第50話「48%って中途半端じゃない?」
雨。
上がった。
「…………」
俺。
空を見る。
晴れてる。
昨日。
あれだけ。
降った。
雨。
終わった。
つまり。
今日。
歩く。
◇
「先生」
門倉隼太。
「何?」
「出発いたします」
「うん」
俺。
立つ。
もう。
驚かない。
雨。
止んだ。
なら。
歩く。
測る。
西へ。
進む。
◇
「今日も西?」
一応。
聞く。
「西です」
「よし」
これは。
聞く。
◇
出発。
歩く。
測る。
記録。
また。
歩く。
いつもの。
仕事。
でも。
景色。
どんどん。
知ってる。
場所に。
なっていく。
◇
「あそこ」
俺。
指差す。
「次、あっちだよな?」
「左様です」
門倉。
もう。
驚かない。
俺も。
驚かない。
昨日まで。
道。
分かる!
喜んでた。
今日。
普通。
◇
俺。
ちょっと。
格好いい。
◇
歩く。
測る。
記録。
また。
歩く。
日。
変わる。
場所。
変わる。
俺たちは。
西へ。
戻っていく。
◇
来る時。
遠かった。
場所。
一つずつ。
越える。
「あ」
ここ。
覚えてる。
次。
「ここも」
覚えてる。
また。
次。
「…………」
本当に。
帰ってる。
◇
その時。
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:27%】
「…………」
俺。
止まる。
「増えた」
◇
二十五。
ずっと。
二十五。
西別。
着いても。
二十五。
厚岸。
戻っても。
二十五。
雨の日。
記録。
整理しても。
二十五。
なのに。
今。
二十七。
◇
「…………」
なんで?
【27%】
返事。
なし。
でも。
いい。
増えた。
二%。
たった。
二%。
でも。
俺には。
でかい。
「よし」
俺。
歩く。
◇
次の日。
また。
西へ。
歩く。
測る。
記録。
見覚えのある。
景色。
越える。
◇
ウインドウ。
出る。
【測量進捗率:31%】
「…………」
また。
増えた。
「四%!?」
昨日。
二%。
今日。
四%。
俺。
嬉しい。
でも。
ちょっと。
変。
◇
さらに。
進む。
【測量進捗率:36%】
「…………」
待って。
増え方。
速くない?
◇
俺。
歩く。
数字。
見る。
歩く。
また。
見る。
函館。
近づく。
そして。
【測量進捗率:42%】
「おい」
俺。
止まる。
門倉。
「先生?」
「なんでもない」
ウインドウ。
見る。
四十二。
◇
おかしい。
西別まで。
行った。
動かない。
厚岸。
戻った。
動かない。
牡蠣。
当たった。
もちろん。
動かない。
雨の日。
仕事。
した。
動かない。
◇
なのに。
今。
急に。
増えてる。
「…………」
距離?
違う。
距離なら。
東へ。
向かってた時も。
増える。
はず。
じゃあ。
何?
◇
「お前」
俺。
ウインドウを見る。
「今まで寝てた?」
【42%】
「急に仕事するじゃん」
【…………】
消えた。
◇
また。
歩く。
西。
西。
西。
一日。
また。
一日。
函館。
近づく。
◇
【測量進捗率:46%】
「…………」
俺。
もう。
数字。
気になる。
何か。
ある。
絶対。
何か。
ある。
◇
そして。
ある日。
門倉が。
言った。
「先生」
「何?」
「もう間もなくでございます」
俺。
止まる。
◇
その言葉。
何回。
騙された?
もう。
間もなく。
もう少し。
近い。
昔の人の。
距離感。
信用。
できない。
「何が?」
俺。
慎重に。
聞く。
門倉。
答える。
「函館です」
「…………」
◇
函館?
俺。
前を見る。
「函館?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
「今日?」
「到着できるかと」
「…………」
俺。
固まる。
◇
その瞬間。
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:48%】
「…………」
四十八。
また。
増えた。
◇
俺。
数字。
見る。
函館。
近づくほど。
増えてる。
やっぱり。
何か。
ある。
でも。
今は。
それより。
函館。
◇
函館。
最初。
いた。
場所。
俺が。
伊能忠敬に。
なって。
何も。
分からないまま。
蝦夷地。
歩かされて。
測量。
始まって。
東へ。
東へ。
ずっと。
行って。
西別。
着いて。
戻って。
そして。
今。
函館。
◇
「…………」
帰ってきた?
俺。
まだ。
信じられない。
◇
歩く。
足。
速くなる。
「先生」
「分かってる!」
測量。
ある。
分かってる。
でも。
速く。
なる。
◇
進む。
そして。
見える。
知ってる。
景色。
俺。
止まる。
「…………」
函館。
本当に。
函館。
◇
俺。
口。
開く。
声。
出ない。
なんで?
西別。
着いた時。
叫んだ。
厚岸。
戻った時。
喜んだ。
なのに。
今。
ちょっと。
言葉。
出ない。
◇
俺。
振り返る。
東。
見えない。
当然。
西別。
なんて。
見えない。
でも。
あそこ。
行った。
俺。
歩いた。
◇
何日。
歩いた?
何回。
測った?
何回。
文句。
言った?
何回。
夜。
星。
見た?
分からない。
◇
でも。
戻った。
ここまで。
戻った。
俺。
鼻。
少し。
痛い。
「…………」
何これ。
泣く?
俺?
いや。
泣かない。
四十歳。
だから。
関係。
ない。
◇
門倉。
隣に。
来る。
「先生」
「何?」
「函館でございます」
「…………」
俺。
頷く。
「うん」
◇
一歩。
進む。
函館へ。
入る。
◇
帰ってきた。
本当に。
帰ってきた。
俺。
大きく。
息。
吸う。
「帰ってきたぁぁぁぁぁぁ!!」
声。
出た。
めちゃくちゃ。
出た。
周り。
見る。
でも。
知らない。
◇
西別まで。
行った。
函館まで。
戻った。
俺。
やった。
◇
「先生」
門倉。
呼ぶ。
「何!?」
俺。
笑ってる。
「戻ったぞ!」
「はい」
「函館!」
「左様です」
「終わった!」
門倉。
止まる。
◇
また。
その。
間。
◇
嫌な。
予感。
◇
「先生」
「…………何?」
「まだでございます」
「…………」
俺。
笑顔。
止まる。
◇
「何が?」
「第一次測量です」
「…………」
俺。
函館。
見る。
門倉。
見る。
もう一回。
函館。
見る。
「帰ってきたよ?」
「函館には」
「西別から!」
「はい」
「戻ったよ!?」
「左様です」
「じゃあ終わりじゃん!」
「江戸へ戻るまでがございます」
「…………」
◇
江戸。
◇
俺。
忘れてた。
函館。
ゴール。
じゃない。
ここ。
蝦夷地の。
入口。
◇
俺。
頭。
抱える。
「まだ江戸あるじゃん!」
門倉。
当然の。
顔。
「ございますな」
「ございますな、じゃないよ!」
◇
俺。
完全に。
終わった。
気分。
だった。
達成感。
全部。
出した。
叫んだ。
なのに。
まだ。
ある。
◇
その時。
俺。
思い出す。
「…………」
四十八。
◇
ウインドウ。
出す。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:48%】
「…………」
やっぱり。
◇
俺。
見る。
じっと。
見る。
【48%】
変わらない。
◇
「なんで?」
【48%】
「函館着いたよ?」
【48%】
「さっきまであんな勢いで増えてたじゃん」
【48%】
「なんで止まるの?」
【…………】
◇
俺。
考える。
二十五。
二十七。
三十一。
三十六。
四十二。
四十六。
四十八。
そして。
函館。
◇
「…………」
なんで。
急に。
上がった?
◇
俺。
ずっと。
進捗率。
距離だと。
思ってた。
でも。
違う。
たぶん。
絶対。
違う。
◇
じゃあ。
何?
行程?
仕事?
測量?
帰還?
分からない。
◇
でも。
もう一個。
気になる。
俺。
ウインドウ。
指差す。
「四十八って何?」
【48%】
「中途半端じゃない?」
【…………】
◇
五十。
なら。
分かる。
半分。
折り返し。
そういう。
意味。
ありそう。
でも。
四十八。
◇
「あと二%何?」
【48%】
「そこまで来たなら五十にしろよ!」
【…………】
消えた。
◇
逃げた。
また。
逃げた。
◇
俺。
頭。
抱える。
函館。
帰ってきた。
嬉しい。
ものすごく。
嬉しい。
なのに。
頭の。
片隅。
四十八。
◇
なんで。
急に。
増えた?
なんで。
函館で。
止まった?
そして。
なんで。
四十八?
◇
「…………」
気持ち悪い。
◇
でも。
函館。
戻った。
それは。
本当。
俺。
自分の。
足を見る。
こいつで。
歩いた。
伊能忠敬の。
五十五歳の。
足。
中身。
浩哉。
四十歳。
最初。
絶対。
無理。
思った。
でも。
できた。
◇
俺。
少し。
笑う。
「門倉」
「はい」
「俺さ」
「はい」
「西別まで行って、函館まで戻ったんだよな?」
「左様です」
「…………」
俺。
頷く。
「すげえじゃん」
門倉。
笑う。
「左様ですな」
◇
初めて。
否定。
されなかった。
俺。
ちょっと。
嬉しい。
◇
今日は。
それで。
いい。
四十八。
気になる。
めちゃくちゃ。
気になる。
でも。
今日くらい。
自分。
褒める。
◇
よく。
歩いた。
よく。
測った。
よく。
戻った。
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
中身。
浩哉。
四十歳。
第一次測量。
函館。
帰着。
俺は。
西別まで。
行った。
そして。
戻ってきた。
◇
すごい。
本当に。
すごい。
でも。
一つ。
問題。
ある。
俺。
最後に。
もう一度。
ウインドウを見る。
【測量進捗率:48%】
「…………」
やっぱり。
四十八って。
中途半端じゃない?
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
気づけば第50話。
浩哉は西別まで歩き、牡蠣に負け、雨にも休ませてもらえず、ようやく函館まで戻ってきました。
作者も書きながら、
「よく歩いたな、こいつ……」
と思っています(笑)。
そして、ずっと25%から動かなかった進捗率が突然の急上昇。
なのに――48%。
なぜ50%じゃないのか。
残り2%は何なのか。
浩哉にはまだ分かりません。
もちろん、作者は知っています(笑)。
伊能忠敬の第一次測量は、まだ終わっていません。
ここからも史実を追いかけながら、浩哉にはしっかり歩いてもらいます。
第50話まで一緒に歩いてくださった皆さま、本当にありがとうございます。
よろしければ評価・ブックマークで応援していただけると、とても励みになります!
それでは次回。
浩哉。
まだ48%だぞ。




