第31話「厚岸って牡蠣の!?」
朝。
目が覚めた。
「…………」
俺は。
天井を見る。
昨日。
ついに。
増えた。
【測量進捗率:24%】
長かった。
本当に。
長かった。
二十三。
二十三。
二十三。
何度見ても。
二十三。
それが。
ついに。
二十四。
たった。
一パーセント。
でも。
嬉しかった。
俺は。
思った。
一個ずつ。
増やせばいい。
今日。
一つ。
明日。
また。
一つ。
それを。
続ければいい。
「…………」
いいこと。
考えたな。
俺。
ちょっと。
格好よかった。
気がする。
「先生」
来た。
門倉隼太。
「おはよう」
「おはようございます」
俺は。
布団から。
起きる。
昨日までとは。
違う。
今日の俺は。
前向き。
「行くか」
「はい」
俺から。
言った。
門倉が。
少し。
驚いたように見えた。
「何?」
「いえ」
俺は。
立ち上がる。
よし。
今日も。
進もう。
◇
外。
俺は。
大きく。
息を吸う。
空。
海。
風。
悪くない。
「門倉」
「はい」
「今日の目的地は?」
門倉が。
答える。
俺は。
頷く。
「分かった」
そして。
もう一つ。
聞く。
「方向は?」
「東です」
「…………」
俺は。
止まった。
「東?」
「はい」
「今日も?」
「はい」
「…………」
昨日。
聞いた。
今日も。
東。
明日も。
たぶん。
東。
その次も。
東。
分かってた。
分かってたけど。
「まだ東?」
「西別までは」
「…………」
俺は。
東を見る。
海岸線。
続いてる。
「そうだった」
一晩。
寝たら。
ちょっと。
忘れてた。
◇
出発。
歩く。
東。
測る。
東。
記録。
東。
また。
歩く。
東。
「…………」
俺は。
だんだん。
腹が立ってきた。
東。
東。
東。
東。
どこまで。
東なんだ。
「門倉」
「はい」
「西って知ってる?」
「もちろんです」
「よかった」
「何がでしょう?」
「俺たち最近、東しか行ってないから」
門倉が。
俺を見る。
「西別へ向かっておりますので」
「知ってるよ!」
◇
測量。
続く。
海岸線。
真っすぐじゃない。
当然。
曲がる。
入り込む。
また。
出る。
そのたび。
測る。
記録。
進む。
「…………」
俺は。
前を見る。
目的地。
あっち。
でも。
直線で。
行けない。
海岸線を。
追う。
「なあ」
「はい」
「これさ」
俺は。
海岸を見る。
「真っすぐ行ったら駄目?」
「測量になりませぬ」
「だよね」
知ってた。
でも。
聞きたかった。
◇
昼。
休憩。
俺は。
座る。
足。
伸ばす。
飯。
食う。
そして。
ウインドウ。
見る。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
まだ。
二十四。
まあ。
いい。
昨日。
上がった。
今日。
すぐ。
二十五。
そんな。
都合のいい。
システムじゃない。
もう。
分かってる。
「焦らない」
俺は。
自分に。
言う。
「一個ずつ」
門倉が。
見る。
「何がでしょう?」
「俺の成長の話」
「左様ですか」
もう少し。
興味。
持て。
◇
午後。
また。
歩く。
測る。
記録。
海岸。
続く。
俺は。
最近。
少し。
変わった。
前なら。
ただ。
つらかった。
今は。
景色を。
見る。
地形。
見る。
人。
見る。
村。
見る。
ここが。
地図に。
なる。
そう。
思える。
「…………」
俺。
本当に。
慣れてきたな。
測量。
少し。
面白い。
そう。
思ってる。
自分が。
いる。
◇
その時。
門倉たちが。
止まった。
俺も。
止まる。
「何?」
確認。
している。
この先。
どこを。
通るか。
現地の人から。
話を聞く。
俺は。
待つ。
以前なら。
「まだ?」
って。
言ってた。
今は。
待てる。
道を。
知ってる人が。
いる。
聞く。
それでいい。
「先生」
門倉が。
戻る。
「行ける?」
「はい」
「じゃあ行こう」
俺は。
歩き出す。
◇
夕方。
今日の。
測量を。
終える。
「終わった……」
疲れた。
もちろん。
疲れた。
慣れても。
疲れるものは。
疲れる。
俺は。
東を見る。
西別。
まだ。
先。
でも。
昨日より。
近い。
たぶん。
「…………」
そう。
考えれば。
いい。
昨日より。
一日分。
近い。
◇
ウインドウ。
現れる。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:24%】
「…………」
まあ。
知ってた。
俺は。
笑う。
「今日は許す」
【24%】
「昨日上がったからな」
【24%】
「毎日上がれとは言わない」
【24%】
「俺も大人になった」
【24%】
「…………」
なんで。
数字に。
上から。
言われてる気分に。
なるんだろう。
◇
宿へ。
向かう。
俺は。
門倉に。
聞いた。
「なあ」
「はい」
「この先」
「はい」
「大きいところある?」
毎日。
小さな場所を。
つないで。
進んでいる。
でも。
俺にも。
聞いたことのある。
場所。
ないかな。
そんな。
軽い気持ち。
だった。
門倉が。
答える。
「厚岸へ向かいます」
「…………」
俺は。
止まった。
厚岸。
知ってる。
現代人の。
俺でも。
知ってる。
「厚岸?」
「はい」
「牡蠣の?」
「…………」
門倉が。
俺を見る。
「かき?」
「…………」
俺は。
口を。
押さえた。
やった。
また。
やった。
「いや」
門倉が。
首を傾げる。
「何のお話です?」
「何でもない」
厚岸。
牡蠣。
有名。
俺の。
頭の中。
完全に。
牡蠣。
「…………」
待て。
この時代。
どうなんだ?
牡蠣。
ある?
食える?
俺は。
急に。
元気になる。
「門倉」
「はい」
「厚岸まであとどれくらい?」
「先生?」
「早く行こう」
「本日の測量は終わりましたが」
「明日!」
「もちろん測量いたします」
「よし!」
門倉が。
不思議そうに。
俺を見る。
でも。
いい。
西別。
遠い。
進捗。
二十四。
今日も。
東。
明日も。
東。
それでも。
俺には。
今。
新しい。
目的が。
できた。
厚岸。
そして。
牡蠣。
「…………」
待ってろ。
厚岸。
俺は。
絶対。
たどり着く。
伊能忠敬。
五十五歳。
測量家。
現在。
日本地図を。
作成中。
そして。
今。
頭の中は。
牡蠣で。
いっぱいだった。




