第45話「帰りなのに普通に仕事じゃん!」
朝。
目が覚める。
「…………」
姉別。
昨日。
西別から。
戻ってきた。
今日も。
西。
俺は。
起きる。
気分。
いい。
「西」
言う。
それだけで。
ちょっと。
嬉しい。
◇
外。
出る。
門倉隼太。
いる。
「おはようございます」
「おはよう」
俺は。
聞く。
「今日も西?」
「西へ参ります」
「よし」
確認。
大事。
◇
支度。
する。
荷。
確認。
器具。
確認。
記録。
確認。
俺。
もう。
普通に。
動く。
「先生」
宗平。
「何?」
「こちらを」
「うん」
受け取る。
見る。
確認。
返す。
「大丈夫」
「ありがとうございます」
「…………」
自然。
完全に。
自然。
俺。
測量隊。
やってる。
◇
出発。
西。
歩く。
俺。
笑う。
やっぱり。
いい。
帰ってる。
一歩。
江戸。
もう一歩。
江戸。
「…………」
今日は。
どこまで。
帰れるかな。
◇
止まる。
測る。
記録。
歩く。
止まる。
測る。
記録。
歩く。
止まる。
測る。
記録。
「…………」
俺。
気づく。
◇
また。
止まる。
測る。
記録。
「…………」
門倉」
「はい」
「ちょっといい?」
「何でしょう?」
俺は。
周りを見る。
「俺たち」
「はい」
「帰ってるよね?」
「左様です」
「西だよね?」
「西です」
「江戸に近づいてるよね?」
「近づいております」
「…………」
じゃあ。
なんで。
俺。
来る時と。
同じくらい。
働いてるの?
◇
「門倉」
「はい」
「帰りってさ」
「はい」
「もうちょっとこう」
俺。
手。
動かす。
「サーッと帰る感じじゃないの?」
「…………」
門倉。
俺を見る。
「測量でございますので」
出た。
万能。
回答。
◇
「いや」
俺。
言う。
「分かってるよ?」
四十話。
聞いた。
四十三話。
確認した。
帰りも。
測量。
知ってる。
でも。
俺の中で。
どこか。
思ってた。
帰り。
だから。
ちょっと。
楽。
「…………」
全然。
楽じゃない。
◇
歩く。
測る。
記録。
確認。
また。
歩く。
「…………」
同じ。
方向。
違うだけ。
やってること。
ほぼ。
同じ。
「詐欺じゃん」
俺。
呟く。
門倉。
「何がでしょう?」
「なんでもない」
◇
でも。
来る時。
測った。
場所。
なのに。
なんで。
また。
測る?
俺。
聞く。
「門倉」
「はい」
「往路で測ったよね?」
「測りました」
「じゃあ帰りは、その記録使えばよくない?」
俺。
いいこと。
言った。
たぶん。
合理的。
二十一世紀。
発想。
門倉。
答える。
復路では。
往路だけでは。
足りないところ。
確かめるところ。
必要な。
測量。
記録。
そういう。
仕事。
ある。
「…………」
なるほど。
正論。
◇
俺。
嫌い。
最近。
正論。
多い。
◇
「つまり」
俺。
整理。
する。
「来る時測った」
「はい」
「帰りも測る」
「はい」
「必要なら確認する」
「左様です」
「記録する」
「はい」
「夜晴れたら?」
「天測いたします」
「…………」
俺。
空を見る。
晴れてる。
めちゃくちゃ。
晴れてる。
「曇れ」
「先生?」
「なんでもない」
◇
昼。
休む。
俺。
座る。
足。
伸ばす。
昨日。
西。
最高。
思った。
今も。
西。
好き。
でも。
気づいた。
西。
俺を。
休ませては。
くれない。
◇
飯。
食べる。
俺。
聞く。
「門倉」
「はい」
「帰りだから減る仕事ってある?」
門倉。
考える。
俺。
期待。
する。
一個。
くらい。
ある。
何か。
ある。
はず。
「…………」
門倉。
考えてる。
長い。
嫌な。
予感。
「特には」
「ないの!?」
◇
俺の声。
響く。
鳥。
飛ぶ。
「先生」
「だって!」
俺。
言う。
「帰りだぞ!」
「はい」
「折り返したんだぞ!」
「はい」
「普通、後半戦ってちょっと楽になるだろ!」
「何の普通でしょう?」
「…………」
確かに。
◇
午後。
歩く。
俺。
考える。
マラソン。
折り返し。
楽に。
ならない。
登山。
山頂。
帰り。
下り。
ちょっと。
楽。
でも。
危ない。
旅行。
帰り。
疲れてる。
「…………」
帰りって。
別に。
楽じゃない?
俺。
四十年。
生きて。
今さら。
気づく。
◇
測る。
また。
測る。
俺。
動く。
文句。
言う。
でも。
手。
止まらない。
「先生」
宗平。
呼ぶ。
「何?」
確認。
する。
「ここ」
「はい」
「こっちと合わせて」
「分かりました」
普通に。
指示。
出す。
宗平。
動く。
俺も。
次。
やる。
◇
しばらく。
して。
俺。
気づく。
「…………」
文句。
言ってる。
でも。
仕事。
してる。
前。
だったら。
どうだった?
分からない。
疲れた。
無理。
教えて。
それ。
ばっかり。
今。
違う。
◇
帰り道。
見覚え。
ある。
だから。
余裕。
ある。
何を。
するか。
分かる。
だから。
動ける。
測量。
分かってきた。
だから。
自分で。
考える。
「…………」
俺。
本当に。
慣れたな。
◇
門倉。
横に。
来る。
「先生」
「何?」
「どうされました?」
「いや」
俺。
言う。
「帰りも大変だなって」
「左様ですな」
「でも」
俺。
前を見る。
西。
「来る時よりはいい」
「なぜでしょう?」
俺。
笑う。
「帰ってるから」
◇
門倉。
頷く。
それだけ。
何も。
言わない。
俺たち。
また。
歩く。
◇
夕方。
止まる。
今日の。
仕事。
確認。
記録。
見る。
俺。
思う。
今日。
かなり。
やった。
帰りなのに。
かなり。
やった。
「…………」
帰りなのに。
この言葉。
今日。
何回。
思った?
◇
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:25%】
「…………」
まだ。
二十五。
俺。
見る。
でも。
前ほど。
腹立たない。
意味。
分からない。
数字。
だから。
「まあいい」
俺。
言う。
「今日、結構進んだし」
【25%】
「数字は知らん」
【25%】
「俺は分かってる」
【…………】
消える。
◇
夜。
空。
見る。
星。
見える。
「…………」
やっぱり。
門倉。
来る。
「先生」
「言わなくていい」
「しかし」
「分かってる」
俺。
立つ。
「天測だろ?」
門倉。
頷く。
「はい」
「…………」
俺。
ため息。
つく。
でも。
器具。
持つ。
◇
星。
見る。
測る。
記録。
俺。
仕事。
する。
帰り。
だから。
楽。
そんな。
こと。
なかった。
昼。
歩く。
測る。
夜。
星。
測る。
何も。
変わらない。
でも。
俺。
少し。
笑う。
「先生?」
「何?」
「いえ」
「変?」
「少々」
「…………」
俺も。
そう思う。
◇
天測。
終わる。
俺。
空を見る。
疲れた。
でも。
嫌じゃない。
いや。
仕事。
多いのは。
嫌。
そこは。
嫌。
でも。
前みたいに。
全部。
投げ出したい。
感じ。
しない。
◇
俺。
気づく。
帰り道。
楽に。
なったんじゃない。
俺が。
変わった。
「…………」
それ。
認めるの。
ちょっと。
恥ずかしい。
だから。
誰にも。
言わない。
◇
宿。
戻る。
横になる。
今日も。
歩いた。
測った。
夜。
働いた。
「…………」
帰りなのに。
俺。
呟く。
そして。
笑う。
「普通に仕事じゃん」
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
第一次測量。
復路。
俺は。
今日。
重大な。
事実を。
知った。
折り返しても。
仕事は。
半分に。
ならない。
むしろ。
普通に。
ある。
「…………」
帰り道って。
ボーナスステージじゃ。
ないんだな。
当たり前の。
ことを。
俺は。
蝦夷地で。
学んだ。




