第22話 依頼の引き受け希望
空いていたところに入ったら、水面にシュワシュワと音が立つような泡が身体を包んで、めちゃくちゃ肌に刺激がきた。
まさかの電気風呂だったのかと壁にあった説明書きを見た。ちゃんと炭酸泉だ。
強炭酸って言ってもいいのか。とにかく刺激的だ。ゆっくり浸かったら肌が溶けるかもしれないと思うくらい。空いているわけだよ……
一瞬だけ浸かって、すぐに出て今度は説明を読んでから湯舟に浸かった。
適温だ。最初からここに入れば良かった。興味が勝って奥まで見に行ってしまったから。
「ふぅ」
人心地ついて、ふと腕を摩ってみたら、肌がここに来る前より柔らかくなっている気がした。やっぱり炭酸泉で一皮剥けてしまったのかも。かなりの刺激だったが、入浴後に肌質が改善されるなら……女性には人気があるかもな。ここは男湯だが。
浴槽のすみっこで壁にもたれてぼんやりしていると、徐々に混雑し始めたのはいいが、湯に浸かる前にポーズを決めるやつの多いこと。マッチョじゃなくてもやってた。
腰布を巻いて脱衣所に向かったら、少年がたくさんの瓶が入った籠を抱えて「モーモーミルク、フルーツミルク、いかがですかぁ」ってやってた。入浴後の飲み物まで再現したのか。勇者。だが、コーヒーはなかったのだろうか。
冷えてなさそうなのでスルーして着替えた。
横のつなぎの部屋から「うわぁぁぁぁ」と叫び声と、しかも「折れるぅぅぅ」なんて悲痛な声が聞こえてきた。マッサージなのだろうか。怖い。
結局、二時間くらいで公衆浴場を後にした。
ビールとタバコで一服したいな。宿に戻ろうと途中の露店で肉串三本を買って、何か他にもおいしそうなものは無いのかと見まわしたら、芋……ジャガバタが売っていた。バターあるんだ。
芋の種類が少し違うようだが、とりあえず二個買った。
勇者か聖女かだよな。どうせなら、タコヤキや焼きそばを広めれば良かったのに。
買った食べ物を抱えたまま、宿に戻ったらエニスちゃんに呼び止められてギルドからの伝言を伝えられた。
冒険者パーティーと連絡が付いたから、なるべく早く、まずは話だけ聞きに来るようにって。
俺は一旦、三階まで上がって食事とビールタイムを取るか、少し考えてこのまま冒険者ギルドに向かうことにした。
「ありがとう」
エニスちゃんに伝言の礼を伝えて、買ってきた肉串と芋を渡した。賄いがあるだろうが、たまにはオヤツがあってもいいだろう。良い笑顔で手を振ってくれた。
さっき通ってきた道をまた歩く。仕事帰りらしい冒険者がたくさん歩いている。露店で年若い冒険者たちが賑やかにエールをあおっている姿が目に付く。あの年ごろが一番楽しいよなぁ……ってジジくさいな。
ギルドに着いて、受付を覗くとドーラさんが気付いてくれて「奥にどうぞ」と合図してくれたので個室に向かう。
後ろからドーラさんが書類を持って走ってきた。
「どうぞ」
ドアを開けてくれたので中に入るとすぐソファへと勧められた。
「連絡が取れた中で二組のパーティが、依頼を引き受けたいとのことです」
「二組?」
ドーラさんが苦笑いで書類を見せてくれた。
「別の街から依頼で来ていたAランクパーティ〈大鷲の鉤爪〉が地元に戻るついで、この街のBランクパーティ〈雷獣の檻〉が隣国に立ち寄る予定があるため、この依頼も受けたいとのことです」
Aランク?この前、護衛候補に入ってなかったから、ドーラさん的にも想定外だったのだろう。
「心強いが、俺は商団として動くでも大商会の者で大金を運ぶでもない。一人だからAランクは過剰すぎる。予算も最初の予定から大きく増やされても困る」
金は出せるが、必要のない金を使うのもなんだし。
「そうですよよね、でもどちらもCランクの予算で構わないというのです」
ほほう。
帰るついでと、用事のついで……
「向かう先は同じなのか?」
「アルデール国のサンティの街、ドルガン国のヨーディスの町ね。ここ二つは比較的近い場所なの。それでどちらのパーティも、貴方を国境あたりまで連れていくって希望はどちらも叶えられるのです」
ドーラさんが周辺諸国の地図を広げて場所を教えてくれた。




