいたのに鳥肉から減っていった。
俺は手持ちの堅いパンを齧りながらその光景を眺めた。
「お、なんだ、作ったやつが食えないのはダメだぞ!!ほれ!!」
ルーカスが俺のために皿を出してくれて盛りつけてくれた。心なしかミミズがたっぷりだ。
「……ありがとう。こんなにはいらないから半分でいい」
「なんだぁ、少食だな」
そりゃ肉体派な冒険者と比べたらだめだろう。俺は普通の、年相応のおっさんだ。
それよりも、みんなの食いっぷりに引いてる方が勝っているだけなんだが。
ルーカスは俺の分を半分自分の皿に移してくれた。笑顔で皿を渡されたら食べるしかない。善意は素直に受け取る。
潔癖症だったら大皿の時点で心が死んでたが、俺はそこまで気にならないタチでよかった。潔癖症だったら異世界に来た時点で想像だけでわりとダメだったかもな。
「シュウの味付けはやっぱりうまい」
ハンクがほめてくれて、メリッサとシューサーが口いっぱいに肉を頬張った状態でウンウンと頷く。
昼間の串は俺が作ったわけじゃないんだが、作ったことにしてしまったからな。曖昧な感じで笑顔で返した。
俺はまず鳥肉を齧った。これもニワトリではない。王都の肉屋で売っていたからメジャーな肉。それでいいのだ。あまり深く考えないようにしているが内心はドキドキだ。
ぶっちゃけ、ニワトリのちょっと硬いやつみたいな感じだった。運動量が違う感じ。筋肉質な鳥。多分、外国産の歯応えがある肉って感じだ。煮込んだらもっとうまくなるはず。
そして、ミミズ。これはホルモン。ホルモンと思え。
ちょっと自己暗示だ。
変わった肉はわざわざ食べようと思ったことはないから、シカかイノシシくらいしか冒険したことがない。初級編として、ワニや蛇くらいからにしてほしかった。
人間、いざとなったら何でも食うと思うが、食べられるものが他にあればチャレンジする必要ないと思うんだよ。
「……」
……ホルモンだった。味はちょっと土っぽい。良く焼き過ぎたところはカリカリしていた。悪くない。
が、普通に牛ホル食いたいかな。




