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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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46.気を取り直して

お読みいただきありがとうございます

 アンジェロが去ってすぐに、僕はみんなを集めて結界を張った。

 幸いなことに、以前よりダメージは少なく、10分足らずでカインさんもアーノンさんも動けるようになっていた。

 だけど、パージは魔力を乱されたわけじゃなくて、あの一撃に魔力のほとんどを込めていたせいで動けないでいる。

「後先考えずにあんな大技を出すからだ」

 アーノンさんが厳しい口調で言っているけど、その目には心配の色が浮かんでいる。

 僕も同意だ。蹴り飛ばされただけで済んでよかったけど、もしあの場で刺されたりでもしたら今頃パージは――考えるだけでも嫌だ。

「すみません。あの場で止めを刺さなきゃって気持ちが逸ってしまって」

 ぐったりと横になったまま、パージは申し訳なさそうに目を伏せた。

 グレーの瞳が潤んでいるのが見える。

「そういう時こそ冷静にならないと。君は狩りの時は驚くほど冷静なのに」

 カインさんも子供を叱るような口調になっていて、パージは唇を噛んで悔しそうにしている。

「とにかく、パージの回復を待っていては時間がもったいない。シゲル――」

 そう言ってカインさんが僕を振り返った。

 カインさんの魔力をパージに渡せと言っているんだ。

「あいつの言う通り、私は魔力を無駄に持て余しているからね。多少パージに渡したところでどうという事はない」

 驚いてカインさんを見上げるパージに、カインさんは優しく笑って頭を撫でた。

「それに、そろそろ魔力を吸収してもらわないと、私も少々息苦しさを感じているしね」

 カインさんは笑って僕に手を差し出した。

 確かに、カインさんの魔力はパージ一人に渡したところでどうなるほどではない。だけど、僕はなんとなく嫌な予感がして、カインさんの手を握るのを躊躇った。

 それでも、パージの為にやらなきゃって気持ちが僕の背中を押して、僕はカインさんの魔力をパージに移してあげた。

 ほどなくして、パージは起き上がれるようになり、干し肉を軽くあぶった昼食を取ると、いよいよアベル王子が囚われている場所へと踏み出した。


 崩れた石垣から先は、これまで以上に魔力が濃いと思っていたけど、そうじゃなかった。

「息がしやすい」

 先頭を歩くカインさんがポツリと呟いて、僕も気付いた。

「魔力の濃度はこれまでと比較できないほどなのに、圧力を感じない」

 カインさんの後ろを歩いていたアーノンさんも驚いたように続いた。

「圧力どころか、まるで柔らかい布に包まれているような気さえする」

 カインさんの言葉に、僕の隣を歩いているパージも頷いた。

「これが――アベル王子の心……」

 パージが小さく呟いた。

 森の中はとても穏やかだった。大森林と思えない程に。

 パージがアベル王子の心って言った意味がよく分かるくらい、穏やかな魔力が辺りに漂っている。満ち足りた、優しい魔力だ。

 木々は生い茂っているけど、夏の木漏れ日がキラキラと輝いていて、見かける魔獣達も穏やかな顔つきで襲ってもこない。これまでの昼なお暗い大森林の様相や僕を見たら襲い掛かってくる魔獣達とは全く違う。

「驚いた――」

 以前見たコモドオオドラゴンや、イノシシの化け物みたいな奴もいたけど、目が合ったのに興味がないと言うようにどこかに行ってしまったのを見て、アーノンさんが呟いた。

 耳を澄ませると小鳥の鳴き声も聞こえてきて、これまでの旅が嘘のようだ。

「あいつが言っていた事――」

 周りの景色に見とれている僕に、パージが話しかけてきた。

「あいつはお前に自分の助けが必要になるって言ったんだよな」

 そういえば言っていた。

「あいつはなんで一人であんな場所にいたんだ。俺達についてきたにしても、気配もなかった。それに、いくら魔法に長けているとはいえ、一人でここまで来れるわけがない」

 パージの言葉はもっともだと思う。

 いくら空を飛ぶように翔けてこれたとしても限界はある。一日やそこらで追いつける距離でもないし、食料だって必要だ。

 僕達人間は魔獣のように魔力を食べて生きる事なんてできないんだから。

 だいたい、なんでアンジェロは魔法の根源まで理解していたんだ。

 考えてもわかるわけなんてないのはわかってるのに、考えてしまう。

「あいつはなんであんなに僕に執着するんだろう」

「お前の魔力が特別だって言ってたな」

 僕の呟きに合わせて、パージが返してきた。

 せっかくの穏やかな雰囲気が台無しだ。――なんて、数刻で平和ボケしてしまった僕は、少し口を尖らせた。

 でも、よく考えるとこういう時じゃないと話せない。魔獣に襲われる危険性があったこれまでの道中では、常に神経を尖らせていたから、会話だって必要最低限しかなかった。

「それと何か関係あるんだろうか」

 パージが唇に手を当てて小さく呟いた。グレーの瞳を伏し目がちにして長いまつげが覆っている。

「パージやアーノンさんだって、僕の魔力は大森林の魔力に近いって言ってたよね」

「ああ。今だってそうだ。お前が目の前にいないと、お前の魔力を感知できない程に、お前の魔力はこの周辺の魔力と溶け合っているように思える」

 何だって。自分じゃ自分の魔力なんて感じられないからわからなかったよ。

「とにかく、理由はわかんねえけど、あの野郎の狙いはお前なんだ。気を抜くな」

 パージの言葉に、アーノンさんとカインさんも振り返って頷いた。


『君達は先に進むといい。そこできっと私の力が必要になるだろう。そこで私を呼ぶといい。そうしたら助けてあげるよ』


 アンジェロの言葉が頭に思い浮かぶ。

 一体何を仕掛けてくるって言うんだ。

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