第35話「もうすぐ西別じゃん!」
朝。
目が覚めた。
「…………」
牡蠣。
ない。
厚岸。
もう。
後ろ。
少し。
寂しい。
でも。
今日の俺には。
別の。
目的がある。
西別。
近づいてる。
昨日。
門倉に。
聞いた。
ノコベリ別。
姉別。
その先。
西別。
「…………」
もうすぐじゃん。
俺は。
起きた。
◇
「先生」
門倉隼太。
来る。
「起きてる」
「最近はお早いですな」
「成長した」
「左様ですか」
「もっと褒めてもいいよ」
「支度をお願いいたします」
「はい」
流された。
◇
外。
今日も。
東。
でも。
もう。
嫌じゃない。
いや。
ちょっと。
嫌。
でも。
前ほどじゃない。
「門倉」
「はい」
「今日は?」
「ノコベリ別を経て、さらに先へ」
「よし」
俺は。
頷く。
最近。
地名を。
聞いても。
絶望しなくなった。
むしろ。
一個。
進むたび。
西別。
近づく。
そう。
思える。
「行こう」
俺たちは。
歩き出す。
◇
測る。
歩く。
記録。
止まる。
確認。
また。
歩く。
海岸線。
相変わらず。
真っすぐじゃない。
「…………」
でも。
今日は。
言わない。
俺。
大人。
だから。
曲がる。
測る。
また。
曲がる。
測る。
「…………」
海岸線。
もうちょっと。
協力してくれても。
いいと思う。
言わない。
心の中。
だから。
セーフ。
◇
進む。
人に。
聞く。
道を。
確認。
また。
進む。
俺は。
最近。
測量隊の。
動きが。
分かってきた。
止まる。
理由。
進む。
理由。
人に。
聞く。
理由。
全部。
最初は。
「なんで?」
だった。
今。
少し。
分かる。
「先生」
宗平。
「何?」
「こちらを」
記録。
見る。
俺は。
確認。
「うん」
普通に。
返す。
宗平。
次の。
仕事へ。
戻る。
「…………」
今の。
俺。
ちょっと。
伊能忠敬っぽくない?
誰にも。
言わない。
言ったら。
門倉に。
変な顔。
される。
俺。
伊能忠敬。
なんだけど。
◇
昼。
休憩。
飯。
食べる。
俺は。
聞く。
「門倉」
「はい」
「ノコベリ別の次、姉別だよね?」
「はい」
「その次」
「西別へ向かいます」
「…………」
俺。
笑う。
「もうすぐじゃん」
門倉が。
俺を見る。
「何がでしょう?」
「西別」
「まだ先でございますが」
「でも、もう名前並べたら二個じゃん」
「距離は名前の数では測れませぬ」
「…………」
正論。
嫌い。
◇
でも。
気分。
いい。
西別。
最初。
聞いた時。
絶望。
した。
地図。
見た。
遠い。
折り返し。
知った。
もっと。
絶望。
した。
でも。
今。
厚岸。
越えた。
ノコベリ別。
向かってる。
姉別。
その先。
「…………」
本当に。
着くんだ。
当たり前。
だけど。
なんか。
嬉しい。
◇
午後。
進む。
測る。
歩く。
記録。
繰り返す。
足。
痛い。
疲れる。
でも。
止まらない。
俺。
前なら。
何回。
「休もう」
って。
言っただろう。
今。
言わない。
理由。
一つ。
西別。
近い。
◇
そして。
ノコベリ別。
「着いた……」
俺は。
周囲を見る。
厚岸ほど。
名前に。
馴染み。
ない。
牡蠣も。
ない。
たぶん。
でも。
俺には。
重要。
ここ。
越えたら。
姉別。
その先。
西別。
「門倉」
「はい」
「次、姉別?」
「はい」
「よし」
門倉が。
俺を見る。
「随分と急がれますな」
「だって」
俺は。
東を見る。
「もうすぐ折り返しだろ?」
「…………」
門倉。
少し。
考える。
「まあ」
何。
その。
間。
「何?」
「いえ」
「今なんか言おうとした?」
「何も」
怪しい。
でも。
俺。
気にしない。
今。
機嫌。
いいから。
◇
必要な。
こと。
済ませる。
記録。
整理。
確認。
俺は。
働く。
普通に。
働く。
そして。
気づく。
「…………」
今日。
俺。
あんまり。
文句。
言ってない。
成長。
すごい。
ウインドウ。
出る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
お前。
空気。
読めよ。
◇
「いや」
俺は。
ウインドウに。
言う。
「いい」
【24%】
「もういい」
【24%】
「数字じゃない」
【24%】
「俺には分かる」
【24%】
「西別が近づいてる」
【24%】
「もうすぐ折り返し」
【24%】
「勝ったな」
【…………】
俺は。
笑った。
完璧。
完全に。
勝ち。
何に。
勝ったのか。
分からないけど。
勝った。
◇
夜。
今後の。
話。
聞く。
姉別へ。
進む。
そこで。
この先の。
手配。
確認。
そして。
西別。
「…………」
手配?
ちょっと。
気になった。
「門倉」
「はい」
「手配って?」
「先へ進むためのものです」
「ふーん」
俺は。
それ以上。
聞かなかった。
進むため。
なら。
問題ない。
◇
横になる。
目。
閉じる。
俺は。
頭の中で。
数える。
ノコベリ別。
今。
ここ。
次。
姉別。
その次。
西別。
「…………」
二つ。
あと。
二つ。
いや。
地名の数で。
距離。
測るな。
門倉に。
言われた。
でも。
いい。
もう。
見えてる。
折り返し。
そして。
帰り。
厚岸。
牡蠣。
「…………」
完璧じゃん。
西別。
着く。
折り返す。
厚岸。
戻る。
牡蠣。
食う。
そのまま。
帰る。
俺。
完全に。
未来を。
理解した。
「…………」
よし。
明日も。
頑張ろう。
この時の俺は。
本気で。
そう思っていた。
進むための。
手配。
それが。
整うまで。
待つ。
という。
当たり前のことに。
まだ。
気づいていなかった。
そして。
俺は。
知らなかった。
待つというのが。
歩くより。
ずっと。
腹が立つことを。




