第30話「やっと1%増えた!」
朝。
目が覚めた。
「…………」
俺は。
天井を見る。
そして。
昨日のことを。
思い出す。
西別。
遠い。
めちゃくちゃ。
遠い。
しかも。
ゴールじゃない。
折り返し。
そして。
ウインドウ。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:23%】
「…………」
俺は。
布団を。
頭まで。
かぶった。
「知らなきゃよかった」
本気で。
思った。
西別。
着いた。
やった。
終わった。
じゃない。
そこから。
帰る。
しかも。
帰りも。
測る。
「…………」
なんで。
俺。
進捗率なんて。
聞いたんだろう。
知らなければ。
今日も。
何となく。
歩けたのに。
今。
俺の頭には。
数字がある。
七十七。
残り。
七十七パーセント。
「先生」
来た。
門倉隼太。
「…………」
「先生」
「…………」
「出立の支度を」
俺は。
布団から。
顔を出した。
「門倉」
「はい」
「七十七」
「何がでしょう?」
「残り」
「…………」
門倉が。
少し考える。
「ああ」
理解。
された。
嫌だ。
「まだ二十三なのですね」
「言うな!」
◇
外。
出る。
今日も。
海。
ある。
道。
あるような。
ないような。
海岸線。
ずっと。
続いてる。
「…………」
俺は。
東を見る。
あっち。
西別。
遠い。
次に。
西を見る。
あっち。
帰る方向。
もっと。
遠い。
「…………」
見なきゃよかった。
「先生」
門倉が。
声をかける。
「参りましょう」
「うん」
俺は。
歩き出す。
自分でも。
少し。
驚く。
文句。
言った。
絶望。
した。
布団。
かぶった。
でも。
今。
普通に。
歩き出した。
「…………」
俺。
慣れたな。
いいのか。
悪いのか。
分からない。
◇
測量開始。
歩く。
測る。
記録。
進む。
止まる。
測る。
また。
進む。
「…………」
今日も。
同じ。
昨日も。
同じ。
その前も。
同じ。
毎日。
同じことの。
繰り返し。
でも。
地図を見ると。
少しずつ。
線が。
伸びている。
「…………」
これ。
不思議だな。
一日。
だけなら。
ほとんど。
変わらない。
でも。
何日も。
重ねると。
線になる。
俺たちが。
歩いた場所。
測った場所。
全部。
繋がっていく。
◇
昼。
休憩。
俺は。
記録を。
眺める。
江戸を。
出た。
歩いた。
船。
乗った。
酔った。
蝦夷地。
着いた。
測量。
始めた。
川。
渡った。
器具。
壊れた。
直した。
夜。
星。
測った。
寒かった。
暑かった。
また。
寒かった。
地図。
写した。
現地の人に。
道。
教えてもらった。
人。
借りた。
馬。
借りた。
飯。
食った。
そして。
今。
まだ。
東へ。
進んでいる。
「…………」
俺。
結構。
やったよな。
前にも。
同じこと。
思った。
その時。
出た。
【22%】
「…………」
嫌な記憶。
蘇った。
◇
俺は。
ウインドウを。
呼ぶ。
最近。
なんとなく。
出てほしい時。
出る。
怖い。
でも。
便利。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:23%】
「…………」
俺は。
じっと。
見る。
「なあ」
【…………】
「いつ二十四になるの?」
【表示対象外】
「知ってる!」
聞いた。
俺が。
悪かった。
でも。
今日は。
少し。
違う。
二十三。
前は。
少ない。
それしか。
思わなかった。
今は。
この。
二十三の中に。
いろんなものが。
入ってる。
俺たち。
六人。
案内してくれた人。
荷物を。
運んでくれた人。
馬。
貸してくれた人。
泊めてくれた人。
飯。
作ってくれた人。
道。
教えてくれた人。
「…………」
二十三。
重いな。
本当に。
◇
午後。
また。
歩く。
海岸線。
曲がる。
測る。
川。
ある。
確認。
進む。
「先生」
宗平が。
呼ぶ。
「何?」
記録。
見る。
確認。
俺も。
少しずつ。
分かる。
最初。
何を。
見せられているのか。
分からなかった。
今。
間違い。
少しなら。
気づく。
「ここ」
俺は。
指を差す。
「これでいい?」
宗平が。
確認する。
頷く。
「…………」
俺。
測量。
できるようになってる。
今さら。
気づいた。
「門倉」
「はい」
「俺さ」
「はい」
「最初より役に立ってない?」
門倉が。
俺を見る。
「当然では?」
「もうちょっと褒めろよ!」
でも。
嬉しい。
◇
歩く。
測る。
記録。
俺は。
思う。
本物の。
伊能忠敬なら。
こんなこと。
当たり前に。
やったんだろう。
俺は。
違う。
何も。
知らなかった。
測量。
分からない。
道具。
分からない。
人。
分からない。
時代。
分からない。
でも。
周りを。
見た。
記録を。
見た。
聞いた。
覚えた。
失敗。
した。
また。
やった。
そうして。
少しずつ。
ここまで。
来た。
「…………」
俺でも。
できるんだな。
ちょっと。
そう思った。
◇
夕方。
今日の。
測量。
終わる。
俺は。
海を見る。
夕日。
綺麗。
風。
吹く。
少し。
冷たい。
「…………」
蝦夷地。
広い。
本当に。
広い。
でも。
前みたいに。
広さだけで。
絶望は。
しなくなった。
全部。
一度に。
歩く必要。
ない。
今日。
歩く。
明日。
また。
歩く。
それで。
いい。
◇
その時。
ウインドウ。
現れる。
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:23%】
「…………」
また。
二十三。
俺は。
笑った。
「しつこいな」
【23%】
「分かったよ」
消そうと。
した。
その時。
表示が。
揺れた。
「…………?」
数字。
変わる。
【測量進捗率:24%】
「…………」
俺は。
止まった。
二十四。
もう一度。
見る。
【24%】
「…………」
上がった。
たった。
一。
一パーセント。
でも。
俺は。
思わず。
叫んだ。
「よっしゃあ!」
門倉。
宗平。
秀蔵。
吉助。
長助。
全員。
俺を見る。
「先生?」
「上がった!」
「何がでしょう?」
「一パーセント!」
「何のお話です?」
「いいんだよ!」
俺は。
笑う。
たった。
一。
でも。
嬉しい。
めちゃくちゃ。
嬉しい。
◇
二十二。
最初に。
見た。
絶望した。
二十三。
なかなか。
変わらなかった。
そして。
二十四。
「…………」
一パーセント。
この一パーセントのために。
何日。
歩いた?
何人に。
助けてもらった?
何回。
測った?
何回。
星。
見た?
「…………」
そりゃ。
重いわ。
俺は。
ウインドウを見る。
【測量進捗率:24%】
残り。
七十六。
「…………」
まだ。
七十六。
普通なら。
絶望。
する。
でも。
今。
俺は。
少し。
違った。
「あと七十六か」
門倉が。
俺を見る。
「先生?」
俺は。
東を見る。
西別。
まだ。
遠い。
その先。
帰り。
もっと。
長い。
でも。
「まあ」
俺は。
一歩。
踏み出す。
「一個ずつ増やせばいいか」
門倉が。
少し。
笑う。
「参りましょう」
「ああ」
俺たちは。
歩き出す。
◇
少し。
歩いて。
俺は。
ふと。
思う。
二十四。
つまり。
四分の一。
もうすぐ。
そこまで。
来た。
「…………」
待て。
四分の一?
俺は。
足を。
止める。
「門倉」
「はい」
「俺たちさ」
「はい」
「めちゃくちゃ歩いたよね?」
「歩きましたな」
「夜も働いたよね?」
「天測もいたしました」
「川も渡った」
「はい」
「寒かった」
「はい」
「暑かった」
「はい」
「人も借りた」
「はい」
「馬も借りた」
「はい」
俺は。
ウインドウを見る。
【24%】
「…………」
そして。
言った。
「これ全部やって、まだ四分の一にも届いてないの?」
門倉が。
首を傾げる。
「先生?」
「いや」
俺は。
東を見る。
やっぱり。
遠い。
めちゃくちゃ。
遠い。
「…………」
伊能忠敬。
俺は。
心の中で。
本物に。
言う。
あんた。
本当に。
これ。
全部。
やったんだな。
頭のネジ。
外れてる。
今でも。
そう思う。
でも。
少しだけ。
分かってきた。
一日で。
日本地図を。
作ろうとしたんじゃない。
今日。
一つ。
測る。
明日。
また。
一つ。
測る。
それを。
ずっと。
続けた。
だから。
最後に。
日本になった。
「…………」
それなら。
俺にも。
できるかもしれない。
俺は。
歩く。
二十四パーセント。
まだ。
先は。
長い。
めちゃくちゃ。
長い。
でも。
昨日の。
俺より。
一パーセント。
前にいる。
それで。
いい。
「先生」
門倉が。
前から。
呼ぶ。
「何?」
「遅れております」
「今いいこと考えてたんだよ!」
「参りましょう」
「分かったよ!」
俺は。
走る。
いや。
走らない。
足。
痛い。
早歩き。
する。
第一次測量。
蝦夷地。
【進捗率:24%】
残り。
七十六パーセント。
「…………」
やっぱ。
長いわ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ついに30話。
そして浩哉――
まだ24%です。
作者も書き始めるまでは、伊能忠敬といえば「日本中を歩いて測量し、地図を作った人」くらいの知識でした。
でも調べれば調べるほど、
「この人、本当にすごくない?」
となり――
気づけば作者自身、伊能忠敬がかなり好きになっています。
そして浩哉も、文句を言いながら少しずつ伊能忠敬になってきました。
でも残り76%。
まだまだ歩きます(笑)。
これからも浩哉と一緒に笑っていただけたら嬉しいです!
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