第20話 公衆浴場
そういえば、地図が欲しいのだった。これはおそらく冒険者、商業ギルド、どちらでも手に入るだろうか。
物を売らないのに商業ギルドに行くのはなんとなく敷居が高いので冒険者ギルドに向かう。割引なしでもやむなし。
冒険者ギルドの中はこの前より空いていた。俺は売店で地図が欲しいと伝えた。店番はこの前のオジサンではなく若い女性だった。
「どちらの範囲の物が良いですかぁ」
フワフワとした肩までの長さ髪を揺らして、棚から地図を持ってきてくれた。
見せてくれたのは王都内、王国全域、王国と周辺諸国、世界地図……街道や国名、危険区域が分かれば良いので……
「王都全域と周辺諸国ので……」
「紙と羊皮紙どちらがいいですかぁ?」
そんな活用する気はなく安住の地を目指すだけだからな……
「じゃ紙で」
見本は痛みにくい羊皮紙だった。紙は出し入れしたら傷むものな。
「はぁーい、じゃお値段はぁ」
「あ、俺は冒険者登録していない」
割り引かれる前に言っておかないと。
「そうなんですかぁ、じゃ王国が銀十枚でぇ、周辺のが銀貨四十枚なので合計銀貨五十枚でお願いしまぁす」
合計五万円……手書き……模写か。それなら良心的だ。
「金貨でだしてもいい?」
「もちろんですぅ」
なんて言うか、この間延びした口調、会社の事務にもいたなぁ。やる気があるのかないのかわかりにくい。が、声がかわいらしいから彼女の口調にあってるかも。
彼女はテーブルの下に置いていたらしい金庫からおつりを出してくれた。
「ひぃふぅみぃ」と甘い声音で数える様子は少し和む。二度、確認してからおつりを返してくれた。
「ありがとう、銭湯に行きたいのだが場所を教えてもらえるか?」
ブラブラ歩いていた時に見つからなかったから聞いたほうが早い。
「銭湯ですかぁ?ここを右に出てぇ、三本目の道をぉ左に行けばぁ大き目の建物があるのですぐわかると思いまぁす」
彼女は真剣な顔で指を前後に動かしている。道順を考えてくれたのだろう。結果、雑な道案内になっていて少し笑ってしまう。
「ありがとう。行ってみる」
「はぁい。またどうぞぉ」
彼女のかわいい声に近くにいた若い青年がちょっと笑顔になっている。冒険者っぽい。彼女のことが好きなのかもしれない。甘酸っぱく良いな。
彼女の教えてくれた道を進む。三本目を曲がって左。道中こっそり、地図をアイテムボックスにしまった。
見つけた銭湯は……大きいのは確かだが結構進んだ先にあるようだ。なるべく表通りから奥の道には入らないようにしていたから見つからなかったのも仕方ないな。
石造りの大きな建物に近づくと、ムキムキっとした裸の男と水瓶を持ち上げて泉に注いでいる薄衣の女性の彫刻が出迎えてくれた。
これは完全に風呂が必要だといった〈勇者〉かその関係者の仕業だろう。
あっちの世界の教科書に出てくるようなギリシャ芸術の神髄だ。
昔来た〈勇者〉は、俺みたいに〈生成〉か、何かレアスキルを持っていたのかもしれないな。
……建物は周りと比べるとちょっと異質だ。周囲は中世ヨーロッパの庶民が住む街並みに近いのに、目の前にあるのは古代ローマ風、映画でみたことがある公衆浴場のようなだ。完全に影響を受けて作ったのじゃないかと疑う……が、この世界で、昔の〈勇者〉は時代が違うよな。イタリアに行ったことがある人なのか。
荘厳な作りの建物に入って受付に向かう。壁にはいろんなポーズのマッチョな彫刻……女性の彫刻が少ない。〈勇者〉の希望なんだろうか。
「いらっしゃいませ」
受付の青年に声をかけられた。
「三時間で」
横の看板に、三時間銀貨一枚、五時間マッサージ付きは銀貨五枚と書かれていたので少し悩んで三時間を選んだ。ケツを痛めているのでマッサージは気になるがどんな感じかわからないから怖い。整体並みにゴキゴキされたらヤバい。
前払いで銀貨一枚払うと籠と腰巻用タオルを渡された。
腰巻て。
荷物と着替えは籠に入れて脱衣所にある木製ロッカーに入れるらしい。木製のカギが刺さっている。
銭湯への情熱が高過ぎないか。昔の勇者よ……
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いつもお読みくださってありがとうございます。
リアルの事情で少しペースが落ちるかもです。隔日くらいでなんとか行けるようにします。
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