第30話 食べるの?
食べ終わったあとも俺の腰……バッグを見つめるメリッサとファビアンたちの視線が熱い。
従魔たちはともかくメリッサはダメだと思う。いろいろ……
「おい、そろそろ動くぞ」
ハンクの声掛けでみんなの視線が外れてそれぞれの馬車に乗りこむ。
チャプルたちがこっちに乗りこもうとついてきたがアーノルドに捕獲されて向こうの馬車に……俺は大歓迎だったんだが。
引き続きカドルが馭者台にいるのでハンクとルーカスと俺。
「……」
案の定、ちょっぴりニンニク臭い。みんな同じ匂いだと思えばそこまで気にならないか。たくさん食べたわけじゃないしな。
「さっきの肉串は買ったものか?」
ハンクが真剣な顔で聞いてきた。
買ったと答えると「どこで買えるんだ」と聞かれるだろうから「俺が作った」と返した。焼肉屋のものだが、ごま油とニンニクと塩コショウ、香味野菜があれば簡単に作れるものだしな。
「俺たちにも作れるだろうか?」
ん ?作ってくれとかじゃなく作り方が知りたいのか。
「材料がそろえば簡単だ。調味料を用意して、それを付けて焼くか後からかけるだけだ」
言ってしまってから気付く……ごま油は簡単に手に入るのだろうか。
「材料を聞いてもいいのか?」
ハンクとルーカスが喉をゴクリと鳴らした。真剣な顔に少しビビる。
「別にいいぞ。簡単なものだし」
俺が考えたわけでもないからな。
材料の説明するとごま油はあることが分かった。だが今は持ってないし、この先に立ち寄る近場の町では手に入らないらしい。あからさまにがっかりされた。
まったく一緒の味にはならないが、ナッツ油や木の実油に香味野菜でもうまいと思うと言ってみたら目が輝いた。
とりあえず入手の目途が立つまで俺の手持ちのごま油を提供すると言えば、ごっついマッチョの二人に感謝のハグをされた。
……あまりうれしくないが感謝の気持ちは伝わった。
ごま油の代金を払うと言われたが、護衛の依頼料をかなり値切っているわけなので要らないと答えた。
俺は〈生成〉をしたらいいだけなので実質タダだ。
「お前、いいやつだな」
「気前がいい。俺たちが肉を用意するからな」
ニンニクや香味野菜は手に入りやすいらしく、塩やコショウもハンクたちは十分持っているらしいので二人はにこやかにお互いの腕を軽くぶつけ合った。
二度と食べられないものじゃないと安心して、ハンクは横になり、ルーカスは装備の手入れを再開した。
俺は手持無沙汰になったのでウォレスさんの手帳を読むことにした。
出納帳の部分は行商先の町や村で何を欲されていてどのくらい運ぶか、季節ごとに絶対寄らないと困る村のこと、日記部分は少し読んだだけでウォレスさんのまじめで優しい人柄を感じた。
ウォレスさんが立ち寄らなくなって困っている村が出ただろうことは簡単に予測できるが……日記の日付を見ると五十年以上前でどうしようもない。他の行商人が通ってくれていると願うしかない。
もし王都でこの手帳の中を確認していたら……困っただろうな。ウォレスさんの代わりはできないし。
これ以上読み進めるとちょっと辛いかも。やぱり落ち着いた先で読むべきだったな。
しんみりしていたら急に馬車がガクンと止まった。
「レッドワームだ!!」
カドルの声にハンクが飛び起きて、ルーカスが飛び出す。
「シュウ、外に出るなよ」
ハンクがルーカスに続いて外に出た。
俺は馬車の中から外の様子を窺った。
わぁ……大きくて顔がめっちゃ怖いミミズだ。キモい。
〈雷獣の檻〉のメンバーも降りていて巨大なミミズを囲むようにしている。
「ちっ、もっといいもん出てこいよ」
「でも肉がおいしい……」
ライズの吐き捨てるようなぼやきとメリッサの聞き捨てならない呟きが……
え!?あれ食うの!?




