第27話 この世界での初めての喫煙
東門に着くと〈夜明けの虹〉の荷馬車より、かなりしっかりしたタイプの幌馬車が二台並んでいた。密室になるタイプの馬車じゃないんだな。
「来たか」
〈大鷲の鉤爪〉のルーカスが馬車の前で待っていてくれた。
「酒が届いたから載せておいたぞ」
「ありがとう」
ルーカスに案内されて馬車の中に入ると馭者台寄りに食材の入った木箱や樽が並んでいる。
「シュウの樽は分かるようにマーク付けておいたぞ」
お気遣いどうも。みんなで飲むものだから気にしなくてもいいのだがこうした管理がしっかり出来ているのがAランクパーティの所以かもしれない。依頼をしっかりこなしてきた実績……もちろん強さも当然折り紙付きだろう。
「荷物はそれだけか?シュウが座るのは奥だからこの辺にクッションと荷物を置いてくれ」
馬車の奥、要するに荷物の側が俺の席。守られる安全地帯のようだ。
贅沢言えば、三つ折りのマットレスを置きたかったがさすがに場所を取りすぎるから分厚い低反発クッションを置かせてもらった。
みんなが揃うまで一旦外に出ることに。
「タバコ、吸っててもいいぞ」
ルーカスに気を使ってもらったので遠慮なく一本吸わせてもらうことに。
パイプは持っていないので必然的に葉巻だ。
火のことを忘れていた。ふつうはどうやって点けるんだろう。まさか火打石で着火……なわけないか。細い葉巻なのでオイルライターを出して少し炙るようにしてから口に咥えた。
「変わった道具だなー」
案の定、ライターに食いつかれてしまった。
マジマジとみられているが、まずはタバコの味と香りを確かめる。
……雑な味とでもいえばいいのか。
土臭さ、青臭さ、干し草……渋苦いような感じ。美味しいとは感じない。
ただ血流が良くなるような、気分が和らぐような……感覚はある。甘いような気もする。何とも言えない感じだ。
薬草……ドクダミとかあの辺の草のすっきりした味と青さも感じた。
……これは毎日吸いたいかと言えば、微妙だ。だが気分がスッキリするなら、事務仕事で目が疲れている時なんかだと重宝したかもな。鎮痛にも効果があるなら肩こり腰痛にも効きそうだ。効かないかな?
「うまいか?」
「んー……普通?」
良いも悪いもよくわからない。製法が向こうの世界の現代の物より大昔、中世とかに近いのだと思えばこんなものだろうと想像する。
「地方で味が違うらしいからここのは合わなかったんだな」
ルーカスがいうにはタバコは薬屋の腕と好みに寄るのだそう。
ほほぅ。乾燥させたり、熟成させたり、発酵もかな、薬屋の腕次第か。
「ハンクとカドルに自分の好みを話して聞いてみるといい。あいつらはそれなりに吸っているからな」
どうやら、貴族相手にご相伴にあずかったりする場面があるらしい。貴族の嗜む葉巻を吸っているなら高いって感覚もわかる。貴族の葉巻……どんなだろうなぁ。
……めんどくさそうな付き合いはしたくない。買える機会があるといいな。
ルーカスがずっとライターを気にしているので渡してみてもらう。
「魔道具か?」
くるくる回して眺めているが仕組みがわからないと返してきた。
「小さい火打石とオイルが入ってるだけのものだ」
俺はカチッと蓋を開けてフリントホイールを擦る。
シュボッという音とともに火が灯った。
「おお~、便利だな」
ルーカスは魔法みたいだと喜んだ。
こっちの世界は魔法を使える人間がいるのだから、俺的にはこっちの世界のがすごいと思うが。隣の芝生は青いということか。
しばらくして他の連中が荷車をたくさん引き連れてやってきた。




