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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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30/70

30.やっぱり異世界ってとんでもない

お読みいただきありがとうございます

 アーノンさんがパージの力を借りて上体を起こして座れるくらいには回復したので、僕はさっきの出来事を二人に説明した。

「俺を回復させたのはその男だってのか」

 話し終えるとパージは自分の体をあちこち触って、違和感がないかを確かめた。

「ごめん。すぐに助けようとしたんだけど」

「いや――」

 僕が謝ると、パージは自分の左手を見ながら言った。

「おかしなところは何もないし、手だってちゃんと動く」

「でも、あんな一瞬でどうやって」

 これまで黙っていたシルヴィアが口を開いた。

「わからない。でも、僕が氷の壁を壊す間の僅かな時間でやってのけた事は確かだ」

 王宮の治癒師でも、あれほどの傷を治すのに一刻はかかるそうだ。僕でも10分以上はかかる。

「そもそも氷の魔法って何なのよ」

 シルヴィアが憤りを隠せないって感じで、吐き捨てるように言った。

 そう言えば、アンジェロもさっき自分が長い間かかって見つけたって言ってたけど。

「氷の魔法なんてこれまで存在しなかった」

 僕が戸惑っているのを察して、パージが静かに言った。

「待ってよ。だって保管庫に使ってる魔法。あれと同じだよ」

 僕が言うと、シルヴィアだけじゃなく、パージもアーノンさんも不思議そうな顔をしていた。

「保管庫に使ってる魔法はものの温度を移動させる魔法なんだよ。保管庫の中の熱を奪って、外に排出する。それと同じ事を空気中の水分にやっただけだよ」

「く、空気中の水分って何よ」

 シルヴィアの言葉に、今度は僕が首を傾げた。この世界は錬金術もあるから、ある程度科学も発達していると思ったんだけど、一般的には知られていないのか、それとも空気についてはそこまで研究がされていないのか。

「つまり……その、空気には僕達が呼吸に使う酸素の他に、目には見えない水分があってね。ほら、お湯を沸かし続けると水が減るでしょ?あれは水が蒸発して空気中に溶け込んでいるんだよ」

 小学生に説明するような気分だ。

「錬金術では当たり前の事なんだけど、一般的には知られていないのかな?――はは」

 僕が錬金術って言うと、シルヴィアは渋々納得した。やっぱりこの世界でも錬金術師ってのは科学者的な役割もしているみたいだな。

「つまり、その空気中の水分を集めて水にした上で、その水の熱を奪って凍らせたんだよ」

「それを、魔法陣も出さずにやってのけたってわけ?」

 シルヴィアさん、あの状況でめちゃくちゃ冷静に見てたんですね。

「アンジェロもそうだったわ――あなた達一体何なの」

「シルヴィア。落ち着いたら俺から説明する。今はそれで納得してくれ」

 アーノンさんの言葉にシルヴィアは何か言いかけて、口を閉じた。

 そして、それから一刻近くしてシルヴィアが呼んだらしい迎えがやってきて、僕達は二日間の討伐を終えてシニストロの町に戻る事になった。


 アーノンさんとパージの回復力は凄まじく、樹海から戻って二日間だけ寝込んだけど、三日目には普通に歩けるほどに回復していた。

 アーノンさんの回復を待って、シニストロの町長と辺境伯、そしてシルヴィアの曽祖父である先々代のエスクード侯爵に今回の報告をする事になっていた。

 本来なら僕達が辺境伯領の首都まで行かなければならないそうだけど、アーノンさん達の体調を慮って、辺境伯自らこの町まで来てくれたらしい。

 討伐も済んで長居はしたくないと言うアーノンさんによって、僕達は町長の家へ向かう事になった。

 町長の邸宅はアソンの村長の家とは比べ物にならない程、豪華な邸宅だったけど、辺境伯の末の弟が町長だと聞いて納得した。

「もう起きて大丈夫なの?」

 僕達が来ると聞いて門の前で待っていたシルヴィアが出迎えてくれた。

 今日はチュニックにパンツではなく、女の子らしい淡いピンクのワンピースというか、ドレスを着ている。ロココ調のコルセットで締め付けるようなドレスじゃなくて、ゆったりとしたゴシックスタイルのドレスだ。

 シルヴィアのあどけなさが残る綺麗な顔と、結い上げられた金色の髪によく似合っている。まるで物語に出てくるお姫さまみたいだ。

「ご心配をおかけしました」

 アーノンさんが丁寧な言葉と共に、胸に手を当てて腰を落とす。

「やめて。もうパーティではないけど、あなたに丁寧に話されるとくすぐったいわ。叔父様達にも伝えているから私には前と同じように接して下さい」

「承知した」

 僕達は、シルヴィアの先導で門をくぐって、生垣が綺麗に刈り込まれた前庭を進み、町長の邸宅の玄関までやってくると、そこにはシルヴィアによく似た男の人が立っていた。

 30代前後くらいだろうか。スラリと背が高く、シルヴィアと同じ空の色の青い瞳に整った顔立ちは人間じゃないみたいに綺麗だ。二人が並ぶと本当に生き写しで兄と言うには年が離れすぎているけど、父親と言うには若すぎる。そんな感じだ。

「ひいおじい様よ」

 何だって?

 確か先々代のエスクード侯爵は100歳前後のはず。この人はどう見ても30そこそこだろ。――いや、でもアーノンさんだって47歳なのに、見た目はどう見ても35歳前後。

「君達がシルヴィアが世話になった人達だね。私はカイン・エスクード。爵位は息子に譲ったから、ただの隠居老人だ。気楽に接してほしい」

 今老人つった――?

 確かにこの世界は魔力が大きい人ほど老けにくいって言うのは聞いているけど、それでも若すぎないか?以前アーノンさんがあと100年は生きるって言ってた意味がよく分かる。だって、この人の魔力とんでもないんだもん。

「ご丁寧にありがとうございます。私はアーノン。こっちが息子のパージと、見習いのシゲルです」

「私の事はカインと」

 二人のやり取りを聞きながら、パージ真似をしてお辞儀をすると、今度はカイン様の先導で邸宅の中を案内された。


気がつくと30話まできました

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