第29話 餌付け
王都をでてしばし、唐突に道が粗くなる。クッション用意できてよかったなぁ。何もなかったら王都にいる間に良くなったケツの痛みがまたぶり返しそうだ。
ハンクとルーカスは緩衝材ではなく魔獣の毛皮に座っている。クッションというより絨毯だ。ちなみにカドルが馭者をしている。交代制らしい。
「しばらくは安全区間だから寝ておけよ」
そう言うとハンクはすぐに寝てしまった。
「慣れないうちは寝られるときに寝ておいた方がいいぞ」
ルーカスが荷物から寝袋を出して俺に枕に使えと言って盾を磨き始めた。
……初対面の相手の前にすぐに寝られるかと思いつつも横になった。ケツだけに衝撃を受け続けるよりは良いだろう。
昼間なので睡魔は来ず、ひたすら酒とタバコの銘柄を思い浮かべた。実際に飲み食いしたことがあるものという〈生成〉の制約条件があるので、なるべく多くの物を思い出したい。物は使ったことがあるものだからある程度は思い出しやすいが、味となると厳しいよな。
はぁ……クッションあっても痛くなるな。ハンクとルーカスはダメージなさそうだ。筋肉か。大殿筋を鍛えたらいいのだろうか。
数時間ほどガタゴト進んでやっと休憩場所に着いた。野外キャンプ場のような均しただけの場所みたいだ。
外に出るとライズたちも馬車を止めて下りてきた。
アーノルドに寄り添っている従魔たちがかわいくてうらやましい。あれ?ファビアンも馬車に乗ってたのか。向こうの馬車、天国じゃん。
「腹減った」
まだ三時くらいだと思うがオヤツタイムか。ライズがシューサーの方に顎を載せてぐったりしている。燃費が悪いタイプだろうか。
「うざい」
シューサーがライズのおでこを押し込んで肩から剥がした。嫌がっているけど仕方がないヤツだって感じで仲が良いっぽい。
で何を食べるかと言えば、ホットドッグ、焼いた骨付き肉、どうやらマジックバッグに温かい食べ物を収納していたみたいだ。
アーノルドは従魔たちに生肉を食べさせていた。……チャプルもピグミーマーモも生肉を食べるんだね。口から生肉はみ出てるよ。
「休憩はどれくらい取るんだ?」
「んー、小腹を満たして、トイレを済ませたらだ」
おー……ツアーバスの小休憩か。って、トイレはまさかの野外。宿はドボンだったし仕方ないか。って、いつぞやの時代の〈勇者〉、風呂はありがたかったが、トイレ事情もどうにかしてほしかった。
みんなの様子を眺めてから俺も木の陰で用を済ませた。長いものには巻かれろ。仕方なし。
俺のオヤツはこそっと〈生成〉したお気に入りの焼肉屋の牛串だ。小さいマジックバッグ持ってますよ……くらいの態度で腰のバッグから出すふりをした。
タレはさすがに匂いがやばいかと思って塩味にしたんだが、塩味ってさ、ニンニクとごま油を使ってることが多いんだ。みんなにジッと見つめられた。
特にシューサーとメリッサに……意外なタイプが食いしん坊だな。
そしてかわいくてあざとい子たちからも熱視線だ。
「まだあるんだが……食べるか?」
とても独り占めしていられる空気ではない。
「「「「「「いいのか!?」」」」」」
マッチョたちは前傾姿勢だし、シューサーは目が肉に集中したままだ。
「「いいの!?」」
メリッサは目をキラキラさせてアーノルドはコキッと首をかしげる。
「キューン」
「キキッ」
「「「んきゅ」」」
従魔たちまでかわいい仕草で。小さい子たちは手をコイコイって肉を招く感じで、オオカミなファビアンはお手をする仕草だ。
「これは味が濃い。従魔たちにはダメだよな?」
アーノルドに確認すると従魔たちはガーンといった顔になってとても悪いことを言った気分だ。
「この子たちは魔獣なんでなんでも食べれます。雑食ですし」
「雑食なのか」
従魔たちが目を輝かせせて俺を見つめる。
「どうぞ」
俺は腰のバッグから出したていで、たくさんの牛串をみんなに配った。
……あーあ、みんなニンニク臭くなってしまうな。
初めての味、だったのかしばらくみんな味わうようにして食べていた。
選択をミスったようだ……ま、仕方ない。




