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コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

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33/85

第33話「牡蠣あったぁぁ!」

朝。


目が覚めた。


「…………」


身体。


重い。


昨日。


昼。


測量。


夜。


天測。


五十五歳。


頑張った。


「…………」


休みたい。


本音。


出る。


でも。


思い出す。


厚岸。


「…………」


牡蠣。


起きた。


     ◇


「先生」


門倉隼太が。


来る。


「起きてる」


「本日も早いですな」


「目的があるから」


「西別ですか?」


「…………」


違う。


いや。


違わない。


最終的には。


西別。


でも。


今は。


違う。


「厚岸」


「厚岸?」


「うん」


門倉が。


不思議そうな。


顔をする。


「昨日から随分と厚岸を気にされますな」


「気のせい」


「左様ですか」


絶対。


気づかれてる。


     ◇


出発。


今日も。


東。


でも。


もう。


文句。


言わない。


厚岸。


近づいてる。


歩く。


測る。


記録。


また。


歩く。


「…………」


俺は。


前を見る。


どこだ。


厚岸。


どこだ。


牡蠣。


いや。


違う。


厚岸。


「先生」


「何?」


「先ほどから前ばかり見ておりますが」


「気のせい」


今日。


二回目。


     ◇


測る。


進む。


止まる。


記録。


確認。


また。


進む。


「…………」


遅い。


測量。


遅い。


当たり前。


分かってる。


海岸線。


測ってる。


旅行じゃない。


「門倉」


「はい」


「あとどれくらい?」


「厚岸までですか?」


「うん」


答え。


聞く。


「…………」


まだ。


ある。


「分かった」


歩く。


     ◇


少しして。


また。


「門倉」


「はい」


「あとどれくらい?」


「先生」


「何?」


「先ほどお答えしましたが」


「進んだじゃん」


「…………」


門倉が。


俺を見る。


「子供の旅ではありませぬ」


「分かってるよ!」


五十五歳。


怒られた。


     ◇


昼。


飯。


俺は。


魚を。


食べる。


うまい。


いつもなら。


満足。


でも。


今日は。


違う。


「…………」


牡蠣。


宗平が。


俺を見る。


「先生」


「何?」


「魚、お嫌いでしたか?」


「好きだよ」


「では、なぜ残念そうな顔を?」


「…………」


顔。


出すぎ。


俺。


「もっと好きなものがあるだけ」


「ほう」


宗平。


食いついた。


「何がお好きで?」


「…………」


牡蠣。


言う?


いや。


やめる。


もし。


厚岸着いて。


牡蠣。


なかったら。


恥ずかしい。


「秘密」


「はあ」


五十五歳。


好きな食べ物。


秘密にした。


     ◇


午後。


また。


測る。


歩く。


測る。


歩く。


そして。


門倉が。


言った。


「先生」


「何?」


「厚岸が近うございます」


「!」


俺。


顔。


上げる。


「本当?」


「はい」


疲れ。


消えた。


気がする。


足。


痛い。


でも。


動く。


「よし!」


「先生」


「何?」


「測量を」


「分かってる!」


分かってる。


だから。


測る。


ちゃんと。


測る。


早く。


厚岸へ。


行くために。


ちゃんと。


測る。


矛盾。


してる気も。


する。


     ◇


そして。


ようやく。


着いた。


厚岸。


「…………」


俺は。


周囲を見る。


ここ。


厚岸。


現代でも。


知ってる。


名前。


俺が。


知ってる場所。


江戸時代の。


厚岸。


「おお……」


少し。


感動する。


現代と。


全然。


違う。


当たり前。


でも。


同じ場所。


二百年以上。


前。


俺。


そこに。


立ってる。


「…………」


すげえ。


牡蠣。


一瞬。


忘れた。


本当に。


一瞬だけ。


     ◇


「先生」


門倉の声。


現実。


戻る。


「何?」


「本日の記録を」


「ああ」


仕事。


残ってた。


俺たちは。


必要なことを。


済ませる。


記録。


確認。


話。


聞く。


宿。


決める。


俺も。


動く。


そして。


ようやく。


一息。


「…………」


さて。


俺は。


周囲を見る。


厚岸。


来た。


つまり。


次。


俺の。


個人的な。


任務。


牡蠣。


     ◇


でも。


問題。


ある。


どうやって。


聞く?


「牡蠣あります?」


普通に。


聞けばいい。


でも。


俺。


昨日から。


牡蠣。


牡蠣。


頭の中。


牡蠣。


もし。


ない。


って。


言われたら。


精神的。


ダメージ。


でかい。


「…………」


いや。


聞こう。


俺は。


近くの人に。


声を。


かける。


海の。


食べ物。


魚。


貝。


そういう話を。


する。


自然に。


自然に。


「この辺りでは」


俺は。


聞く。


「貝なども獲れるのか?」


「はい」


来た。


心臓。


ちょっと。


速い。


いくつか。


名前。


出る。


俺は。


待つ。


そして。


「…………」


出た。


牡蠣。


「あるの!?」


声。


大きくなった。


相手が。


驚く。


門倉も。


見る。


「先生?」


「いや!」


ある。


牡蠣。


ある。


この時代にも。


当然。


いる。


生き物なんだから。


当たり前。


でも。


嬉しい。


「食べる?」


俺は。


聞く。


     ◇


そして。


俺の前。


牡蠣。


「…………」


来た。


ついに。


来た。


江戸時代。


蝦夷地。


厚岸。


牡蠣。


俺は。


見る。


現代みたいに。


店。


ない。


メニュー。


ない。


牡蠣小屋。


ない。


観光。


ない。


でも。


牡蠣。


ある。


「…………」


いただきます。


食べる。


「…………!」


うまい。


海。


濃い。


味。


広がる。


「うまっ」


思わず。


声。


出る。


「先生」


門倉が。


見る。


「随分とお気に召したようで」


「うん」


これは。


うまい。


ここまで。


歩いた。


足。


痛い。


昼。


測った。


夜。


星。


測った。


五十五歳。


働いた。


全部。


一瞬。


報われた。


気がした。


「…………」


厚岸。


最高。


     ◇


ウインドウ。


現れる。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:24%】


「…………」


今。


出る?


俺は。


牡蠣を見る。


次。


ウインドウ。


見る。


【24%】


「今日はいい」


【24%】


「許す」


【24%】


「牡蠣うまいから」


【…………】


初めて。


進捗率に。


勝った。


気がした。


     ◇


夜。


俺は。


横になる。


満足。


した。


厚岸。


来た。


牡蠣。


食った。


「…………」


明日も。


ここ?


そうなら。


いい。


もう一回。


食べたい。


そんなこと。


考えていた。


外。


声。


聞こえる。


門倉たち。


何か。


話している。


今後の。


行程。


俺は。


耳を。


傾ける。


厚岸。


この先。


さらに。


東。


ノコベリ別。


そして。


姉別。


その先。


西別。


「…………」


そうだった。


牡蠣。


食って。


終わりじゃない。


俺。


地図。


作ってる。


ウインドウ。


もう一度。


出る。


【測量進捗率:24%】


「…………」


分かったよ。


でも。


今日は。


言わせて。


俺は。


目を閉じる。


「牡蠣うまかった……」


伊能忠敬。


五十五歳。


厚岸到着。


日本地図。


まだ。


完成していない。


西別。


まだ。


遠い。


でも。


今日は。


牡蠣を。


食べた。


だから。


いい。


明日から。


また。


歩こう。


「…………」


できれば。


朝も。


牡蠣。


食いたい。

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