↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/85

第27話「地図より魚だわ」

朝。


今日も。


歩く。


当然のように。


歩く。


「…………」


もう。


驚かない。


朝。


起きる。


支度。


歩く。


測る。


記録。


夜。


天気が良ければ。


星。


「…………」


俺。


完全に。


測量隊の生活に。


染まってきてない?


少し。


怖い。


「先生」


門倉隼太が。


呼ぶ。


「何?」


「本日の人足についてですが」


「うん」


昨日までなら。


人足。


その言葉だけで。


少し。


安心した。


荷物。


運んでくれる。


案内。


してくれる。


馬。


貸してもらえる。


俺たちだけじゃ。


できないことを。


助けてもらう。


でも。


門倉の顔。


なんか。


いつもと違う。


「どうした?」


「少々、人数の確保に手間取っております」


「…………」


来た。


俺は。


思った。


ついに。


来た。


     ◇


「何人足りないの?」


俺は。


聞く。


門倉が。


説明する。


必要な人数。


馬。


案内。


全部。


いつでも。


簡単に。


揃うわけではない。


「…………」


俺は。


腕を組む。


「幕府の仕事なんだよね?」


「はい」


「測量だよね?」


「はい」


「大事な仕事だよね?」


「もちろんです」


「じゃあ」


俺は。


単純に。


思ったことを言う。


「頼めば来てくれるんじゃないの?」


門倉が。


俺を見る。


「先生」


「何?」


「この者たちにも仕事があります」


「…………」


俺は。


止まった。


     ◇


少しして。


現地の人たちを。


見る。


話している。


それぞれ。


やることが。


ある。


当たり前だ。


ここは。


俺たちのために。


存在している場所じゃない。


俺たちが。


来る前から。


人が。


暮らしている。


食べる。


働く。


家族。


養う。


その生活の中に。


突然。


俺たちが。


来る。


「地図作るから手伝って」


「…………」


俺は。


頭をかいた。


「そりゃ、いつでもいいよとはならないか」


門倉が。


俺を見る。


「何か?」


「いや」


今さら。


気づいた。


それだけ。


     ◇


俺たちは。


待った。


話をする。


調整する。


必要な人。


必要な馬。


すぐには。


決まらない。


「…………」


俺は。


座って。


待つ。


昨日まで。


思ってた。


人が必要なら。


借りればいい。


馬が必要なら。


借りればいい。


簡単。


そんなわけ。


なかった。


人を借りる。


って。


言葉は。


簡単。


でも。


人には。


その人の。


一日がある。


「…………」


現代でも。


同じだな。


急に。


明日来て。


そう言われても。


予定。


ある。


仕事。


ある。


家族。


ある。


「先生」


門倉が。


戻ってくる。


「どう?」


「もう少しかかりそうです」


「分かった」


俺は。


答えた。


門倉が。


少し。


俺を見る。


「何?」


「いえ」


「なんだよ」


「以前でしたら、まだかと仰るかと」


「…………」


俺は。


ちょっと。


ムッとする。


「俺だって成長するんだよ」


最近。


これ。


何回目だろう。


     ◇


待っている間。


俺は。


周囲を見る。


人。


動いてる。


仕事。


してる。


海。


見る。


「…………」


魚。


この辺りの人たちにとって。


海は。


景色じゃない。


生活。


なんだ。


俺たちは。


海岸線を見て。


測る。


曲がってる。


測る。


岬。


測る。


川。


測る。


でも。


ここに住む人は。


同じ海を見て。


魚。


天気。


波。


風。


そういうものを。


見てる。


「…………」


同じ場所でも。


全然。


違うんだな。


     ◇


ようやく。


人が。


揃う。


馬も。


準備できた。


「よし」


俺は。


立ち上がる。


「行こう」


門倉が。


頷く。


「はい」


測量開始。


いつもより。


遅い。


でも。


仕方ない。


歩く。


測る。


記録。


また。


歩く。


人足たちも。


動く。


馬も。


荷を運ぶ。


「…………」


俺は。


今日。


少しだけ。


見え方が違った。


この人たち。


俺たちの。


部下じゃない。


俺たちの。


旅のために。


生きているわけでもない。


自分たちの。


生活がある。


その時間を。


俺たちに。


貸してくれている。


「…………」


ありがたいな。


素直に。


そう思った。


     ◇


昼。


休憩。


一緒に。


飯を食う。


俺は。


聞いてみる。


この辺りのこと。


海。


魚。


仕事。


いろいろ。


話を聞く。


全部。


俺の知らない。


蝦夷地。


地図には。


描けない。


生活。


「…………」


俺。


地図を。


作ってる。


でも。


地図に。


人は。


描かれない。


道。


海岸。


川。


山。


村。


そういうものは。


残る。


でも。


今日。


荷物を運んでくれた人の。


名前。


たぶん。


未来の地図には。


残らない。


「…………」


なんか。


不思議だな。


     ◇


午後。


測量。


続く。


予定より。


遅れている。


俺は。


ウインドウを見る。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:23%】


「…………」


まだ。


二十三。


でも。


今日は。


いつもほど。


腹が立たなかった。


進まない。


理由。


ある。


俺たちの。


都合だけでは。


進めない。


「…………」


地図作りって」


俺は。


呟く。


「人間相手の仕事でもあるんだな」


門倉が。


振り返る。


「何か仰いましたか?」


「いや」


俺は。


歩く。


     ◇


夕方。


今日の測量を。


終える。


思ったほど。


進まなかった。


でも。


進んだ。


俺は。


人足たちに。


礼を言う。


「ありがとう」


前より。


自然に。


言えた。


相手が。


頭を下げる。


俺も。


下げる。


「先生」


門倉が。


声をかける。


「何?」


「明日以降も、場所によっては人馬の確保に時間を要するかもしれません」


「うん」


俺は。


頷く。


そして。


聞く。


「もっと集まらないこともある?」


「あるでしょう」


「一人も?」


「時期によっては」


「…………」


俺は。


少し。


考える。


「みんな忙しい時期とか?」


「もちろんです」


「例えば?」


門倉が。


答える。


「漁の最盛期などは」


「…………」


漁。


俺は。


海を見る。


さっき。


考えた。


この海。


俺たちには。


測るもの。


でも。


この人たちには。


生活。


「そりゃ」


俺は。


苦笑する。


「地図より魚だわ」


門倉が。


俺を見る。


「先生?」


「いや」


分かる。


俺だって。


この人たちなら。


魚を。


選ぶ。


地図は。


今日じゃなくても。


測れる。


でも。


魚は。


待ってくれない。


「…………」


俺は。


海を見る。


そして。


ふと。


嫌なことを。


思った。


「門倉」


「はい」


「もしさ」


「はい」


「俺たちが、人も馬もめちゃくちゃ必要な時に」


「はい」


「ちょうど漁の一番忙しい時期が来たら?」


「…………」


門倉が。


黙った。


「…………」


俺も。


黙った。


波の音。


聞こえる。


「門倉?」


「その時は」


出た。


嫌な。


始まり。


「可能な方法を考えます」


「やっぱり!」


俺は。


頭を抱えた。


「それ絶対なんか起きるやつじゃん!」


     ◇


宿へ。


向かう。


俺は。


歩きながら。


海を見る。


魚。


人。


馬。


測量。


地図。


全部。


同じ場所に。


ある。


でも。


優先するものは。


人によって。


違う。


「…………」


伊能忠敬。


日本を。


測った。


教科書なら。


一行。


でも。


実際は。


地図を作る前に。


人を集める。


馬を借りる。


道を聞く。


泊めてもらう。


飯を食う。


そして。


みんなの生活の。


邪魔をしないように。


進まなきゃいけない。


「…………」


面倒くさ。


思わず。


本音。


出た。


門倉が。


振り返る。


「何か?」


「いや」


俺は。


笑う。


「日本地図作るの、思ってた百倍面倒くさいなって」


「今さらですか?」


「お前が言うな!」


門倉が。


少し。


笑った。


俺も。


笑った。


そして。


海を見る。


漁。


か。


なんとなく。


嫌な予感がする。


ものすごく。


嫌な予感。


でも。


今は。


まだ。


知らない。


この先。


俺たちの測量が。


本当に。


魚に。


負ける日が来ることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。