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スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ  作者: 紫楼
一章

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第13話 冒険者ギルドへ

 逃げるように外に出ると朝より人が増えていた。

 これが日中の普通の光景なんだろう。

 休憩できそうな場所はないかと周囲を見渡したら、飲食店らしき看板が三軒あった。どこも賑やかそうだ。


 ……気力がない。気分的に疲れているので広場の噴水の側の露店でパニーニみたいなものを買って側で座って食べることにした。飲み物はエールか果実のジュース。少し悩んで結局エールにした。

 パニーニにはごった煮の野菜と細切れの肉が挟んであった。辛みのある葉っぱがアクセントになっていて旨い。チリソースをかけたくなる。


 ぼんやり街中を観察していると、異世界にいるんだなと改めて思う。建物も道行く人たちの姿も衣装も、横切る馬車も、俺にとっては非日常なものだ。

 アスファルトの道もコンクリートの建物もない。当然車も電車もない。


 この世界で生きていくことを考えると気が遠くなる。

 移動手段や、衣食住の安定……なんて言うか、この先どうするか、自分の未来が漠然とし過ぎて寒気がするな。

「ありがとう」

 露店の店主にエールのコップを返して、礼を伝えて離れた。


 気分を切り替えて冒険者ギルドに向かう。中に入ると商業ギルドより活気があった。だが昼なのできっと空いているほうなのだろう。


 俺はまず壁にあった依頼板を見つけて、護衛依頼がないかチェックしてみた。

 護衛依頼は、出ていなかった。

 近場の採集と、近隣での魔獣討伐、下町の雑用、商店の臨時ガードマン……アニメでみたような定番の依頼が見られてちょっと楽しい。


 依頼板では護衛依頼の相場とかがまったくわからなかった。

 あきらめてギルドの受付で聞くことに。


「護衛依頼はこちらで頼めるのだろうか?」

 受付の列に並んで、順番を待っている間に脳内でグルグルと今、知りたいこと、知るべきことを考えていたら、自分の番がきた。

 急に意識を現実に引き戻した状態になったので、挨拶も聞きたいことの順序も何もかもすっ飛ばして要件を口に出してしまった。


 受付の女性はパチパチっと瞬きをして「承れますよ」と言って、後ろに「交代してください」と声をかけた。

「こちらにどうぞ」

 彼女は席を立って後ろにいた男性と交代して、俺を別室に案内してくれた。


「少々お待ちくださいね」

 俺にソファに座るように言ってから入ってきたドアとは別のドアから出て行った。

 数分もしないうちに書類を抱えて戻ってきた。

「お待たせしました。私はドーラと申します。よろしくお願いします」

「これはご丁寧にどうも。俺はシュウと言います」

 ドーラさんはニコリと微笑んでくれた。


「護衛依頼とのことですがどちらまで向かわれる予定ですか?」

 王都から、この国から、早々に出たいだけで他に何も考えてない。と言うか、情報がない。先に情報を得るべきだったのに。

「ここ数か月の近隣の情勢を教えてほしい。危険な地域を避けて隣国に出たいのだが、まずは国境近くまで、可能であれば次の護衛を依頼できる場所まで行きたい」

 訳アリと思われそうだが、今更だな。

「……罪のある方の逃走には手をお貸しできませんが」

 案の定、ドーラさんが少し引いた態度になってしまった。

「犯罪は犯していない」

 俺は自分の身分証を見せた。最初に確認されるものと思っていたが……

 ドーラさんは身分証をしっかり確認してから返してくれた。俺のことを怪しく思われてしまうのは出足から躓いてしまったから仕方ない。


「俺は行商の途中で魔獣に襲われて怪我をした。荷物の大半を失くしてしまったので、引退をして店を開きたい。土地が安く、暮らしやすい、静かな田舎に行きたいんだ」

 それっぽい話と本音を織り交ぜて伝える。


 楽隠居して好きなことだけをする暮らしをしたい。


「そういうことでしたか……」


 ドーラさんは少し考えた様子で、持ってきていた地図を開いて、昨今の街道沿いの野盗、魔獣出没情報、お勧めの街、国をザッと教えてくれた。説明は要点を押さえてわかりやすく教えてくれて、とても有能な人だ。


 地図、俺の持っているものはちょっと古いようだ。国境の場所と隣国の国名が違う。頭の中の買い物リストに「新しい地図」を追加した。


「今、ご紹介できるのはBランクパーティ一組、Cランクパーティ二組ですね。ご予算など決まっていらっしゃいますか?」

 道中の危険度で依頼料は変わるが、相場は二週間ほどの拘束で、Bランクなら金貨十枚、Cランクなら金貨八枚だって。

 依頼者側が飲食代を持つと少し安くなるらしい。


「相性もあるでしょうから顔合わせをなさることを推奨いたしております」

 そうだな。何日も顔を合わせるなら気がいい連中がいい。


 ちなみに表に護衛依頼の票が出ていないのは、依頼者の安全のためだって。護衛を雇えるほど金を持っている、もしくは上等な荷物を運ぶ移動には質の悪い冒険者パーティが外部に情報を売ったり、途中で待ち伏せをされたりが過去にあったらしい。


 ……世知辛いな。

 冒険者ギルドに登録していても犯罪に手を染めるやつもいるのか。ギルドを追い出されたりしないのかな。


「護衛依頼で、当ギルドで紹介しているパーティは身元も人柄も保証できる者だけですのご心配なく」


 顔合わせと出発の準備には最低三日はかかると言われた。それにはちょっと困った。

 ちなみに護衛依頼を受けているパーティは自前の馬車を持っているらしい。


 それは助かる……クッションとか置かせてくれるといいな……





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