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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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59/70

59.それってどういうこと?

お読みいただきありがとうございます

 行きに比べて帰りはびっくりするくらい楽だった。

 もちろん、魔力の圧力の問題とかクリアしていたからだって言うのもあるけど、行きはまあまあ魔獣に絡まれていたのに、帰りはほぼ襲ってこない。

 時々気配はするから、魔獣がいるのはわかるけど、魔獣が僕達を避けているような気がする。

「アベル王子の魔力のせいじゃないか?魔獣は俺達よりも魔力に敏感だからな」

 アーノンさんの言っている事は間違いないかも知れない。

 アベルは僕といるけど、魔力は漏れないように気を付けている。

 もし村に戻った時に、みんながアベルの魔力の圧力で具合が悪くなったりしたら大変だからね。

 だけど、やっぱり匂いというか、少しだけ漏れてしまうんだよ。

 人間には感じない程度の魔力だから気にしていなかったけど、魔獣には感じられるんだろう。


「じゃあシゲルはここにいてくれ。父さんは水を汲んでおいてください。俺はカインさんと食材を調達してくる」

 水辺の近くの岩盤の上に丁度いいスポットがあったので、そこで昼の休憩を取る事になった。

 パージに僕はここにいるようにと言われたのだけど、僕が行くと魔獣が近寄ってこないから食材になる魔獣すら狩れないんだって。良し悪しだな。

 何もしないのも気が引けるので、僕も水を汲みに行くと言ったのにアーノンさんに断られたので、仕方ないから荷物を下ろして周辺で焚き木になりそうな枯れ枝を集める事にした。

 水場の近くだから、色んな魔獣の痕跡が見える。この旅の間にアーノンさん達に教えてもらったから、随分とわかるようになってきた。

 足跡もそうだし、倒木なんかにも魔獣の爪痕があったりして、この辺では頻繁に縄張り争いが行われているのがわかる。

 丁度いい感じに乾燥した、長さが2メートルほどある太めの枯れ枝を見つけてご機嫌になっていると、目の前の木にナイフで入れた切り込みを発見した。

 森を歩くときに一定の間隔で切り込みを入れて、目印にしていたんだ。

 日数を示す線と、方角を示す切り込み。

 僕が入れたから覚えている。ここは、ライオウと戦った場所だ。

 ライオウの毛皮は高く売れるからって、あの戦いの後解体して保存の魔法――つまり冷凍して結界を張っておいたんだ。

 僕は枯れ枝を置いて、結界を張った場所を思い出しながら探してみた。

 丁度良く倒れた2本の木の陰を覗くと、僕達が隠した通りのライオウの毛皮がしっかり3頭分凍ったまま置かれていたのを見つけた。


「どうやって持って帰るかだな」

 ライオウの歯も高値で売れるというので、頭ごと持って帰りたいのだけど、僕の顔よりも大きい頭が4つ。

 それに図体も馬並みに大きいとなると、皮だけとは言え担ぐにも苦労する大きさだ。

「漫画みたいにアイテムボックスとかあったらいいのに」

『そんな荒唐無稽な魔法あるわけないだろ』

 僕の独り言にアベルが突っ込む。

 僕からしたら魔法自体十分すぎるくらいに荒唐無稽だけどね。

『君の世界ではそうだろうけど、私にとっては生まれてから慣れ親しんだ当たり前のものだ』

 どこか自嘲気味に聞こえるのは気のせいだろうか。

「魔法って万能のようで万能じゃないんだな。ラノベとかでよくあるように、亜空間とか異次元とかに出し入れ出来たら楽なのに」

『物質を違う次元に飛ばすのはとても魔力を要するんだよ。それに飛ばした先でその物質が安定している保証もないのに、更に自由に移動させるなんてとんでもない事だね』

「ちょ――そんなに物騒な事なの?」

『物質というのは次元ごとに最適な形に構成されているんだ。逆に言うと、だからこそその次元で安定して存在しているとも言える。次元を超えるという事は物質の構成を分解して、その次元に沿った状態で再構成する必要があるんだ。君らの世界で言うところで分子レベルで分解して再構成させるって事だね』

「それを毎回する必要があるって事?――いや待って……それってもしかして僕の体も?」

『そう。初めは君の魂の私の部分だけを呼ぶつもりだったんだけどね。肉体ごと来てしまった』

 ちょっとそれどういう事。僕をこの世界に呼んだのはお前じゃないのかよ。

『だから、私が呼び寄せようと思ったのは魂だけなんだよ』

「魂は次元の制約を受けないって事?」

『その通り。魂というのは今の私を見て分かる通り、実体を持たない。だから次元や時間、空間に影響されることがないんだ。さしずめ魂というのは君の世界で言う魔法みたいなものだね』

 なるほど。そう言われればそうだ。

 ホラー映画でもお化けや霊はあちこちに出るけど、ゾンビみたいな実体のある奴らはわざわざ移動して追いかけてくるもんな。

「だけど、僕の魂――いや、アベルの魂でもあるのか?――ともかく、アベルの部分だけってどういう事?」

『君の魂は私が分けたものだけど、君という意識が宿っている。わかりやすく言えば、私の意識の上に地層のように君の意識や記憶が包み込んでいると言えばいいのかな』

「そのアベルの意識がこっちに来たら、あっちにいたはずの僕はどうなるんだよ」

 核が無くなった魂って、死んじゃうんじゃないの?

『どうもならないさ。さっきも言ったように、魂に次元も空間も関係ない。ここに在る魂はあちらにも在るのさ』

 なんとなくわかるけど、物質世界に生きている僕には難しい話だ。

 だけど――

「だったら僕はこの世界に来なくてもよかったって事じゃないの?」

『そうなんだよ。――むしろ、なんで来たんだい?』

 お前が連れてきたんだろうが……。


 禅問答みたいな会話をしていても脳みそが痒くなるだけだ。

「僕はちゃんと帰れるんだろうな」

 問題はそこだよ。

 アベルはどうして僕がここに来たのかわからないって言っているって事は、僕を帰す方法もわからないって事じゃないの?

『そこは問題ない。まだ完全ではないが君が来た時にできた次元の歪みについて解析を進めている』

 そうなの?解析し終わったら帰れるって事?

『帰せるよう努力はしようと思っている』

 なんだよ、その政治家みたいな返事は。帰すって言えよ。

 くそっ。アベルの奴引っ込みやがった。

活動報告でもお知らせしておりますが、年度末で仕事が忙しく執筆の時間を取るのが難しい為、4月までお休みさせていただきます


再開しましたらよろしくお願いします

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