第28話 脱出
荷物多すぎないか?夜逃げかって思う?
俺が少なすぎるのか。だが旅行にはキャリーバッグに数泊分が旅の基本だ。荷物が多いのは行動の制限が掛かる。
「おー、シュウ、待たせたか?」
ハンクが大きな樽を肩に担いだまま俺に手を振ってきた。
「いや、荷物を載せてもらったところだ」
タバコ休憩も取れたから待っていたって感覚もない。
ハンクが樽をルーカスに渡すと後ろにいたカドルやライズたちにも荷物の詰め込みの指示を出した。
良く一緒に行動しているっぽい。息の合った連携だ。
それにしても……馬車に全部積めるのか?
様子を見ていたら幌の上やサイドにも引っかけている。荷運びの依頼でも受けているのかも知れない。値切ったし……(ドーラさんが)
「全部載せるのか ?」
近くにいたシューサーに聞いたら、マジックバッグやマジックボックスにも入れてるらしい。どんだけ荷物があるんだ……
あ、俺もマジックバッグをコソコソ隠さなくてもいいかもだな。ちょっと気楽になった。
彼らの作業を見守っていると、従魔使いのアーノルドが大きなオオカミとサル、オオカミに乗っている小さなネズミ三匹を伴って現れた。モフモフ……オオカミかっこいいな。
「シュウさん、この子はシルバーウルフのファビアン、こちらのピグミーマーモはネッラ、この子たちはチャプルのイット、フーガ、ピポです。魔獣との戦闘時はシュウさんの防衛に回りますので名前、覚えてくださいね」
間違えて攻撃したり振り払わないようにって。
俺、こんなかわいい生き物に守られるのか?あらやだ。萌える。
チャプルたちがそれぞれかわいいポーズをして上目遣いしている。ネズミとリス……げっ歯類が絶妙に混ざった可愛さ。あざとい生き物!!アーノルド、おやつセットを買わせてくれ……
「……でな、今回の勇者たち……でなぁ……ハズレ……」
「あー、こ……って……陛下……カン……だってなぁ」
通りがかった人の会話が耳に入った。
なにやら嫌なワードが混ざっている。耳がダンボになってしまったがそれ以上の話は聞こえなかった。
「あー、今回の〈勇者〉たちこっちの言葉が理解できなかったらしいぞ」
「やべぇじゃん、スキルがもらえてないのは神様を怒らせたってことだろう」
残念に思っていたら、荷物を積み終えたカドルとレムルスが詳しく話し始めた。
情報通!さすが高ランクの冒険者だな。
「〈聖女〉はいなかったらしい。女は一緒に召喚されたが〈巡礼者〉ってスキルだったらしくてなぁ、祈るだけなら勝手に祈りに行けって宰相が追い出そうとしたらしいが〈勇者〉と〈剣星〉がキーキー言ってかばっていたらしい」
さすが、ズットモ。見捨てないのは素晴らしいな。
「……〈剣星〉?〈剣聖〉じゃないのかよー?」
お、〈けんせい〉のニュアンスがちょっと変だな。望まれていたスキルじゃなかったんだろうか。
「なんにせよ。ここに残っていたらやつらの修行を押し付けられそうだからな」
カドルがため息をついて腰に下げていた革袋から何やら飲んだ。水?
「そっすねー。俺っちの知り合いもみんな依頼を受けるふりして当面は王都に戻らないって言ってるっす」
めぼしい冒険者が王都脱出したら、冒険者ギルドのドーラさん泣きそうだ。ポイント稼がせて顔を立てるって言ってたのが逆効果じゃないか。
いや……きな臭い匂いがしたらサクサク逃げるのも賢い生き方だ。
「よし、積み込みが終わったぞ。みんな出発だ。いくぞ」
ハンクの合図で俺はルーカスに引っ張られて馬車に乗りこんだ。
……マッチョに囲まれた俺。
せめてチャプルたちを貸してもらえたら……
とはいえ、俺はやっと王都から脱出した。




