第38話「進んでないのに仕事あるの!?」
朝。
「まだかよ!」
俺の声が。
姉別に。
響いた。
海。
静か。
船。
いない。
今日で。
三日目。
一日目。
待った。
来ない。
二日目。
待った。
来ない。
そして。
三日目。
朝。
「…………」
いない。
俺は。
海を見る。
「門倉」
「はい」
「確認なんだけど」
「はい」
「船って来るんだよね?」
「その予定です」
「予定!」
また。
その言葉。
俺。
嫌いに。
なってきた。
◇
朝飯。
食べる。
俺。
海を見る。
「先生」
宗平。
「何?」
「飯を見て食べた方が」
「見てる」
海。
見てる。
「飯をです」
「…………」
俺は。
飯を見る。
食う。
また。
海を見る。
「先生」
「何?」
「変わりませぬ」
「分かってる!」
◇
午前。
待つ。
俺は。
座る。
立つ。
海。
見る。
座る。
立つ。
海。
見る。
「…………」
暇。
本当に。
暇。
昨日。
仕事。
探した。
なかった。
今日。
もう一回。
探す。
「宗平」
「はい」
「何かない?」
「何がでしょう?」
「仕事」
宗平。
止まった。
「先生が?」
「俺が」
「仕事を?」
「そう」
何。
その反応。
「ございますが」
「あるの!?」
嬉しい。
自分で。
怖い。
◇
記録。
整理。
器具。
確認。
俺は。
やる。
終わる。
「次」
「先生」
「何?」
「もうございませぬ」
「…………」
早い。
もっと。
ゆっくり。
やれば。
よかった。
◇
俺は。
また。
海を見る。
「…………」
船。
いない。
「歩こうよ」
俺。
言う。
門倉。
答える。
「迎船を待ちます」
「昨日も聞いた!」
「では、ご存じかと」
「そういうことじゃない!」
門倉。
強い。
最近。
俺への。
扱い。
雑に。
なってない?
◇
昼。
飯。
食う。
俺は。
もう。
期待しない。
船。
来ない。
どうせ。
来ない。
そう。
思えば。
楽。
「…………」
遠く。
何か。
見える。
俺。
見ない。
昨日。
鳥。
だった。
波。
だった。
もう。
騙されない。
「先生」
門倉。
「何?」
「何か見えますな」
「鳥だろ」
「船かもしれませぬ」
「…………」
俺。
見る。
立つ。
目。
凝らす。
「…………」
消えた。
「…………」
門倉」
「はい」
「期待させるのやめて」
「申し訳ございませぬ」
本当に。
申し訳なさそう。
だから。
怒れない。
◇
午後。
空。
見る。
晴れてる。
いい天気。
風。
ある。
海。
綺麗。
「…………」
最高の。
旅行日和。
旅行。
してないけど。
俺は。
寝転がる。
もう。
待つの。
疲れた。
目。
閉じる。
何も。
しない。
今日は。
これで。
終わり。
船。
来なければ。
完全に。
休み。
「…………」
まあ。
いいか。
三日目。
ようやく。
諦め。
ついた。
たまには。
休もう。
◇
「先生」
門倉。
「何?」
「今夜は天測ができそうです」
「…………」
俺は。
目を。
開けた。
空。
見る。
青い。
雲。
少ない。
「…………」
待って。
◇
夜。
星。
出た。
綺麗。
めちゃくちゃ。
綺麗。
俺。
外。
立ってる。
測量器具。
ある。
門倉たち。
いる。
「…………」
俺は。
空を見る。
次。
海を見る。
真っ暗。
船。
当然。
来ない。
また。
空。
見る。
星。
いっぱい。
「なあ」
「はい」
「今日さ」
「はい」
「一歩も西別に近づいてないよね?」
「左様ですな」
「船も来てないよね?」
「はい」
「昼間ずっと待ってたよね?」
「はい」
「なのに」
俺は。
測量器具を。
指差す。
「なんで仕事だけあるの?」
門倉。
普通に。
答える。
「星が見えますので」
「それ前にも聞いた!」
◇
天測。
始まる。
星。
見る。
測る。
記録。
確認。
俺。
働く。
身体。
元気。
二日。
歩いてない。
今日も。
歩いてない。
だから。
動ける。
「…………」
これ。
最悪。
元気だから。
普通に。
働ける。
「先生」
「何?」
「こちらを」
「はい」
確認。
する。
「大丈夫」
返す。
次。
見る。
俺。
完全に。
仕事。
できる。
「…………」
休んだ分。
元気。
それを。
夜。
使う。
「なんか」
俺は。
呟く。
「損した気分」
◇
しばらく。
天測。
続く。
俺は。
星を見る。
前より。
分かる。
星。
位置。
時間。
測る。
何のために。
やってるのか。
理解。
してる。
だから。
余計。
思う。
「…………」
これ。
必要なんだよな。
悔しい。
文句。
言えない。
日本地図。
作るなら。
必要。
「先生」
門倉。
「何?」
「随分と手際が良くなられましたな」
「…………」
褒められた。
ちょっと。
嬉しい。
「まあね」
俺。
答える。
その瞬間。
気づく。
俺。
褒められて。
喜んだ。
天測で。
「…………」
まずい。
俺。
本当に。
伊能忠敬に。
なってきてる。
◇
天測。
終わる。
俺は。
空を見る。
「終わった……」
今日は。
歩いてない。
なのに。
仕事。
した。
進んでない。
でも。
測った。
変な。
一日。
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
知ってた。
【24%】
「今日、天測したよ?」
【24%】
「仕事したよ?」
【24%】
「夜まで働いたよ?」
【24%】
「なのに進んでない?」
【24%】
「…………」
俺。
分かってる。
分かってるけど。
言いたい。
「残業だけ発生して進捗ゼロって何!?」
【…………】
ウインドウ。
消えた。
逃げた。
絶対。
逃げた。
◇
宿。
戻る。
横になる。
三日。
姉別。
俺。
何してる?
待つ。
海見る。
待つ。
海見る。
そして。
夜。
星見る。
「…………」
見るもの」
俺は。
呟く。
「海から星に変わっただけじゃん」
誰も。
答えない。
◇
目を。
閉じる。
明日。
どうなる?
もう。
「絶対来る」
とは。
思わない。
期待すると。
疲れる。
だから。
期待しない。
船。
来ても。
来なくても。
いい。
「…………」
いや。
来い。
やっぱ。
来い。
早く。
来い。
西別。
行きたい。
俺は。
布団の中で。
海の方を見る。
もちろん。
見えない。
「…………」
明日こそ。
小さく。
言う。
でも。
声に。
自信。
ない。
◇
翌日。
俺は。
起きる。
もう。
急がない。
ゆっくり。
外へ。
出る。
海。
見る。
「…………」
何か。
いる。
俺は。
目を。
細める。
遠く。
海の上。
黒い。
影。
「…………」
鳥?」
昨日までなら。
叫んだ。
今日は。
叫ばない。
じっと。
見る。
影。
消えない。
少しずつ。
近づく。
「…………」
俺は。
立つ。
門倉も。
見る。
宗平も。
見る。
俺。
まだ。
言わない。
期待。
しない。
期待。
しない。
「…………」
船?
門倉が。
静かに。
言った。
「先生」
「何?」
「迎えが参ったようです」
「…………」
俺は。
海を見る。
船。
本物。
船。
三日。
待った。
やっと。
来た。
「…………」
俺は。
大きく。
息を。
吸った。
そして。
叫ぶ。
「遅えよ!!」




