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コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

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31/85

第31話「厚岸って牡蠣の!?」

朝。


目が覚めた。


「…………」


俺は。


天井を見る。


昨日。


ついに。


増えた。


【測量進捗率:24%】


長かった。


本当に。


長かった。


二十三。


二十三。


二十三。


何度見ても。


二十三。


それが。


ついに。


二十四。


たった。


一パーセント。


でも。


嬉しかった。


俺は。


思った。


一個ずつ。


増やせばいい。


今日。


一つ。


明日。


また。


一つ。


それを。


続ければいい。


「…………」


いいこと。


考えたな。


俺。


ちょっと。


格好よかった。


気がする。


「先生」


来た。


門倉隼太。


「おはよう」


「おはようございます」


俺は。


布団から。


起きる。


昨日までとは。


違う。


今日の俺は。


前向き。


「行くか」


「はい」


俺から。


言った。


門倉が。


少し。


驚いたように見えた。


「何?」


「いえ」


俺は。


立ち上がる。


よし。


今日も。


進もう。


     ◇


外。


俺は。


大きく。


息を吸う。


空。


海。


風。


悪くない。


「門倉」


「はい」


「今日の目的地は?」


門倉が。


答える。


俺は。


頷く。


「分かった」


そして。


もう一つ。


聞く。


「方向は?」


「東です」


「…………」


俺は。


止まった。


「東?」


「はい」


「今日も?」


「はい」


「…………」


昨日。


聞いた。


今日も。


東。


明日も。


たぶん。


東。


その次も。


東。


分かってた。


分かってたけど。


「まだ東?」


「西別までは」


「…………」


俺は。


東を見る。


海岸線。


続いてる。


「そうだった」


一晩。


寝たら。


ちょっと。


忘れてた。


     ◇


出発。


歩く。


東。


測る。


東。


記録。


東。


また。


歩く。


東。


「…………」


俺は。


だんだん。


腹が立ってきた。


東。


東。


東。


東。


どこまで。


東なんだ。


「門倉」


「はい」


「西って知ってる?」


「もちろんです」


「よかった」


「何がでしょう?」


「俺たち最近、東しか行ってないから」


門倉が。


俺を見る。


「西別へ向かっておりますので」


「知ってるよ!」


     ◇


測量。


続く。


海岸線。


真っすぐじゃない。


当然。


曲がる。


入り込む。


また。


出る。


そのたび。


測る。


記録。


進む。


「…………」


俺は。


前を見る。


目的地。


あっち。


でも。


直線で。


行けない。


海岸線を。


追う。


「なあ」


「はい」


「これさ」


俺は。


海岸を見る。


「真っすぐ行ったら駄目?」


「測量になりませぬ」


「だよね」


知ってた。


でも。


聞きたかった。


     ◇


昼。


休憩。


俺は。


座る。


足。


伸ばす。


飯。


食う。


そして。


ウインドウ。


見る。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:24%】


「…………」


まだ。


二十四。


まあ。


いい。


昨日。


上がった。


今日。


すぐ。


二十五。


そんな。


都合のいい。


システムじゃない。


もう。


分かってる。


「焦らない」


俺は。


自分に。


言う。


「一個ずつ」


門倉が。


見る。


「何がでしょう?」


「俺の成長の話」


「左様ですか」


もう少し。


興味。


持て。


     ◇


午後。


また。


歩く。


測る。


記録。


海岸。


続く。


俺は。


最近。


少し。


変わった。


前なら。


ただ。


つらかった。


今は。


景色を。


見る。


地形。


見る。


人。


見る。


村。


見る。


ここが。


地図に。


なる。


そう。


思える。


「…………」


俺。


本当に。


慣れてきたな。


測量。


少し。


面白い。


そう。


思ってる。


自分が。


いる。


     ◇


その時。


門倉たちが。


止まった。


俺も。


止まる。


「何?」


確認。


している。


この先。


どこを。


通るか。


現地の人から。


話を聞く。


俺は。


待つ。


以前なら。


「まだ?」


って。


言ってた。


今は。


待てる。


道を。


知ってる人が。


いる。


聞く。


それでいい。


「先生」


門倉が。


戻る。


「行ける?」


「はい」


「じゃあ行こう」


俺は。


歩き出す。


     ◇


夕方。


今日の。


測量を。


終える。


「終わった……」


疲れた。


もちろん。


疲れた。


慣れても。


疲れるものは。


疲れる。


俺は。


東を見る。


西別。


まだ。


先。


でも。


昨日より。


近い。


たぶん。


「…………」


そう。


考えれば。


いい。


昨日より。


一日分。


近い。


     ◇


ウインドウ。


現れる。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:24%】


「…………」


まあ。


知ってた。


俺は。


笑う。


「今日は許す」


【24%】


「昨日上がったからな」


【24%】


「毎日上がれとは言わない」


【24%】


「俺も大人になった」


【24%】


「…………」


なんで。


数字に。


上から。


言われてる気分に。


なるんだろう。


     ◇


宿へ。


向かう。


俺は。


門倉に。


聞いた。


「なあ」


「はい」


「この先」


「はい」


「大きいところある?」


毎日。


小さな場所を。


つないで。


進んでいる。


でも。


俺にも。


聞いたことのある。


場所。


ないかな。


そんな。


軽い気持ち。


だった。


門倉が。


答える。


「厚岸へ向かいます」


「…………」


俺は。


止まった。


厚岸。


知ってる。


現代人の。


俺でも。


知ってる。


「厚岸?」


「はい」


「牡蠣の?」


「…………」


門倉が。


俺を見る。


「かき?」


「…………」


俺は。


口を。


押さえた。


やった。


また。


やった。


「いや」


門倉が。


首を傾げる。


「何のお話です?」


「何でもない」


厚岸。


牡蠣。


有名。


俺の。


頭の中。


完全に。


牡蠣。


「…………」


待て。


この時代。


どうなんだ?


牡蠣。


ある?


食える?


俺は。


急に。


元気になる。


「門倉」


「はい」


「厚岸まであとどれくらい?」


「先生?」


「早く行こう」


「本日の測量は終わりましたが」


「明日!」


「もちろん測量いたします」


「よし!」


門倉が。


不思議そうに。


俺を見る。


でも。


いい。


西別。


遠い。


進捗。


二十四。


今日も。


東。


明日も。


東。


それでも。


俺には。


今。


新しい。


目的が。


できた。


厚岸。


そして。


牡蠣。


「…………」


待ってろ。


厚岸。


俺は。


絶対。


たどり着く。


伊能忠敬。


五十五歳。


測量家。


現在。


日本地図を。


作成中。


そして。


今。


頭の中は。


牡蠣で。


いっぱいだった。

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