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02 親友の真実

ご覧いただきありがとうございます、文月 律です。第二話は、翔琉と瑛斗のいつもの日常から始まります。しかし、そんな何気ない毎日の裏で、親友の「ある違和感」が姿を現し始め――。どうぞお楽しみください!

 いつものように階段の手すりにもたれ、外を眺めながら購買で買ったパンを食べているときだった。


 呑気に、

「あぁ、今日も快晴だな」

 なんて考えていると、瑛斗がやってきた。


「なぁ、今日もここで食べてるのか」


 こいつは俺をからかうことしかできないのだろうか。


「うるせぇ、陽キャは黙ってろ」


 こいつはクラスでもムードメーカー的な存在なので、陽キャと言っても過言ではない。


「でもなぁ、生徒ホールでも行ったらどうだ? ここ、夏は暑いし冬は寒いだろ」


「ぼっちは時に痛みを伴うものなんだよ」


 俺も本当はみんなを盛り上げたり、みんなと仲良く会話してみたい。

 でも、過去の傷口がまた痛みだすから現実逃避をし、ラノベ好きのぼっちになったのだ。


「一回、クラスメイトと話をしたらどうだ? お前は根はいいやつなんだから。入学してから俺を除き、雑談したこと何回ある?」


 俺は手でゼロを作ってから言う。


「まじで黙ってろ。俺はぼっちがいいからぼっちでいるんだよ」


「なんでだよ」


「どうでもいいだろ」


 俺だって、昔は瑛斗のような存在だった。

 だが、手に入れたものは必ずなくなってしまうことを、身をもって知った。

 だから高校では、一人でいることを決めた。


 沈黙の時間が続いたあと、瑛斗が重い口を開く。


「―――なぁ」


 その瞬間に、予鈴のチャイムが鳴り響いた。


「……いや、いいや。また今度言うよ。その時が来たらな」


 意味深な言葉を残し、瑛斗は立ち去る。


「なんだったんだ、あいつ……」


 俺は思わず呟く。

 ただ、あの様子だと後で聞いても絶対に口を開くことはないだろう、という結論に至る。


 五時間目は幾何きかだ。

 幾何の担当は、学校内でも超怖いと評判の学年主任。そろそろ教室へ向かわなければ、本気でまずい。


 瑛斗の気になる気持ちを頭の隅に抑え込みながら、俺は階段を駆け下り、足を速めた。


  ガラッ!


 遅刻一秒前。俺は2-Cの教室のドアを滑り込むようにして開けた。


 教壇の上には、すでに厳しい顔をした幾何担当の学年主任が腕を組んで立っている。


「赤坂! 予鈴が鳴ってから何分経っていると思っている! たるんでるぞ!」


 廊下にまで響くような叱責の声。

 周りの医者の息子たちが、哀れみの目で俺を見てくる。あぁ、終わった。今日の放課後は反省文だ……。


 俺が絶望しかけた、その時だった。


「すみません先生。僕が階段で彼を引き留めていたんです」


 俺の後ろから、ひょっこりと瑛斗が顔を出した。あいつは2-Eのはずなのに、なぜか俺の教室の前にいたらしい。


 すると、次の瞬間。


「あ……。せ、瀬戸くん、だったな」


 さっきまで鬼のようだった学年主任の表情が、一瞬でピキッと固まった。

 先生はあからさまにうろたえ、額にうっすらと冷や汗をにじませながら、ネクタイを少し緩める。そして、いつもの厳しい口調とは打って変わった、丁寧なトーンで言葉を紡いだ。


「い、いや、瀬戸くんがそう言うなら……何か深い理由があったんだろう。今回は不問にする。赤坂くん、次からは気をつけるように。早く席に着きなさい」


「え? あ、はい……」


 手のひら返しどころの騒ぎではない。あの厳格な学年主任が、明らかに瑛斗の顔色を伺って、言葉を選んでいる。

 瑛斗はいつものようにニコニコ笑いながら、「じゃあな、翔琉」と手を振って自分の教室へ戻っていった。


 何だ、今の妙な空気は。

 普通の一般家庭の生徒に対して、学年主任がこんなに気を遣うなんて絶対におかしい。


 モヤモヤした気持ちが消えないまま、放課後。

 俺はいものように現実逃避をするため、静かな図書室へと足を運んだ。

 新刊のラノベコーナーを見に行くと、なぜか一般の書店でも売り切れているはずの激レアな限定版ラノベや、高校生向けとは思えないほど高額な医療専門書がズラリと新品で並んでいる。

「へぇ、うちの学校ってこんなにお金あったっけ……」

 何気なく、そのピカピカのラノベを手に取り、本の裏表紙の裏にある「寄贈者名」のハンコに目を落とした。


 そこには、金色の立派な文字でこう刻まれていた。

『寄贈:瀬戸財閥 次期総帥・瀬戸瑛斗』

「……は?」


 俺の頭が、完全に思考を停止した。

 せとざいばつ? じきそうすい?

 瀬戸って、あの、俺の唯一の親友の、瀬戸瑛斗……?


「あ、赤坂くん、そのコーナーの本すごいでしょう?」


 近くにいた図書委員のクラスメイトが、小声で話しかけてきた。


「うちの学校の図書予算の半分以上、瀬戸くんのご実家がポケットマネーで寄付してくれてるんだって。校長先生も瀬戸財閥には頭が上がらないらしいよ」


 頭が上がらないどころの話ではない。

 医者の子供ばかりが集まるこの名門校の、さらに頂点に君臨するような巨大財閥の跡取り息子。それが、俺の親友の正体だった。


 脳裏に、始業式での瑛斗の言葉がリフレインする。


『……計画通りか』


 普通の一般人だと思っていた親友は、とんでもないバケモノだった。

 そして、そんな男が裏で糸を引いている「女子校との合併」が、ただのラッキーなイベントであるはずがなかったのだ。

お読みいただきありがとうございました!ついに親友・瑛斗の、とんでもない「裏の顔」が暴かれ始めました!一般家庭だと思っていた親友がまさかの超巨大財閥の御曹司……。一体彼は、12月の合併で何を企んでいるのでしょうか?少しでも「面白い!」「先が気になる!」と思ってくださったら、今後の執筆の大きな励みになりますので、ぜひ【ブックマーク】や、下にある【☆☆☆☆☆(☆評価)】での応援をよろしくお願い致します!それでは、また次回の話でお会いしましょう!

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