第49話「雨なら休める?」
朝。
目が覚める。
「…………」
音。
する。
屋根。
叩く。
音。
俺。
耳。
澄ます。
雨。
◇
「…………」
雨?
起きる。
外。
見る。
降ってる。
ちゃんと。
降ってる。
「…………」
俺。
笑う。
◇
雨。
測量。
できない。
たぶん。
歩けない。
つまり。
「休みじゃん」
◇
来た。
ついに。
来た。
昨日。
腹。
治った。
今日は。
元気。
なのに。
雨。
俺の。
せいじゃない。
天気。
だから。
仕方ない。
誰にも。
文句。
言われない。
完璧な。
休み。
◇
俺。
もう一回。
布団。
入る。
「…………」
最高。
目。
閉じる。
今日。
寝る。
昼まで。
寝る。
起きたら。
飯。
食う。
また。
寝る。
◇
「先生」
声。
する。
「…………」
聞こえない。
「先生」
聞こえる。
門倉。
「…………」
俺。
寝たふり。
「先生」
「何?」
負けた。
◇
起きる。
門倉隼太。
いる。
「おはようございます」
「おはよう」
俺。
外。
指差す。
「雨」
「降っておりますな」
「うん」
「かなり」
「左様です」
俺。
笑う。
「じゃあ今日は休みだね」
門倉。
止まる。
◇
この。
間。
嫌い。
最近。
知ってる。
この。
間。
大体。
ろくなこと。
ない。
◇
「先生」
「何?」
「外での測量は難しいかと」
「だよね!」
勝った。
「ですので」
「…………」
ですので?
嫌な。
接続詞。
来た。
◇
「これまでの記録を整理いたしましょう」
「…………」
俺。
門倉を見る。
雨。
見る。
門倉。
見る。
「何て?」
「記録の整理を」
「雨だよ?」
「はい」
「外、雨」
「承知しております」
「測量できないよ?」
「ですので、記録を」
「…………」
俺。
天井。
見る。
◇
神様。
違う。
そうじゃない。
俺が。
欲しかったの。
休み。
仕事の。
種類変更。
じゃない。
◇
「門倉」
「はい」
「雨の日って」
「はい」
「休まないの?」
門倉。
考える。
また。
嫌な。
間。
「必要があれば休みますが」
「今日は?」
「記録整理を進められます」
「…………」
仕事。
ある。
◇
俺。
四十歳。
知ってる。
これ。
現代にも。
ある。
現場。
止まる。
じゃあ。
事務仕事。
やろう。
「…………」
二百年以上。
前から。
あるの?
◇
起きる。
仕方ない。
記録。
広げる。
数字。
数字。
数字。
線。
方角。
距離。
観測。
いっぱい。
ある。
「…………」
これ全部?」
「確認いたします」
「全部?」
「必要なものを」
必要なもの。
どれ?
多い。
◇
宗平たちも。
集まる。
みんな。
普通。
誰も。
「今日は休みだ!」
って。
喜んでない。
俺だけ。
だった。
恥ずかしい。
◇
作業。
始まる。
記録。
確認。
往路。
復路。
照らす。
俺。
見る。
「ここ違わない?」
宗平。
確認。
「あ」
直す。
次。
「こっちは?」
門倉。
見る。
「こちらでございます」
「じゃあ合わせよう」
「はい」
◇
仕事。
進む。
俺。
普通に。
やってる。
昨日。
道。
分かった。
今日。
記録も。
分かる。
「…………」
俺。
できる。
ように。
なってる。
嬉しい。
でも。
今日。
それ。
求めてない。
休み。
欲しかった。
◇
雨。
降る。
ザー。
ザー。
俺。
窓。
見る。
「…………」
雨。
もっと。
頑張れ。
いや。
頑張ってる。
結構。
降ってる。
でも。
仕事。
止まらない。
「…………」
強い。
伊能測量隊。
◇
昼。
飯。
食う。
俺。
聞く。
「午後は?」
門倉。
「続きを」
即答。
「ちょっとは考えてよ!」
◇
午後。
記録。
整理。
また。
記録。
俺。
途中。
気づく。
「あれ?」
「先生?」
「これ」
前の。
記録。
見る。
今の。
記録。
見る。
つながる。
◇
往路で。
測った。
数字。
復路で。
確認した。
数字。
少しずつ。
線。
できる。
「…………」
俺。
見入る。
◇
これ。
俺たち。
歩いた。
ところ。
ここ。
厚岸。
こっち。
西別。
途中。
川。
海岸。
全部。
数字。
だった。
もの。
つながる。
◇
俺。
指。
動かす。
「ここ」
来る時。
通った。
「ここも」
覚えてる。
昨日。
見た。
場所。
俺の。
頭の中の。
道。
記録の。
上にも。
ある。
「…………」
すげえ。
◇
門倉。
俺を見る。
「先生?」
「これさ」
俺。
記録。
見る。
「地図になるんだよな?」
「左様です」
知ってる。
当然。
知ってる。
でも。
今。
初めて。
実感。
した。
◇
歩く。
測る。
数字。
書く。
夜。
星。
見る。
また。
数字。
正直。
地味。
ずっと。
地味。
でも。
これ。
全部。
最後。
地図に。
なる。
◇
「…………」
俺。
少し。
黙る。
昨日。
頭の中に。
地図。
できてる。
思った。
今日。
紙の上にも。
でき始めてる。
◇
俺たち。
本当に。
地図。
作ってるんだ。
◇
「先生」
門倉。
「何?」
「手が止まっております」
「…………」
余韻。
返して。
◇
作業。
再開。
雨。
まだ。
降ってる。
俺。
記録。
見る。
さっきより。
ちょっと。
面白い。
この数字。
あの場所。
この線。
あの海岸。
分かる。
◇
「…………」
まずい。
仕事。
面白く。
なってきた。
◇
いや。
違う。
全部。
じゃない。
歩くの。
しんどい。
寒いの。
嫌。
夜。
寝たい。
牡蠣。
当たりたくない。
でも。
こうして。
自分たちが。
歩いたものが。
形に。
なっていく。
それ。
ちょっと。
いい。
◇
夕方。
雨。
弱くなる。
記録整理。
終わる。
俺。
伸びる。
「終わったぁ」
今日は。
歩いてない。
なのに。
疲れた。
頭。
疲れた。
◇
「門倉」
「はい」
「明日は?」
「天候次第ですが、出発できるかと」
「西?」
「西です」
「よし」
やっぱり。
それ。
大事。
◇
俺。
外を見る。
雨。
もう。
小さい。
明日。
たぶん。
歩く。
「…………」
今日。
休みじゃ。
なかった。
残念。
でも。
悪く。
なかった。
◇
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:25%】
「…………」
俺。
固まる。
待って。
今日。
あれだけ。
整理。
した。
記録。
確認。
した。
地図。
少し。
見えた。
なのに。
【25%】
「お前さ」
【25%】
「何したら増えるの?」
【…………】
「歩いても増えない」
【25%】
「記録整理しても増えない」
【25%】
「西別まで行っても増えない」
【…………】
俺。
だんだん。
腹。
立ってくる。
「じゃあ何の25%なんだよ!」
消えた。
◇
逃げた。
また。
逃げた。
◇
夜。
布団。
入る。
今日。
雨。
だった。
俺。
休めると。
思った。
でも。
仕事。
した。
◇
そして。
一つ。
知った。
測量って。
歩くだけ。
じゃない。
歩いて。
測って。
残して。
整理して。
つなげる。
そこまで。
やって。
初めて。
形に。
なる。
◇
「…………」
俺。
ちょっと。
分かって。
きた。
伊能忠敬が。
何を。
やってるのか。
◇
でも。
それと。
これとは。
別。
俺は。
布団。
かぶる。
「雨の日くらい休ませろよ」
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
中身。
浩哉。
四十歳。
第一次測量。
復路。
雨。
俺は。
今日。
重大な。
事実を。
知った。
雨が。
降っても。
仕事は。
消えない。
「…………」
江戸時代。
思ったより。
現代。




