第46話「牡蠣!ただいま!」
朝。
歩く。
西。
測る。
西。
記録。
西。
また。
歩く。
「…………」
帰ってる。
ちゃんと。
帰ってる。
仕事。
普通に。
あるけど。
帰ってる。
◇
俺は。
前を見る。
今日も。
西。
もう。
いちいち。
門倉に。
確認しない。
分かる。
俺。
成長。
した。
方向で。
喜ばなくなった。
「先生」
門倉隼太。
「何?」
「本日も西へ参ります」
「知ってる」
言った。
ちょっと。
格好いい。
「厚岸へ」
「…………」
俺。
止まる。
◇
「今」
「はい?」
「何て言った?」
「厚岸へ参ります」
「…………」
厚岸。
俺の。
頭の中。
何か。
開く。
海。
港。
そして。
牡蠣。
「…………」
牡蠣。
◇
俺。
門倉を見る。
「今日、厚岸?」
「その予定です」
「今日?」
「はい」
「着く?」
「順調に進めば」
「…………」
よし。
俺。
歩き出す。
速い。
「先生」
「何?」
「まだ測量が」
「分かってる!」
◇
測る。
記録。
歩く。
でも。
今日。
違う。
目的地。
厚岸。
牡蠣。
俺の。
頭の中。
それ。
ばっかり。
「…………」
厚岸。
牡蠣。
厚岸。
牡蠣。
測量。
牡蠣。
記録。
牡蠣。
「先生」
宗平。
「何?」
「こちらを」
「牡蠣?」
「記録です」
「…………」
ごめん。
◇
俺。
記録。
見る。
確認。
する。
「大丈夫」
返す。
仕事。
ちゃんと。
する。
牡蠣。
食べるために。
いや。
違う。
測量のため。
俺。
伊能忠敬。
責任者。
「…………」
牡蠣。
駄目。
戻る。
◇
午前。
進む。
見覚え。
ある。
場所。
増える。
俺。
嬉しい。
ここ。
来た。
あそこ。
通った。
この辺。
覚えてる。
「…………」
本当に。
戻ってる。
そして。
戻れば。
戻るほど。
厚岸。
近づく。
◇
昼。
飯。
食う。
俺。
少し。
控える。
門倉。
見る。
「先生」
「何?」
「足りませぬか?」
「大丈夫」
「いつもより少ないようですが」
「大丈夫」
腹。
空ける。
牡蠣。
入る。
場所。
必要。
「先生?」
「なんでもない」
◇
午後。
俺。
歩く。
測る。
歩く。
測る。
途中。
疲れる。
足。
痛い。
でも。
今日。
強い。
俺。
目的。
ある。
「…………」
牡蠣。
一歩。
「牡蠣」
また。
一歩。
「牡蠣」
宗平。
俺を見る。
「先生?」
「何?」
「何か申されましたか?」
「何も」
◇
しばらく。
進む。
景色。
変わる。
俺。
覚えてる。
この感じ。
「門倉」
「はい」
「近い?」
「何がでしょう?」
「厚岸」
「もうしばらくかと」
「もうしばらく!」
前。
その言葉。
信用。
できなかった。
今。
違う。
厚岸。
実在。
する。
俺。
知ってる。
行ったから。
◇
歩く。
測る。
歩く。
記録。
そして。
「先生」
門倉。
言う。
「見えて参りました」
俺。
顔。
上げる。
「…………」
厚岸。
◇
俺。
止まる。
見える。
知ってる。
場所。
来る時。
ここ。
通った。
あの時。
まだ。
東。
これから。
西別。
だった。
今。
違う。
戻って。
来た。
「…………」
厚岸。
俺。
笑う。
「帰ってきた」
◇
一歩。
進む。
「厚岸」
また。
一歩。
「帰ってきた」
嬉しい。
西別。
着いた時と。
違う。
ここ。
知ってる。
一度。
来た。
場所。
そこに。
戻ってきた。
「…………」
ただいま。
言いそう。
になる。
◇
厚岸。
着く。
俺。
周りを見る。
「先生」
門倉。
「はい」
「到着いたしました」
「うん」
俺。
頷く。
そして。
聞く。
「牡蠣は?」
門倉。
止まる。
◇
「先生?」
「牡蠣」
「…………」
「あるよね?」
「何のことでしょう?」
「前、食べたじゃん!」
俺。
覚えてる。
あの。
牡蠣。
美味かった。
蝦夷地。
来て。
つらい。
歩く。
寒い。
そんな中。
食べた。
牡蠣。
俺。
忘れてない。
◇
「先生」
門倉。
少し。
呆れた。
顔。
「まずは仕事を」
「分かってる!」
正論。
また。
来た。
◇
荷。
確認。
記録。
整理。
必要な。
話。
する。
俺。
働く。
速い。
めちゃくちゃ。
速い。
「先生」
宗平。
「これを」
「はい」
確認。
「大丈夫」
次。
「こちらも」
「はい」
見る。
「よし」
次。
「先生」
「何?」
「少々お急ぎでは?」
「普通」
「左様ですか」
「普通」
牡蠣。
待ってる。
◇
仕事。
一段落。
俺。
立つ。
「終わった?」
門倉。
「本日の分は」
「よし!」
俺。
動く。
門倉。
「先生?」
「牡蠣!」
もう。
隠さない。
◇
そして。
俺。
牡蠣。
見る。
「…………」
いた。
いや。
牡蠣に。
いた。
って。
変。
でも。
いた。
俺の。
牡蠣。
違う。
誰のでも。
ない。
◇
食べる。
「…………」
うまい。
やっぱり。
うまい。
俺。
目。
閉じる。
「…………」
これ。
これだよ。
蝦夷地。
悪くない。
一瞬。
思う。
いや。
待て。
それは。
言い過ぎ。
でも。
牡蠣。
うまい。
◇
もう一つ。
食う。
「…………」
うまい。
来る時。
食べた。
牡蠣。
帰り。
また。
食べる。
同じ。
牡蠣。
でも。
何か。
違う。
◇
前。
ここに。
来た時。
俺。
まだ。
先。
見てた。
西別。
遠い。
これから。
もっと。
歩く。
嫌だ。
そんな。
感じ。
だった。
今日。
違う。
西別。
行った。
戻ってきた。
俺。
ちゃんと。
やった。
◇
牡蠣。
食べる。
「…………」
ご褒美。
そんな。
感じ。
する。
俺。
誰にも。
言わない。
恥ずかしい。
◇
門倉。
横。
来る。
「美味しゅうございますか?」
「うん」
「それは何よりです」
俺。
牡蠣を見る。
そして。
言う。
「門倉」
「はい」
「俺さ」
「はい」
「西別まで行ったんだよな」
門倉。
頷く。
「行かれました」
「で、戻ってきた」
「はい」
「…………」
俺。
笑う。
「結構すごくない?」
門倉。
少し。
笑う。
「先生が申されますか」
「いいじゃん」
◇
俺。
牡蠣。
食べる。
今日くらい。
いい。
自分。
褒めても。
俺。
頑張った。
歩いた。
測った。
待った。
夜。
働いた。
文句。
めちゃくちゃ。
言った。
でも。
逃げなかった。
◇
「…………」
逃げられなかった。
とも。
言う。
まあ。
いい。
◇
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:25%】
「…………」
俺。
見る。
牡蠣。
食べる。
【25%】
もう一個。
食べる。
【25%】
「今日はお前どうでもいい」
【…………】
消えた。
勝った。
◇
夜。
俺。
横になる。
腹。
満足。
足。
疲れた。
でも。
気分。
いい。
厚岸。
戻ってきた。
西別。
遠く。
なった。
江戸。
近く。
なった。
「…………」
いい日。
だった。
◇
目。
閉じる。
明日も。
西。
測量。
仕事。
ある。
夜。
晴れたら。
天測。
ある。
たぶん。
また。
文句。
言う。
でも。
今日は。
いい。
◇
俺。
最後に。
思う。
西別。
着いた時。
あんなに。
嬉しかった。
でも。
今日。
厚岸。
見えた時。
同じくらい。
嬉しかった。
帰ってくる。
って。
こういう。
感じ。
なんだな。
「…………」
牡蠣も。
あるし。
やっぱり。
それ。
大きい。
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
第一次測量。
復路。
厚岸。
帰着。
俺は。
今日。
学んだ。
人間。
頑張れば。
ご褒美が。
ある。
場合も。
ある。
俺の場合。
「…………」
牡蠣。
最高。




