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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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34/70

34.手の付けられない大人たち

お読みいただきありがとうございます

「おじい様!何を言うんですか!」

 声を荒げたのは辺境伯だった。町長も言葉にならないものの腰を浮かして驚いている。

「お――おじい様?」

 僕が思わず声を上げると、辺境伯と町長は僕を見てゴホンとわざとらしく咳払いをした。

「ここにいるコーウェンとルーカスは私の孫なんだよ」

 どう見ても孫の方が年上だろうよって言うのは無粋なのはわかっている。わかっているけど言わせてほしい。

 あんたどう見ても30前後だろうが。

「フローニィ辺境伯のご子息の元に私の娘が嫁いでね。その子供達がコーウェンとルーカスというわけだ」

 その見た目で孫とか言わないでほしい。外見はともかく、話し方はすっかり孫を自慢するおじいちゃんそのものなのがなんだか悔しい。

「それよりも、おじい様。本気ですか」

 町長が目を見開いてカイン様に食って掛かる。

「本気だよ。――エスクード侯爵家の者としてはアベル王子の現身を補助するのは当然の事だろう」

 カイン様はそう言って笑って僕を見た。

「エスクード侯爵家はアベル王子の師匠であるジュノアの末裔だ。私はジュノアの生まれ変わりではないが、最も近い存在と言われているんだよ」

 それは知らなかった。

 僕はあの夢を思い出した。辺境の砦で二人きりで帝国軍の猛攻を退けていたアベル王子とジュノア師。その人の子孫がこのカイン様なんだ。

「この国――いや、この世で私以上の魔力の持ち主は他にいるまいよ。シゲル君を除いてはね。そこの二人も大した魔力量ではあるが、もう一人くらい保険に必要じゃないか?それに、私はいつか挑戦してみたかったんだよ。大森林にね」

「しかし、おじい様がいなくなればこの国はどうすればいいのですか」

 辺境伯も負けていない。町長と二人でカイン様に前のめりになっている。

「私は爵位を息子に譲って引退した身だよ。いつまで老人を働かせるつもりだ」

 カイン様は唇を尖らせて見せるけど、セリフを聞かなきゃお父さんに怒られてる息子の図だよ。

「しかし――」

「無駄に長生きはしているが、私だっていつかは死ぬ身だ。このままいけばお前達どころか、シルヴィアよりも長生きするかもしれない。……とはいえ、私が何かのはずみで突然死んでしまったらどうするつもりだ」

 カイン様の言葉に、辺境伯は言葉を詰まらせた。それを見てカイン様がニヤリと意地の悪い笑いを浮かべたのを僕は見逃さなかったからね。

「アーノン、大森林への旅はどの程度を予定している」

「少なくともひと月はかかるとみています」

 アーノンさんの回答にカイン様は思案する仕草を見せて、すぐに晴れやかな顔に戻って辺境伯の肩に手を置いた。

「よし。ひと月の間私は休暇を取る。その間はお前たちが全て取り仕切れ。首都のアーヴィンにもそう伝えるように。私が死んだときの練習だ」

 有無を言わさぬその圧は、多分ちょこっと魔力を込めている。だって僕にもわかるくらい辺境伯と町長の顔色が蒼くなっているもの。

「それなら私も行きます!」

 ずっと黙っていたシルヴィアが立ち上がった。

「ひいおじい様だけずるいわ。私だってエスクードよ。それに、魔力ならそこのパージにも負けていない。今度こそ戦うわ」

「駄目だ」

 反対したのはパージだった。

 貴族の前では許しがなければ口を開いてはいけない。だからずっとパージは口を閉ざしていたのに。

「あんたはシニストロの樹海ですら魔力の濃さに気圧されてただろ。テオ・オヴィーにも一歩も動けなかった。圧倒的に場数が足りない。そんな奴を大森林に連れて行けない」

「パージの言う通りだ」

 カイン様も立ち上がって、顔を真っ赤にして悔しそうにしているシルヴィアの肩を抱いた。

「お前が騎士になりたいという気持ちは尊重したい。テオ・オヴィーの討伐に赴き、自分の力量を知れと言う私の課題をこなして尚戦おうと気構えがあるお前だ。鍛錬を積めばきっと立派な騎士になれるだろう」

 カイン様の言葉に、シルヴィアの表情が崩れた。けど、シルヴィアから見えない角度にあるカイン様の顔には黒い笑みが浮かんでいる。

 この人、多分だけどかなりいい性格している……。

「帰ってきたら私が本気でお前の稽古を付けてやる。だからお前は首都に戻り、父さんの手助けをしてやるんだ。あの子はお前に比べると魔力が小さいからね」

「おじい様が……稽古を?」

「ああ。私の可愛いシルヴィア。お前がいい子にして待っていると約束するのなら、ひいおじい様も約束を守るよ」

 勝負はカイン様の勝ちだった。

 アーノンさんも一応は反対したんだよ。貴族の身を守りながら大森林で戦うのは無理だって。

 けど、カイン様は心配なら本気で手合わせをして、自分が勝ったら連れて行けと言って、町長の家の隣にある衛兵の訓練場でアーノンさんと真剣での手合わせをして――なんと勝ってしまったんだ。

 アーノンさんの大剣に比べて、カイン様は細身の剣で、体格差もあってアーノンさんが有利と思っていたんだけど、結果はカイン様の圧勝だった。

 だけど、何度もアーノンさんはカイン様に打ち込み、初めは片手でいなしていたカイン様も、最後には両手で剣を持たざるを得ないほど、アーノンさんは強かった。

 ただ、カイン様はそれを圧倒的に上回っていた。

 アーノンさんの攻撃を全て受けながらいなして、自分は攻撃を繰り出さないのに、なぜかアーノンさんがじりじりと後退していた。

 そして、最後はアーノンさんの剣を叩き落とすと、喉元に剣を突き立てたんだ。

「ひいおじい様は見た目はあんな優男だけど、騎士隊の総隊長を30年間も務められた方よ。騎士隊が一個隊でまとめてかかっても勝てなかったほどなの」

 シルヴィアがうっとりとした眼差しで、カイン様に抱き起されるアーノンさんを見ながら教えてくれた。

「――いい……。筋骨隆々の男が細身の男に攻められる――逆転攻め――いいわ」

 小声で言っているつもりかもしれないけど、隣にいる僕には丸聞こえだからね。ってか身内をネタにするのはお腐れでも禁忌じゃないのかよ……。

 アーノンさんが負けた後、パージも何か火がついたのか、手合わせを願い出て、三人は日が暮れるまで訓練場から出てこなかった。

 ってか、二人とも病み上がりじゃないのかよ。

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