39.フラグは回収するものだって
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フラグってのは立てば回収されるものでして。
僕は本当になんでこんなところにいるんだろうって思ったよね。
「ライオウって一頭じゃなかったんですかあ?」
「俺が戦った時は一頭だったな」
「そりゃ動物なんだから繁殖もするだろうよ」
「一人一頭でいいかな?私はあの大きいのをやろう」
「いやいやいやいや。僕も頭数に入ってるんですか!?」
って言うのも、僕達は今4頭のライオウに囲まれている。
あの野営地から2日進んだ今日、ずっと視線を感じると思っていたら、気が付いたら囲まれていたんだ。
もちろん、気が付いていなかったのは僕だけで、三人は初めから気付いていたどころか、戦いやすい場所に着くまで誘導するように動いていたらしい。ふざけんなよ。
緊張が張り詰める睨み合いを打ち破ったのは一番体の大きいライオウだった。
奴は僕めがけて飛び掛かってきた。
カインさんが相手するんじゃないのかよ!って叫びそうになったけど間に合わない。
ぎゅっと目を閉じて身をすくめた僕の前に、なんとカインさんが立ちはだかっていた。
「魔獣と対峙している時に目を閉じるな!」
アーノンさんの叱責が背中に聞こえる。
振り向くとアーノンさんもパージもそれぞれライオウと戦っていた。
カインさんだけが、二頭のライオウを器用に剣でいなしながら戦っている。
「長くはもたないよ、シゲル」
カインさんの言葉に僕はやっと体勢を立て直した。
そうだ。ここまでは僕はほとんど皆に守られてきたけど、そんなんじゃだめだ。
あの時みたいに誰かが怪我したらどうするんだよ。
「カインさん!魔法を打ちます」
僕が言うと、カインさんは僕を振り返る事もなく、大きいライオウの眉間に蹴りを入れて距離を取った。
なんてすごい人なんだろう。圧されているように見えたけど、ちゃんと自分のペースに持って行っている。
けど、感心している暇はない。
僕はカインさんが飛び退いた隙を狙って、テオ・オヴィーにしたように、地面から何本もの鋭い槍を飛び出させた。
仕留めた――と思ったのに、ライオウは一瞬早く身を翻して後ろに飛び退いた。
「魔力が詠まれている――?」
「いや、よくやった」
僕の独り言に答えるように、カインさんは後ろに飛び退いたライオウに飛び掛かると、あっという間に首に剣を突き立てた。
しかし、ライオウは一頭じゃない。動きを止めたカインさんに、もう一頭が雷撃を放った。動きを読んでいたのか、カインさんは防御の魔法を展開してそれを防ぐと、剣を引き抜いてもう一頭に飛び掛かった。
ライオウは横に飛び退こうとしたけど、カインさんの方が一瞬早く、振り下ろした剣の先がライオウの顔を斬りつけた。
剣はライオウの左目を斬り、混乱状態になったライオウは鋭い爪を振り回し、周囲に雷撃をまき散らしながら暴れている。
こうなると近寄れない。
でも――。
僕はもう一度落ち着いて魔法を展開した。
ライオウの右側に土の槍を突き立てる。そして――僕の魔力を察知してさっきと同様に左側に飛び退いたその先に、同時に展開した魔法によって開けられた大穴があった。
潰された左目じゃ見えなかったのと、同時に展開したせいで魔力を感知できなかったんだろう。着地した先に地面がない事に気付く間もなく、ライオウは穴に落ちて、その中に出現させていた土の槍に串刺しになって絶命した。
「こっちは片付いたが、お手伝いは必要かい?」
カインさんの涼しい声に顔を上げると、背後ではアーノンさんとパージが戦っていた。
「いりませんよ」
「不要だ」
流石親子と言っていいのか、二人とも同時に断る。
アーノンさんの方がパージよりも先に仕留めた。
剣から炎を出してライオウが怯んだ隙を見て、なんとその炎を槍のようにしてライオウの口から体を突き刺した。
さしずめファイアランスってところか。こんなことができるなんて。
パージの剣は雷撃の魔法だ。ゲームなんかでは雷系のモンスターには雷系の魔法は効きにくいものなんだけど、ここはゲームの世界じゃない。
パージが繰り出す雷撃にライオウは身を躱して逃げているのを見る限り、効かないわけじゃないのはわかる。
ただ、手数はパージの方が多いのに、パージはじりじりと後退している。
圧されているようにも見えないのに、なんでだろう。
そう思っていると、後退したパージの背に大きな木が当たりそうになった。
足に触れた木の根に目を落としたその隙をライオウは見逃さず、パージに躍りかかった。
けど、パージの方が早かった。
ライオウが地面を蹴るよりも一瞬早く、地面を蹴ったパージは空中で剣を振った。
剣からは、シニストロの樹海で見せたような細い稲妻が走り、ライオウの体を貫いた。
動きを止めたライオウの首を、パージは余裕の表情で掻き切ってアーノンさん見て、ドヤ顔をしている。
「それはまだ子供のライオウだ。勝てて当然だ」
アーノンさんは厳めしい表情のまま、パージに近寄るとパージの頭をポンポンと叩いた。
「子供?成獣ですよ!」
「なりたてだ」
ムキになるパージに、アーノンさんはパージが倒したライオウの手を持ち上げると、パージに見せた。
「ライオウの成獣は爪が黒い。子供は爪が緑がかっている――見えるか?」
アーノンさんの言葉に、パージは顔を真っ赤にして、カインさんは吹き出すのを我慢できなかった。
ってか、5日間寝食を奪われたって言ってたのに――勝ったよ?
「あの時は10日くらいまともに寝てなかったし、飯も食ってなかったからな。今はパージがいるし、シゲルのあの涼しい魔法もあるからな」
そう言えばアーノンさんは料理ができない。つまりライオウと対峙する以前からコンディションが悪かったって事?
僕が唖然としていると、アーノンさんは厳めしい顔を少し崩して、左目の横の傷に手を当てた。
「俺も若かったからな。今はあの頃に比べて強くなってる。それに、この剣もあの頃は使い物にならなかった。今回勝てたのはシゲルのおかげでもあるさ」
そう言ってアーノンさんは僕を見て笑ってくれた。
実は入院しておりまして…更新がまちまちですみません




