第36話 船来ないじゃん!
朝。
目が覚めた。
「…………」
今日。
姉別。
俺は。
すぐ。
思い出す。
姉別。
その次。
西別。
「よし」
起きる。
最近。
本当に。
朝。
強くなった。
人間。
目的があると。
違う。
西別。
折り返し。
厚岸。
牡蠣。
帰る。
完璧。
◇
「先生」
門倉隼太。
来る。
「起きてる」
「おはようございます」
「おはよう」
俺は。
支度する。
「門倉」
「はい」
「今日、姉別だよね?」
「はい」
「その次」
「西別へ向かうことになります」
「よし」
やっぱり。
俺の。
理解。
合ってる。
「もうすぐじゃん」
「先生」
「何?」
「測量はございます」
「分かってるって」
最近。
毎回。
言われる。
俺。
そんなに。
浮かれてる?
浮かれてる。
◇
出発。
測る。
歩く。
記録。
進む。
今日も。
海岸。
曲がる。
今日も。
地面。
平らじゃない。
今日も。
足。
痛い。
でも。
いい。
全部。
許す。
姉別。
その先。
西別。
「…………」
もうすぐ。
折り返し。
俺。
頑張った。
本当に。
頑張った。
◇
途中。
止まる。
測る。
確認。
また。
進む。
俺は。
最近。
作業の。
流れ。
かなり。
分かる。
言われる前に。
動けることも。
増えた。
「先生」
宗平が。
呼ぶ。
「これ?」
「はい」
記録。
受け取る。
見る。
確認。
返す。
「大丈夫」
「ありがとうございます」
「…………」
俺。
今。
普通に。
先生。
やってない?
ちょっと。
嬉しい。
◇
昼。
飯。
食べる。
俺は。
東を見る。
「門倉」
「はい」
「姉別まで?」
聞く。
答え。
返る。
「…………」
近い。
本当に。
近い。
俺は。
飯を。
食べる。
速くなる。
「先生」
「何?」
「急いで食べずとも」
「急いでない」
急いでる。
◇
午後。
さらに。
進む。
そして。
ようやく。
姉別。
着いた。
「…………」
俺は。
立つ。
姉別。
来た。
次。
西別。
「門倉」
「はい」
「次、西別?」
「はい」
「よっしゃ」
思わず。
出た。
門倉が。
俺を見る。
「何でしょう?」
「何でもない」
俺は。
笑う。
来た。
ここまで。
来た。
あとは。
西別。
◇
必要な。
仕事。
する。
測る。
記録。
確認。
この先。
どう。
進むか。
話。
聞く。
そして。
俺は。
待つ。
「…………」
あれ?
しばらく。
待つ。
「…………」
出ないの?
俺は。
門倉を見る。
「今日、西別行かないの?」
「本日は参りませぬ」
「…………」
まあ。
そうか。
もう。
夕方。
今日。
姉別。
明日。
西別。
問題。
ない。
「じゃあ明日?」
門倉が。
答える。
「迎えを待ちます」
「…………」
迎え?
◇
俺は。
聞く。
「何の?」
「根室よりの迎船です」
「船?」
「はい」
俺。
少し。
考える。
そして。
理解。
する。
「船で行くの?」
「迎えが参れば」
「…………」
船。
俺は。
海を見る。
船。
歩かない。
「…………」
最高じゃん。
「先生?」
「いや」
これは。
いい。
西別。
近い。
しかも。
船。
俺。
歩かなくていい。
「明日、休みみたいなもんじゃん」
「何がでしょう?」
「何でもない」
◇
宿。
俺は。
座る。
足。
伸ばす。
今日は。
歩いた。
測った。
疲れた。
でも。
明日。
船。
「…………」
いいな。
船。
前。
蝦夷地へ。
来る時。
船酔い。
した。
思い出す。
「…………」
いや。
待て。
船。
俺。
得意じゃない。
でも。
歩くより。
いい。
たぶん。
いや。
どうだ?
船酔い。
する。
歩く。
足。
痛い。
「…………」
どっちも嫌だな。
でも。
西別。
着くなら。
いい。
◇
夜。
空。
見る。
雲。
ある。
「…………」
今日は。
天測。
無理かな。
以前なら。
残念。
今。
違う。
「よし」
小さく。
言う。
門倉。
聞いた。
「何がでしょう?」
「何でもない」
晴れ。
仕事。
増える。
俺。
学んだ。
曇り。
休める。
天気の。
見方。
完全に。
変わった。
◇
俺は。
ウインドウを見る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
まだ。
二十四。
でも。
今日は。
気にならない。
「明日」
俺は。
言う。
【24%】
「西別だろ?」
【24%】
「そしたら増えるだろ?」
【24%】
「さすがに増えるよな?」
【…………】
返事。
ない。
でも。
俺。
自信。
ある。
西別。
東進。
到達点。
そこまで。
行けば。
絶対。
何か。
変わる。
「明日だな」
◇
翌朝。
俺は。
早く。
起きた。
船。
来る。
西別。
行く。
折り返し。
いよいよ。
俺は。
外へ。
出る。
海を見る。
「…………」
船。
どこ?
まだ。
朝。
当然。
すぐには。
来ない。
俺は。
待つ。
◇
少し。
経つ。
「…………」
まだ?
海。
見る。
何も。
ない。
「門倉」
「はい」
「何時くらい?」
「何時?」
「いや」
時計。
ない。
そうだった。
「いつ来る?」
「待つほかありませぬ」
「…………」
まあ。
そうだよね。
待とう。
◇
待つ。
俺は。
座る。
「…………」
楽。
歩かなくていい。
足。
痛くない。
最高。
◇
さらに。
待つ。
「…………」
暇。
◇
また。
待つ。
海。
見る。
「…………」
来ない。
◇
昼。
飯。
食べる。
「門倉」
「はい」
「船は?」
「まだですな」
「そう」
まあ。
午後。
ある。
◇
午後。
待つ。
海。
見る。
何も。
ない。
「…………」
俺は。
立つ。
少し。
歩く。
また。
海。
見る。
船。
ない。
座る。
しばらく。
する。
また。
立つ。
海。
見る。
「…………」
来ない。
◇
「門倉」
「はい」
「これ」
俺は。
聞く。
「今日来るんだよね?」
「その予定ですが」
予定。
嫌な。
言葉。
出た。
「来なかったら?」
「待ちます」
「…………」
明日?
「左様です」
「…………」
俺は。
海を見る。
何も。
ない。
◇
夕方。
空。
赤い。
海。
綺麗。
船。
ない。
「…………」
俺は。
まだ。
立ってる。
待つ。
見る。
来ない。
そして。
日。
沈む。
「…………」
門倉。
来る。
「先生」
「何?」
「本日は参りませぬでしたな」
「…………」
知ってる。
ずっと。
見てた。
◇
俺は。
宿へ。
戻る。
歩いてない。
測量も。
ほとんど。
してない。
足。
楽。
身体。
楽。
なのに。
「…………」
なんか。
疲れた。
何も。
してないのに。
疲れた。
俺は。
横になる。
「明日は?」
門倉が。
答える。
「迎船を待ちます」
「…………」
また?
「はい」
俺は。
天井を見る。
昨日まで。
思ってた。
歩くの。
つらい。
測るの。
つらい。
夜。
働くの。
つらい。
でも。
今日。
初めて。
知った。
何も。
できない。
これ。
もっと。
腹立つ。
「…………」
歩かせろよ。
自分で。
言って。
俺は。
止まった。
「…………」
俺。
何。
言った?
歩かせろ?
俺が?
「…………」
伊能忠敬。
五十五歳。
ついに。
歩けないことに。
文句を。
言い始めた。
俺。
完全に。
おかしくなってる。
◇
ウインドウ。
現れる。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
今日。
何も。
進んでない。
当然。
数字も。
進まない。
分かる。
理屈。
分かる。
でも。
腹立つ。
「船!」
俺は。
叫ぶ。
「明日は来いよ!」
返事。
ない。
当然。
海。
静か。
明日。
来る。
俺は。
そう。
信じた。
だって。
二日も。
待たないだろ。
さすがに。
「…………」
来るよな?
俺は。
まだ。
知らなかった。
明日も。
海を。
見ることになる。




