↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第ニ次測量 東日本

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/85

第63話「師匠は何も聞かない」

翌日。


     ◇


「忠敬さん」


     ◇


俺は。


呼ばれた。


     ◇


高橋至時。


     ◇


俺の。


師匠。


     ◇


「…………」


     ◇


昨日。


願った。


     ◇


明日も。


何も。


ありませんように。


     ◇


神様。


     ◇


聞いてた?


     ◇


     ◇


俺は。


師匠のところへ。


向かった。


     ◇


歩きながら。


考える。


     ◇


何だ?


     ◇


何の用だ?


     ◇


蝦夷地の。


測量は。


終わった。


     ◇


幕府への。


報告も。


終わった。


     ◇


まさか。


     ◇


何か。


バレた?


     ◇


「…………」


     ◇


ありえる。


     ◇


むしろ。


今まで。


よく。


バレなかったな。


     ◇


俺は。


伊能忠敬じゃない。


     ◇


中身は。


別人。


     ◇


当然。


忠敬なら。


知っているはずのことを。


     ◇


俺は。


知らない。


     ◇


師匠の前でも。


何度か。


やらかした。


     ◇


「…………」


     ◇


帰ろうかな。


     ◇


いや。


無理だ。


     ◇


呼ばれてる。


     ◇


俺は。


覚悟を決めた。


     ◇


     ◇


「お待ちしていました」


     ◇


師匠は。


いつもの。


穏やかな顔で。


俺を迎えた。


     ◇


「どうぞ」


     ◇


「はい」


     ◇


座る。


     ◇


師匠も。


座る。


     ◇


「…………」


     ◇


「…………」


     ◇


何?


     ◇


怖い。


     ◇


早く。


言って。


     ◇


「忠敬さん」


     ◇


「はい!」


     ◇


声。


でかくなった。


     ◇


師匠が。


少し。


驚く。


     ◇


「どうされました?」


     ◇


「いえ」


     ◇


落ち着け。


俺。


     ◇


「それで……今日は?」


     ◇


師匠は。


少し。


笑った。


     ◇


「蝦夷地のお話を、聞かせていただけませんか?」


     ◇


「…………」


     ◇


え?


     ◇


「蝦夷地?」


     ◇


「はい」


     ◇


師匠が。


頷く。


     ◇


「実際に歩かれた忠敬さんから、測量の様子を詳しく伺いたかったのです」


     ◇


「…………」


     ◇


それだけ?


     ◇


「何か?」


     ◇


「いえ!」


     ◇


良かった。


     ◇


バレてない。


     ◇


たぶん。


     ◇


「どこからお話ししましょうか」


     ◇


「そうですね」


     ◇


師匠は。


楽しそうに。


考える。


     ◇


「では、最初からお願いできますか?」


     ◇


「最初から?」


     ◇


「はい」


     ◇


「…………」


     ◇


長いよ?


     ◇


めちゃくちゃ。


長いよ?


     ◇


     ◇


俺は。


話し始めた。


     ◇


江戸を。


出たこと。


     ◇


歩いて。


     ◇


測って。


     ◇


また。


歩いたこと。


     ◇


「最初は、本当に進まなかったんですよ」


     ◇


「そうでしたか」


     ◇


「歩いてるのにですよ?」


     ◇


「はい」


     ◇


「全然、進んだ気がしないんです」


     ◇


師匠が。


笑う。


     ◇


俺も。


話す。


     ◇


雨。


     ◇


風。


     ◇


寒さ。


     ◇


道。


     ◇


宿。


     ◇


測量。


     ◇


そして。


星。


     ◇


最初は。


何を。


話せばいいのか。


分からなかった。


     ◇


でも。


     ◇


話しているうちに。


     ◇


次から。


次へ。


出てきた。


     ◇


「あの時は、本当に寒くて」


     ◇


「それは大変でしたね」


     ◇


「でも、星が出ると測れるんですよ」


     ◇


「ええ」


     ◇


「場所が変わると、見え方も変わる」


     ◇


俺は。


手を動かす。


     ◇


「あっちで測った数字と、こっちで測った数字を比べて」


     ◇


「はい」


     ◇


「それを地図にしていくと……」


     ◇


俺は。


少し。


言葉を探した。


     ◇


「ちゃんと、線になるんです」


     ◇


師匠が。


俺を見る。


     ◇


「最初は数字でしかなかったんですけどね」


     ◇


「…………」


     ◇


「線になったら」


     ◇


思い出す。


     ◇


道。


     ◇


景色。


     ◇


門倉。


     ◇


秀蔵。


     ◇


測量隊のみんな。


     ◇


そして。


旅の途中で。


助けてくれた。


人たち。


     ◇


「その場所のことを、思い出すんですよ」


     ◇


師匠は。


何も言わなかった。


     ◇


俺は。


続けた。


     ◇


「ここで飯を食ったな、とか」


     ◇


「ここ、寒かったな、とか」


     ◇


「ここで助けてもらったな、とか」


     ◇


なんだ?


     ◇


俺。


     ◇


めちゃくちゃ。


喋ってる。


     ◇


しかも。


     ◇


ちょっと。


楽しい。


     ◇


「…………」


     ◇


師匠が。


俺を見ている。


     ◇


「何ですか?」


     ◇


「いえ」


     ◇


師匠は。


穏やかに。


笑った。


     ◇


「よい旅をされたようですね」


     ◇


「…………」


     ◇


旅。


     ◇


俺は。


考える。


     ◇


寒かった。


     ◇


しんどかった。


     ◇


何度も。


帰りたかった。


     ◇


二度と。


やりたくない。


     ◇


それは。


今でも。


変わらない。


     ◇


でも。


     ◇


「まあ……」


     ◇


俺は。


頭をかく。


     ◇


「悪くは、なかったです」


     ◇


師匠が。


また。


笑った。


     ◇


「そうですか」


     ◇


「はい」


     ◇


     ◇


それからも。


少し。


話した。


     ◇


師匠は。


何度か。


不思議そうな顔をした。


     ◇


そのたび。


俺の心臓が。


跳ねた。


     ◇


やばい。


     ◇


何か。


間違えた?


     ◇


忠敬なら。


知ってること。


     ◇


また。


知らなかった?


     ◇


でも。


     ◇


師匠は。


何も。


聞かなかった。


     ◇


ただ。


俺の話を。


聞いてくれた。


     ◇


     ◇


「今日は」


     ◇


師匠が。


頭を下げる。


     ◇


「聞かせてくださって、ありがとうございました」


     ◇


「いえ」


     ◇


俺も。


頭を下げる。


     ◇


終わった。


     ◇


良かった。


     ◇


怒られなかった。


     ◇


バレなかった。


     ◇


たぶん。


     ◇


帰ろう。


     ◇


俺は。


立ち上がった。


     ◇


「忠敬さん」


     ◇


「はい?」


     ◇


師匠が。


俺を見る。


     ◇


「今度は」


     ◇


少し。


楽しそうに。


笑った。


     ◇


「地球のお話をしましょう」


     ◇


「…………」


     ◇


地球?


     ◇


「それまでに、少し勉強しておいてくださいね」


     ◇


「…………はい」


     ◇


俺は。


分かった顔で。


頷いた。


     ◇


全然。


分かってない。


     ◇


地球?


     ◇


なんで。


蝦夷地の。


測量から。


     ◇


地球?


     ◇


師匠は。


笑っている。


     ◇


「では、また」


     ◇


「はい。師匠」


     ◇


俺は。


部屋を出た。


     ◇


帰ったら。


勉強しよう。


     ◇


何を。


勉強すればいいのか。


     ◇


分からないけど。


     ◇


とりあえず。


     ◇


地球。


     ◇


らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。