第39話 やっと船来たぁぁ!
「遅えよ!!」
俺の声が。
海に。
響いた。
船。
本物。
鳥じゃない。
波でもない。
船。
三日。
待った。
一日目。
来ない。
二日目。
来ない。
三日目。
昼間。
来ない。
夜。
天測。
そして。
ようやく。
来た。
「…………」
俺は。
海を見る。
近づいてくる。
消えない。
ちゃんと。
船。
「門倉」
「はい」
「船だよね?」
「船ですな」
「本当に?」
「はい」
「鳥じゃない?」
「船です」
「波じゃない?」
「船です」
「よし!」
確認。
大事。
俺。
もう。
騙されない。
◇
船。
近づく。
俺は。
待つ。
昨日まで。
待つの。
あれだけ。
嫌だった。
今。
違う。
この待ちは。
いい。
だって。
見える。
近づいてる。
進んでる。
「…………」
そうだよ。
これ。
俺が。
欲しかったの。
進んでる感じ。
◇
迎え。
来た。
話。
する。
確認。
する。
俺たちも。
支度。
始める。
「先生」
「何?」
「随分と嬉しそうですな」
「当たり前だろ」
三日。
待った。
「やっと西別行けるんだぞ」
門倉が。
少し。
笑う。
「左様ですな」
「…………」
俺は。
止まる。
今。
普通に。
言った。
やっと。
西別。
行ける。
少し前の俺なら。
どうだった?
西別?
遠い。
行きたくない。
歩きたくない。
帰りたい。
それが。
今。
「…………」
やっと。
行ける。
俺。
変わったな。
◇
でも。
感動。
してる場合じゃない。
荷。
確認。
器具。
確認。
記録。
確認。
俺も。
動く。
言われなくても。
動く。
「先生」
宗平。
「これを」
「分かった」
受け取る。
確認。
「大丈夫」
返す。
次。
「門倉」
「はい」
「こっちは?」
「済んでおります」
「よし」
俺。
働く。
普通に。
働く。
誰も。
驚かない。
「…………」
それが。
ちょっと。
嬉しい。
前は。
俺が。
何かするたび。
門倉。
変な顔。
してた。
今。
しない。
俺が。
やるの。
普通に。
なってる。
◇
準備。
終わる。
俺は。
姉別を見る。
三日。
いた。
ほとんど。
海。
見てた。
「…………」
長かった。
本当に。
長かった。
でも。
これで。
終わり。
「さようなら」
小さく。
言う。
もう。
しばらく。
待つの。
嫌。
◇
船。
乗る。
俺は。
座る。
「…………」
思い出す。
蝦夷地へ。
来た時。
船。
揺れた。
酔った。
気持ち悪かった。
「…………」
大丈夫。
今回は。
目的。
ある。
西別。
近い。
折り返し。
だから。
船酔いくらい。
「…………」
うっ。
早い。
まだ。
ほとんど。
動いてない。
◇
船。
進む。
揺れる。
俺。
海を見る。
気持ち悪い。
でも。
見る。
前。
見る。
「先生」
門倉。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫」
「顔色が」
「大丈夫」
大丈夫じゃない。
でも。
降りない。
いや。
海の上だから。
降りられない。
「…………」
歩きたい。
また。
思った。
俺。
もう。
船より。
徒歩の方が。
好きに。
なってない?
怖い。
◇
でも。
船。
進む。
ちゃんと。
進む。
昨日まで。
何時間。
海を見ても。
景色。
変わらなかった。
今日は。
違う。
海岸。
動く。
景色。
変わる。
西別。
近づく。
「…………」
気持ち悪い。
でも。
嬉しい。
変な。
感じ。
◇
俺は。
ウインドウ。
見る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
まだ?
いや。
いい。
今日は。
許す。
動いてる。
俺たち。
進んでる。
「もうすぐだろ」
【24%】
「西別」
【24%】
「着いたらさすがに増えるよな?」
【…………】
また。
無視。
「まあいい」
今日は。
機嫌。
いい。
◇
船の上。
俺は。
海岸を。
見る。
ここも。
地図に。
なる。
今まで。
俺たちが。
歩いて。
測った。
場所。
線。
つないだ。
その先。
今。
向かってる。
「…………」
日本。
でかいな。
今さら。
思う。
俺。
まだ。
蝦夷地。
しかも。
第一次。
それなのに。
こんなに。
時間。
かかってる。
「…………」
これ」
俺は。
呟く。
「本当に全国やるの?」
門倉。
聞いた。
「何がでしょう?」
「なんでもない」
聞かなかったことに。
する。
今。
考えたら。
駄目。
まず。
西別。
◇
船。
進む。
俺は。
少し。
慣れてきた。
気持ち悪さ。
まだ。
ある。
でも。
前を見る。
「門倉」
「はい」
「西別、まだ?」
「先生」
「何?」
「先ほども聞かれました」
「船なら早いじゃん」
「もうしばらくです」
「もうしばらく?」
「はい」
「…………」
その言葉。
信用。
していい?
三日。
待ったせいで。
時間に。
疑い深く。
なってる。
◇
しばらく。
進む。
そして。
人の。
動き。
変わる。
話。
聞こえる。
俺。
顔。
上げる。
「門倉」
「はい」
「もしかして」
「はい」
門倉が。
前を見る。
「西別が近うございます」
「…………!」
来た。
俺は。
立とうとする。
船。
揺れる。
「うおっ!」
座る。
危ない。
「先生」
「分かってる!」
今。
落ちたら。
笑えない。
三日。
待って。
西別目前。
海に。
落ちる。
絶対。
嫌。
◇
俺は。
座ったまま。
前を見る。
西別。
東進の。
到達点。
あそこまで。
行けば。
折り返す。
帰れる。
厚岸。
牡蠣。
その先。
蝦夷地を。
出る。
江戸へ。
戻る。
「…………」
長かった。
本当に。
長かった。
まだ。
着いてない。
でも。
見えてきた。
◇
俺は。
ふと。
思う。
最初。
蝦夷地。
来た時。
嫌だった。
寒い。
遠い。
歩く。
測る。
夜。
星。
また。
歩く。
ずっと。
文句。
言ってた。
今も。
言ってる。
そこは。
変わってない。
でも。
俺。
ここまで。
来た。
「…………」
俺たちが。
測った。
線。
ずっと。
後ろに。
続いてる。
そう。
思ったら。
胸の奥。
少し。
熱くなった。
◇
「先生」
門倉。
「何?」
「間もなくです」
「うん」
俺は。
前を見る。
もう。
ふざけない。
今だけ。
ちゃんと。
見たい。
西別。
俺たちが。
目指してきた。
場所。
三日。
船を。
待った。
昼。
測った。
夜。
星。
測った。
歩いた。
歩いた。
ずっと。
歩いた。
そして。
ようやく。
「…………」
俺は。
小さく。
言った。
「着くんだな」
門倉が。
答える。
「はい」
「…………」
俺は。
笑った。
その時。
ウインドウ。
現れる。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
俺は。
見る。
そして。
言う。
「今はお前じゃない」
【…………】
消えた。
「よし」
勝った。
たぶん。
◇
船。
西別へ。
近づいていく。
俺は。
前を見る。
あと。
少し。
本当に。
あと。
少し。
次。
足が。
地面に。
着いたら。
言おう。
絶対。
言おう。
三日。
待った。
ここまで。
歩いた。
夜まで。
働いた。
全部。
まとめて。
叫んでやる。
俺は。
大きく。
息を。
吸った。
西別。
目前。
そして。
俺は。
まだ。
知らなかった。
到着した瞬間。
喜びすぎて。
その次に。
待っている。
現実を。
完全に。
忘れていることを。




