第37話「歩かせろよ!」
朝。
目が覚めた。
「…………」
船。
今日こそ。
来る。
昨日。
一日。
待った。
来なかった。
でも。
今日は。
来る。
普通に。
考えて。
来る。
「…………」
来るよな?
起きる。
◇
外。
出る。
海。
見る。
「…………」
いない。
まあ。
朝。
早い。
当然。
俺は。
腕を組む。
今日は。
昨日とは。
違う。
待ち方。
分かった。
焦らない。
船は。
来る。
その時まで。
ゆっくり。
すればいい。
「先生」
門倉隼太。
来る。
「おはようございます」
「おはよう」
「本日も迎船を待ちます」
「分かってる」
俺は。
海を見る。
余裕。
ある。
昨日。
学んだから。
◇
待つ。
「…………」
◇
待つ。
「…………」
◇
待つ。
「…………」
俺は。
立った。
まだ。
そんなに。
経ってない。
たぶん。
でも。
海。
見る。
いない。
座る。
◇
「門倉」
「はい」
「船ってさ」
「はい」
「遠くから来るんだよね?」
「もちろんです」
「じゃあ遅れることもあるよね?」
「ございましょう」
「だよね」
安心。
した。
何に。
安心したのか。
分からない。
◇
また。
待つ。
俺は。
地面に。
線を。
引く。
一本。
二本。
三本。
「…………」
何してんだ。
俺。
消す。
◇
宗平たち。
仕事。
してる。
記録。
整理。
器具。
確認。
俺も。
手伝う。
「先生」
「何?」
「そちらは済んでおります」
「じゃあこれは?」
「それも」
「これは?」
「昨日済ませました」
「…………」
仕事。
ない。
普段なら。
最高。
今。
最悪。
◇
俺は。
海を見る。
「…………」
船。
ない。
歩きたい。
測りたい。
進みたい。
自分でも。
信じられない。
少し前まで。
歩きたくない。
休みたい。
帰りたい。
そればっかり。
だった。
今。
「…………」
暇。
嫌い。
◇
昼。
飯。
食べる。
俺は。
海を。
見ながら。
食う。
「先生」
門倉。
「何?」
「海を見ても船は早く参りませぬ」
「分かってる」
見る。
「…………」
見ても。
来ない。
分かってる。
でも。
見る。
◇
午後。
風。
吹く。
俺は。
立つ。
遠く。
何か。
見えた。
「!」
目。
凝らす。
黒い。
点。
「船!」
俺。
叫ぶ。
全員。
見る。
「来た!」
俺は。
立ち上がる。
「やっと!」
黒い点。
動く。
「…………」
待つ。
近づく。
「…………」
鳥。
「…………」
俺は。
座った。
門倉。
何も。
言わない。
それが。
一番。
恥ずかしい。
◇
しばらく。
して。
また。
何か。
見える。
「…………」
今度は。
言わない。
俺。
学んだ。
じっと。
見る。
近づく。
波。
「…………」
海。
嫌いに。
なりそう。
◇
夕方。
近い。
俺。
もう。
何回。
海を。
見ただろう。
百回?
もっと?
分からない。
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
お前まで。
来るな。
【24%】
「知ってる」
【24%】
「今日も進んでない」
【24%】
「俺が一番知ってる!」
【…………】
消える。
腹立つ。
◇
俺は。
門倉に。
聞く。
「なあ」
「はい」
「歩いて行けないの?」
門倉が。
俺を見る。
「西別へですか?」
「うん」
「迎えを待つことになっております」
「それは知ってる」
でも。
待つ。
二日。
俺。
限界。
「歩こうよ」
「先生」
「測りながら」
「…………」
「俺たち測量隊だろ?」
言った。
自分で。
驚いた。
門倉も。
少し。
驚いた。
気がする。
「先生」
「何?」
「随分と変わられましたな」
「…………」
俺。
黙る。
「何が?」
「以前ならば、歩かずに済むと喜ばれたでしょう」
「…………」
その通り。
昨日。
喜んだ。
俺。
一日で。
変わった。
◇
「別に」
俺は。
海を見る。
「待つのが嫌なだけ」
「左様ですか」
「そう」
でも。
本当は。
少し。
違う。
進みたい。
俺。
西別に。
行きたい。
地図。
続き。
作りたい。
「…………」
認めるの。
なんか。
悔しい。
◇
夕方。
太陽。
沈み始める。
今日も。
船。
来ない。
「…………」
嘘だろ。
昨日。
来ない。
今日。
来ない。
「門倉」
「はい」
「明日は?」
「待ちます」
即答。
「…………」
また?
「はい」
俺は。
空を見る。
「三日?」
「迎えが参るまで」
「…………」
俺は。
頭を。
抱えた。
「いつ来るんだよ!」
海。
返事。
しない。
◇
夜。
横になる。
身体。
疲れてない。
足。
痛くない。
昨日より。
さらに。
元気。
なのに。
精神。
疲れてる。
「…………」
歩きたい。
また。
言ってる。
俺。
本当に。
どうした?
伊能忠敬。
五十五歳。
二日。
歩かなかった結果。
歩きたくて。
仕方なくなった。
「…………」
怖い。
人間。
慣れって。
怖い。
◇
目。
閉じる。
明日。
船。
来る。
さすがに。
来る。
一日目。
来ない。
二日目。
来ない。
三日目。
「…………」
来るよね?
俺は。
もう。
自信。
なくなっていた。
そして。
翌日。
朝。
俺は。
誰より早く。
海を。
見た。
「…………」
船。
いない。
「…………」
俺は。
深く。
息を。
吸った。
「まだかよ!」
姉別に。
俺の声が。
響いた。




