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01 すべての始まり

男子校×女子校の合併!糖度99%の甘い恋を夢見る主人公の前に立ちはだかる、親友の「ある秘密」とは……?初投稿作品です。どうぞお楽しみください!

 男子校。それは、俺が人生において最も行きたくない場所だった。


 だが、現実はいつだって残酷だ。俺が今まさに通っているのは、どこからどう見てもれっきとした、むさ苦しい野郎しかいない男子校である。

 男子校は最悪だ。なんせ、青春の代名詞である『恋愛』が逆立ちしてもできないのだから。


「はぁ……。あの大変な受験を乗り越えて、なんで俺はここにいるんだ……」


 俺の名前は赤坂翔琉あかさか かける。今年で高校二年生になった。

 先程述べた通り、俺が今通っているのは正真正銘の男子校なのだが、この学校には少し特殊な事情がある。


 それは、上の有名医大へ試験なしのエスカレーター式で行ける名門校、ということだ。


 そのため、校門の前に並ぶのは送迎の高級外車ばかり。休み時間の会話といえば「親の病院の経営が~」とか「最新の医療機器が~」といった、一般人の俺には到底ついていけない話ばかり。

 そう、周りは誰も彼もが将来を約束された『医者の子供(お坊ちゃん)』ばかりなのだ。

 もちろん、俺の家はごく普通の一般家庭である。ママチャリで通学し、お小遣いをやりくりする普通の高校生だ。


「あぁ、またあの格差社会と、男くさい憂鬱な学校生活が始まるのか……」


 ため息を吐きながら出席した、体育館での一学期の始業式。

 壇上に立つ校長の話は相変わらず長くて退屈だなぁ、とつくづく考えていると、校長が急に奇妙なことを口にしだした。


『――ゲホン。生徒諸君に、我が校の未来に関わる重大な発表がある。近年の少子化による定員割れの影響を受け、我が校は近くの女子校と完全合併することが決定した』


 ……ん?

 今、校長の口から、男子校には絶対に存在してはならない『女子校』という禁断の単語が聞こえた気がする。


『その女子校の名は「桜咲おうしょう女子高等学校」。都内でも随一のお嬢様進学校だ。両校の伝統をあわせ持ち、我が校は新たなる一歩を踏み出すこととなる――』


 ふーん、と他人事のように思って、頭の中でその言葉を繰り返す。


 おうしょう、じょしこう、がっぺい……は?

 え? どゆこと?


 つまり、俺らの男だらけのむさ苦しい監獄に、あの有名なお嬢様校の女子生徒たちがやってくるということか。


 え? うわ、すげぇ! まじか!

 校長、ナイス! 一生ついていきます!


 心の中で親指を全力で立てて校長にグッドサインを送っているうちに、始業式はあっさりと終わった。


 興奮冷めやらぬまま教室に戻り、自分の席に座る。クラスの奴らの噂話を盗み聞きしたところ、桜咲女子との完全合併は、今年の十二月頃になるらしい。


「いや〜、楽しみだなぁ! まさか現実で、こんなライトノベルみたいな神展開が起きるなんて……!」


 そんな風に鼻歌を歌いながら、体育館から教室へと戻る廊下を歩いていた、その時だった。


「なぁ、翔琉は合併のことどう思ってる?」


 唐突に後ろから肩を叩き、声をかけてきたのは、俺の唯一の親友である瀬戸瑛斗せと えいとだ。なお、こいつも俺と同じく、医者の子ではない一般家庭の人間……のはずだった。


「もちろん俺はウェルカムだ。むしろ大歓迎だ!」と、俺は即答。


「キモッ」あちらも間髪入れずに即答。


「ひどいな! そもそも、俺は恋がしたいんだよ! 糖度九十九パーセントの、脳がとろけるような甘い恋が!」


 これは俺の本音中の本音、魂の叫びだ。


「キッモ!」


 全く、親友に対する慈悲というものがないのか、こいつは。


「そもそ目の問題として、俺は恋愛というジャンルが大大大好きなんだ。だからだな、今回の女子校との合併は、神様が俺にくれた天啓というか……」


「はい、ストップ。そこから先は聞かなくていいや」


 瑛斗は呆れたように手を前に出して、俺の熱弁を遮った。全く、ここからが一番重要なところなのに。


「お前がどれだけ恋愛好き(脳内限定)かは、お前の部屋の本棚を見たら一発で分かるから。あと、それを現実の女子にぶつけようとしてるのが、まだ単純にキ・モ・イってのがでかいな」


 ……ぐうの音もでない。

 俺の部屋の本棚には、現実逃避のために買い集めた恋愛系のライトノベルの段が、みっちりと五段分もあるのだから。


「でもさ、親友に向かってそんな言い方はひどくない?」


「いや、『恋愛』という二文字に脳みそまで飲まれているやつには、これくらいの現実の解毒剤がちょうどいいんだよ」


「ひどいね!?」


 そんな、いつもの呆れたような楽しいやり取りをしていた、まさにその時だった。

 歩くスピードを少しだけ緩めた瑛斗が、俺に聞こえないほどの小さな小声で、ボソッと何かを呟いた。


「……計画通りか」


「ん? 瑛斗、いま何か言ったか?」


「いや、なんでもないよ」


 瑛斗は一瞬でいつものすました陽キャの顔に戻り、ふいっと目を逸らして歩くスピードを上げた。


 そんな会話を続けるうちに、俺の教室の前に着いた。俺は2-Cだが、瑛斗は2-Eだ。


「じゃあな、翔琉。また放課後な」


「おう,またな」


 手を振る瑛斗を見送りながら、俺は自分の席へと戻る。


 このときの俺は、これから始まる新生活が、甘いライトノベルどころではない――命がけの過酷な事態サスペンスになることを、知る由もなかった。

お読みいただきありがとうございました! はじめまして、作者の文月 律と申します。

今回、意を決して小説家になろうに投稿することを決意いたしました。

今後の執筆の励みになりますので、ぜひブックマークや☆での評価をお願い致します。

また次回でお会いしましょう!

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