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【中断】最強魔法使いは異世界から帰りたい  作者: やまだ ごんた


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27.餌は僕?

お読みいただきありがとうございます

 薪割りを終えて、パージと二人で小屋に戻ると、シルヴィアは入浴を済ませて眠った後だった。

 アーノンさんに続いて僕達も順番で入浴を済ませると、一日中慣れない森の中で歩き続けた疲れからか、僕もすぐに眠っていたようで、気が付くと埃っぽい毛布を被って眠っていた。――多分先に眠ってしまった僕をパージが寝床に連れてって毛布を掛けてくれたんだろうな。ありがとう、パージママ。

 翌朝も夜明け直後から樹海で調査かと思ったら違った。

「昨日通ったこの辺りに、丁度よく開けた場所があった。ここで待ち構える」

 地図を広げながら、アーノンさんが説明してくれた。

「待ち構えるってどういう事?」

 僕が尋ねる前にシルヴィアが尋ねてくれた。

「昨日シゲルの魔力を撒いた地点がここと――」

「僕の魔力?」

 地図を指さして説明するアーノンさんに、思わず割って入る。なにそれ、そんなの聞いてないんですけど。

「魔法を使っただろ」

 使いましたけども――って。

「もしかして、魔法を使ったら痕跡って言うか、残滓って言うか」

「そうだ。魔獣の中でもオヴィーは特に嗅覚がいい。その嗅覚で標的を見つけ出して狩る。あれだけの痕跡を残せば、今頃大喜びでお前を探しているだろうよ」

 心なしか楽しそうなアーノンさんだけど、ちょっと待ってよ。

「昨日言ってた罠ってそう言う事?ってことは、餌は……僕?」


 魔獣となんか戦った事もないのにいきなりターゲットになれとか言われても無理でしょ。僕は絶対に行かないからね。ここで皆さんを待ってますからね。

 って駄々をこねたものの、大森林に行くためにはこのくらい当たり前だし、僕は結界に閉じこもっていればアーノンさん達が戦ってくれるからって説得されつつ、シルヴィアに情けないだの弱虫だの罵られつつ、渋々みんなについて行く事になった。

「ハンターの修行なんでしょ?戦いなさいよ。怖気づいてたら大森林どころか、その辺の森も入れないわよ。本当、魔力の持ち腐れね」

 アーノンさんの後ろを歩きながら、シルヴィアが僕の隣でずっと文句を言う。しんがりはパージだ。

 昨日魔力を撒いた地点を確認しながら、新しい痕跡を探し、言われた地点で魔法を使いながら、アーノンさんが言っていた待ち伏せポイントまでやってきた。

「水場の辺りに新しい痕跡があった。昨日はなかったものだ。おそらく俺達と入れ違いに通ったんだろう」

 アーノンさんの説明に全員に緊張が走るのがわかる。

「シゲルとシルヴィアは結界で身を守れ。オヴィー達は俺達が引き受ける」

「何言ってるの。私も戦うわよ」

「オヴィーと戦った事は?」

 アーノンさんに食って掛かろうとするシルヴィアに、パージが尋ねた。

「――ないわ」

「オヴィーは小型だが、群れで統率の取れた動きをする。まず先行する組が敵の足を止める。そして次の組が標的に攻撃して注意をひきつけ、隠れていた残りが止めを刺す。おそらく習性はそう変わらない。けど、テオ・オヴィーの大きさでも同じような戦い方をするとは限らない。なら、魔獣との戦いに慣れていないあんたじゃ足手まといになる」

 パージの言う事は尤もだ。パージやアーノンさんは何度もオヴィーを討伐しているからこそ、ある程度予測を立てた戦い方ができるはずだ。でもシルヴィアはそうじゃない。一人不慣れな戦い方をするのを見破られると、魔獣はシルヴィアを狙うかもしれない。

「パージの言う通りだ」

「でも――私は戦わないと……」

「遊びじゃないんだよ!」

 食い下がろうとするシルヴィアにパージが声を荒げた。

「その辺の森で雑魚相手に戦って強いつもりかもしれねえけどな、魔獣は弱くない。一瞬の気の緩みやはずみでどれだけ手練れでも為す術もなく殺される事だってある。お前のつまんねえ意地で俺達を危険に晒す気か」

「パージ、言いすぎだ」

 激昂するパージの肩にアーノンさんの手が置かれて、我に返ったパージは悔しそうに唇を噛んだ。

 アーミットの村を思い出してるんだろうか。お母さんの事を。

 シルヴィアも気が付いたようで、視線を落としている。

「戦いたい気持ちはわかる。だが、俺達はあんたの護衛でもある。あんたを危険に晒すわけにはいかないのもわかってほしい」

 アーノンさんの言葉に、シルヴィアは小さく頷いた。

 シルヴィアの悔しさもわかる。役に立たない自分が歯痒いんだろうな。

 でも、シルヴィアだってわかっているはずだ。昨日程じゃないにしても、樹海の魔力にまだまだ圧されて息が上がっている。こんな状態じゃ集中力だってもたないに違いない。

 幸か不幸か、これまでに出没した魔獣は昨日の狼とバラヌスだけで、今日に至っては小型の魔獣すら見かけない。

 僕も役立たずだけど、罠用に魔法を使って魔力を撒き散らしている分だけ、少しは役に立てている。それに比べて、シルヴィアは狩りの事もわからないからテオ・オヴィーの痕跡を見つける事も出来ず、戦う事も出来ずただ単についてきただけになっている。

 銀の防具は決して華美ではなく、よく見ると傷だらけで使い込んでいるのがわかる。剣だって夕食前にちゃんと手入れしているのを見た。

 彼女はこれまでも鍛錬を積んでいたんだろう事も、彼女なりにちゃんと戦う覚悟でここに来ているのは、僕にもわかるくらいだから、パージだってもちろんわかってるんだ。

 それでも、戦った事もない相手だ。何があるかわからないから、戦わせるよりも守る事を優先するのは当然なんだと思う。

 そんな事を考えていると、アーノンさんとパージの気配が一気に殺気立ったのを感じた。

「シゲル、結界を張れ。何があっても絶対に結界から出るなよ」

 パージの声と同時に灌木の向こうから飛び出してきたのは、草竜より少し小さくてひょろ長い、しかし前脚に鋭い鉤爪と、嘴のような長い口にこれまた鋭利な牙を生えそろわせた恐竜――いや、魔獣だった。

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