第33話 まだまだ食いたいらしい
まだ食事は続いている。
が、タバコが吸いたいので一言断って、ちょっと離れて一服する。
当然のことながら目の届く範囲にいろって言われたので、風下を探した。影になるとダメなので障害物のない野原にヤンキー座りだ。
オイルライターで細身の葉巻に火を点けて煙をプカプカさせた。
ついでにスキットルの酒をちびちび飲む。
はぁー、ゆっくりと一服するってことがこんなに難しいとは。昼間に一本吸えたが慌ただしかったからなぁ。
まったり星空を眺めていたらファビアンが横に来て俺の肩にトンと鼻を押し付けてから座った。
「ん?なんだ、護衛をしてくれるのか」
ファビアンは俺が座っている目線と同じくらいの体高だ。そのふさふさの毛皮で俺の左半身をもふっと包んでくれる。
「タバコの煙は生き物に良くないからこっちに少し離れてて」
一本吸い終わるまで少しだけ待ってほしい。
「アォン」
ファビアンはわかったと理解しているかのように俺が指定した場所に座った。賢いなぁ。とはいえ、もふもふスキーとしてはタバコのために待たせるのも悪いのでそそくさと火の始末をして携帯吸い殻入れに入れた。
「ごめんな。もういいよ」
ファビアンは俺の身体にしっぽをファサッと巻く。大サービスにノックアウトだ。おじさん、おやつをあげちゃおうかな……なんて思うがアーノルドの許可を貰わないとだ。
もふもふの感触にうっとりしていたら、ファビアンが顔を上げて唸り、ネッラが飛び跳ねるようにして走ってきた。
「シュウ、動くなよ」
「ファビアン、ネッラ、シュウを守って」
ライズが走ってきて後ろからアーノルドの指示が飛ぶ。
……わぁ、猪だ。真っ赤な猪がこっちに猛スピードで向かってきている。しかも三頭。俺、猪好みの香りでも出しているのか。
だがAランクとBランクの冒険者にしてみたら大したことがない獲物だった。魔法を使うこともなく、メリッサが弓矢を放ち、ライズが剣でばっさり首を落とし、カドルが鼻面に一撃拳を叩きこんで終了した。
一瞬過ぎて、みんなの戦い方の観察ができない……って言うか、そもそも真似できないな。
ファビアンは本能で動くなら真っ先に飛び出したかっだろうにジッと俺にくっついているし、ネッラはファビアンに乗って俺の周りを警戒している。
従魔ってすごいんだな。アーノルドがすごいのか。
「明日の肉ゲット~」
メリッサがご機嫌な声で解体を始めた。
その場で始めるのか……
みんなで手分けして三体の皮を剥ぎ、シューサーが魔法で血抜きをする。
「ほら、ファビアン、ネッラ、イット、フーガ、ピポ、お食べ」
アーノルドが俺の側にきてファビアンたちにレバーかな?それと心臓を切りわけで配る。
「魔獣の内臓は魔素がたっぷりだからこの子たちの活力の源なんだよ」
そう柔らかい声で説明されても、わりとスプラッタなので困る。ファビアンはともかく、小さいおサルさんとリスのような姿のチャプルたちがこれを食べるんだもんな。
「ウキュ」
「「「キューン」」」
「ワフッ」
アーノルドに用意された肉と俺の顔を交互に見るモフモフたち。
「……レバーは生がいいんじゃないかな」
炒めたり焼くのもうまいだろうけど、それは獲れたて新鮮だぞ。
「あー、ファビアンたち、そんなおねだりの仕方はずるいな」
「俺だってシュウに焼いてほしい」
ハンクとライズまでこっちを見る。
その周りからの視線も刺さる。
「さっきいっぱい食ったじゃないか」
「明日ゆっくり食える保証なんかないからさー」
カドルが不吉なことを言う。
「全力で守ってくれる予定だろうが、変なこと言うなよ」
過剰な戦力もりもりの護衛たちなんだから、そこは安心させてほしい。
「って言うか、寝かせろ。もういい時間だろうが」
「そうだなー。これは朝ご飯にしよう」
ハンクが笑ってみんなを散らした。
ファビアンたちが切なげに鳴いたのでアーノルドに断って手持ち(こっそり〈生成〉)のジャーキーをあげた。一瞬みんなの視線が集まったが干し肉かって感じでがっかりされた。ファビアンたちが一口齧って目をクルクルと煌めかせた。俺はシーッと内緒にするように合図した。コクコクと小さく頷く。やっぱり賢い子たち。ジャーキーを食べた後にレバーも間食して満足したようだ。
俺は馬車の中で寝ろって言われたので移動するとファビアンとイットが付いてきた。一緒に寝てくれるのか?




