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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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61.レベルアップした人達

お読みいただきありがとうございます

 そもそも、アンジェロはなんでカインさんを襲ったのか。テオ・オヴィなんて変異種を作ったのだってわからない。

 いや、その前にアンジェロの狙いはなんなんだ。

 あそこでカインさんの魔力を引き抜く事ができたからよかったものの、もしできなかったら僕はあいつが言ったように奴に助けを求めていた可能性もある。

 そうなれば奴はきっと、僕かカインさんを差し出す事を条件に助けてくれたに違いない。

 僕ならともかく、カインさんを差し出すなんてできるはずがないじゃないか。

 でもあいつはカインさん――エスクード侯爵家が狙いなんじゃないって言ってた。なのにカインさんを狙ってきたんだ。

 それでも、あいつからは悪意や憎悪といった感情が一切感じられないんだ。

 あいつは何がしたいんだよ――

 

 僕が考えてる間に魔法の石板――もとい、箱はどんどん川を下り、徒歩では3日かかった最後の狩猟小屋の近くまで数刻で到着する事ができた。とは言っても日暮れ過ぎに出発したから今はもうほぼ真夜中に近い時間だ。

 みんなは窮屈そうな姿勢なのにぐっすり眠っている。

 起こして小屋で寝かせてあげようかと思ったけど、ここから村までは歩いて7日かかる。

 この辺は特に起伏の激しい土地で、川は大きい谷底を流れている。その谷の尾根付近は草木が密集していて足場が悪いため大きく迂回する必要がある。

 このまま川を下る事ができれば2日もかからずに村まで帰れるけれど、流石に村までこのまま行くのは身体的にもしんどいし、これを見られるのもよくないからナシとしても、なるべく移動は少なくしてあげたい。

 みんな僕のために頑張ってくれたんだから。

 この速度ならもう少し速くできる。そしたらここから3日ほど下った中間地点の狩猟小屋まで1時間程度で行けるはずだし、そこからなら歩いても2〜3日で村に着く。

 1時間で3日短縮できるならいいよね。

 僕はみんなが眠ってるのを確認して、少し速度を上げて川を下った。


 目的の狩猟小屋の近くの川に魔法の箱を止めるとパージが目を覚ました。

「着いたのか?」

「ごめん。起こした?」

 アーノンさん達が眠っているのを見て、小声でパージが言ったので僕も小声で返す。

「ここは三の小屋の辺りか」

 景色でわかるのすごくない?

「魔力の濃さでわかるさ」

 僕の表情から察したのか、そう言ってパージは軽々と箱から飛び降りた。

「誰かがいないか見てくる。お前はずっとこれを操作してたんだから疲れてるだろ。そこにいろ」

 僕が反論する間もなく、パージは素早く走っていった。――男前すぎるだろ。

 ものの10分も経たないうちにパージは戻ってきた。狩猟小屋は水の確保のために川の近くに建てることが原則だからなのもあるけど、それでも早すぎる。

「俺もびっくりした。目が覚めてから体が軽いんだ」

 パージはそう言って少し得意げに笑いながら肩をすくめた。まんざらでもないのが分かる。

「大森林の最深部まで行ったんだし、レベルアップしたのかも」

「レベルアップ?なんだそれ」

「えっと、経験を積んで強くなったって事かな」

「いいな。レベルアップか――でも、強くなってもあいつには一撃も入れられなかった」

 笑っていたパージの顔が曇った。

 あの時の事を思い出したんだろう。パージだけじゃなく、カインさんもアーノンさんだって一撃たりとも入れられなかったんだ。パージが弱いわけじゃない。

 そう言いたかったけど、何の慰めにもならない事はわかっていたから黙った。

 僕達はゆっくりと箱を進めながら小屋に到着した。

 ゆっくりと魔法を解いて箱を下ろすとアーノンさん達が伸びをしているところだった。

「父さんたち。起きてたんですか?」

 パージの問いにニヤリと笑って頷くと、アーノンさんとカインさんも箱から飛び降りた。

「お前がどれだけ強くなったのか、村に帰ったら見てやる」

「私もレベルアップ――?というのをしているだろうからね。お手合わせ願うよ」

 それぞれに言うと、順番にパージの頭をくしゃっと撫でて小屋に入って行ってしまった。

「聞こえてたのかよ……」

 バツが悪そうに言うと、パージは僕の顔を見てニッと笑った。

「そうだな。俺だけじゃないんだよな」

 そう言うと、どこか吹っ切れたような顔で僕の肩に腕を回して小屋に歩き出した。

 僕は引きずられるように小屋に入り、埃っぽいベッドに体を横たえると、文字通り泥のように眠ったんだ。

 そう言えばさっきからアベルの声が聞こえない。あいつも寝たのかな。


 翌朝――と言うには日が高くなってから僕は目覚めた。

 数日前に比べて空気がひんやりしている。ここに来た時は夏だったのに、すっかり秋の匂いがする。この世界にも四季があるんだな。

『よく眠れたかい?』

「アベル――おはよう。みんなは?」

 なんだか久しぶりに聞くように感じたアベルの声だ。

『みんなはとっくに起きて外でじゃれ合っているよ』

「ほんと朝から元気だなぁ」

 まだ村まで2~3日はかかるっていうのに。

 昨日までの疲れのせいか、体中が筋肉痛なのは僕だけのようで、アベルの言う通りパージ達はとても楽しそうに剣を振っていた。

 村に帰ってからじゃなかったのかよ。あいつらは化け物だな。


 僕が寝ている間に毛皮の処理も終わっていたらしく、昼食を食べたら出発する事になった。

 帰りの道中は驚くほど順調で、渋るアーノンさんに毛皮を担がせるのが大変だったくらい。

 秋の気配がすると言っても日中はやっぱり暑いし、歩いているとより暑さは増すからね。

 それでも、毛皮に保存の魔法をかけてひんやりとさせると、アーノンさんだけじゃなくカインさんも喜んでたから、実はカインさんも暑がりだったのかもしれない。涼しい顔してるだけで。

 元々この辺りの魔獣相手でも苦戦すらしなかったアーノンさん達だけど、気のせいか帰りはさらに強くなっているような気がした。

 もちろん、アベルの魔力のおかげで襲ってくる魔獣が激減しているのもあるのだけど、それでも襲ってくる奴らはいる。

 特に秋から冬にかけては魔獣も凶暴化するらしく、以前アーミットの村で襲われた山狼の上位種や、イノシシの化け物みたいなやつなんかが襲ってきたんだけど、一撃で討ち取っていた。

 前はなんというか、何度か剣を交えて隙を見て止めを刺していたのが、襲ってきた魔獣をものともせずに返り討ちって言えばわかるかな?

 強さの桁が違うんだよ。

 レベルアップしすぎじゃないすか?

大森林もやっと終わりです

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