第25話 依頼成立
みんなに名乗ってもらって、お互いの条件のすり合わせに移った。
どちらのパーティもどのみち移動するのでこの依頼が成立したらラッキーと思っているそうだ。
ただ二組で、予定の金額の金貨十枚での依頼が成立すれば、途中の宿代とか考えたら赤字だろうと思う。俺はそこを詳しく聞いてみた。
基本は、富豪の護衛でもないかぎりは野宿で、街道沿いのキャンプ場のような場所に泊まれるときはそこで休むんだそうだ。
ちょっと待ってくれ。問答無用で俺も野宿なのか!?
俺は町があるなら簡易宿でいいから泊まりたい。
どちらも金に困っているわけではないので、宿をとるときは自腹で宿泊するという。俺に都合がいい条件ばかりだが、良いのか?
そして最重要事項。タバコを吸っていいか。
答えは馬車内や宿の中以外は「好きにしていい」だった。
「タバコを吸うなんて珍しいな。稼ぎが飛ぶ。俺だってたまに吸う程度だぞ」
「たまのタバコもうまいが高級酒を飲むほうが癒されないか?」
まじか、そんな高級なのか?
〈大鷲の鉤爪〉のハンクとカドルはタバコ自体は吸うらしい。Aランクなら稼ぎはすごいだろうから……タバコ代、いくらなんだ。怖いな。
「俺はタバコに使うより風呂に行きたいな」
〈雷獣の檻〉のライズは風呂が好きらしい。ムキッとポーズをとっている。公衆浴場で見たあの光景が浮かび上がる。ちょっとやめてほしい。
そして、残念ながらマッチョ度はルーカスのが高いぞ。
「タバコの香りは私も好きですけどね、基本的には休憩時だけにしてください」
シューサーが言う。もちろん馬車の中で吸う気は無いし、歩きタバコはしない。それに場の空気は読めるつもりだ。
ちなみにタバコについて少し情報がでた。売っているのは魔法薬の店。細めの葉巻と噛みタバコ、パイプらしい。値段的には噛みタバコが比較的安いらしい。だから街中でプカプカふかしている人に出会わなかったのか。
「じゃ俺たちの希望な。今日の正午には王都を出たい」
ハンクが良い笑顔で言った。
「俺たちも早いに越したことはないから合わせる」
ライズもいい笑顔だ。
あれ?もう二組とも契約成立したっぽい気持ちらししいぞ。
早々に王都から出たいのは俺もなのでそれは助かるが。
「あ、俺は腰が痛い。乗せてくれる馬車に大き目のクッションを置きたいのだか良いだろうか?」
大事!!年寄りだから腰が弱ってるわけじゃないぞ。悪路でガタガタ揺れた荷馬車でのダメージがまだ残っているだけだからな。
みんながキョトンとした顔になったがガドルとレムルスがフッと吐息をはいた。
「ずっと座っていると腰にクルよなぁ」
「俺っちも馬車移動はあんまり好きじゃないよー」
なぜか同情されたようだ。背中をポンポンとされた。クッションは許可された。
人数的な都合で俺は〈大鷲の鉤爪〉の馬車に乗せてもらえることになった。
ドーラさんにふつうなら「Aランクの人たちに囲まれて過ごすなんて敷居が高いなぁ」なんて思うのにと言われたが俺はいまいちピンと来てなかった。
大企業の会長や理事たちに囲まれるようなもんか……たしかに嫌だな。
「じゃ依頼成立でいいよな」
ライズにガシッと肩を組まれてテーブルの上にあった書類にサインをと言われた。駅前でキャッチセールスに捕まって返してもらえなくなったような絵面だ。
だが、王都からは可及的速やかに出たいので流れに乗ろう。
「じゃ、荷物を取りに戻って正午に東門に集合だ」
依頼を成立させ、彼らは食料の補充をして宿を引き払ってくると出ていった。
ドーラさんには「良かったですね」って言われたが、どうなんだろうな。
「世話になった」
「いいえ、またお越しくださいね」
それは〈勇者〉たちの動向次第かな。
……俺も宿を引き払って、魔法薬の店を覗いてくるかな。って、この前行った店じゃん。ポーションに気を取られて気が付かなかったな。




