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コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

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26/85

第26話「日本測るのに六人?」

朝。


目が覚めた。


「…………」


眠い。


昨日。


昼。


地面を測った。


夜。


宇宙を測った。


そして。


寝た。


今。


朝。


「…………」


早くない?


夜から。


朝まで。


もっと。


時間あっても。


よくない?


俺は。


布団の中で。


真剣に考える。


誰に。


文句を言えば。


夜を。


長くしてもらえるんだろう。


「先生」


来た。


門倉。


「…………」


無視。


「先生」


「…………」


無視。


「出立の支度を」


「門倉」


「はい」


俺は。


布団から。


顔を出す。


「昨日、何時に寝た?」


「さて」


「今日、何時に起きた?」


「夜明け前には」


「…………」


聞いた俺が。


悪かった。


     ◇


準備。


始まる。


俺は。


ぼんやり。


周囲を見る。


門倉。


宗平。


秀蔵。


吉助。


長助。


そして。


俺。


「…………」


俺は。


もう一度。


見る。


門倉。


宗平。


秀蔵。


吉助。


長助。


俺。


「…………」


待て。


眠い。


頭。


回ってない。


もう一回。


指を。


使う。


一。


二。


三。


四。


五。


六。


「…………」


六?


俺は。


門倉を見る。


「門倉」


「はい」


「俺たち何人?」


「六人ですが」


「…………」


六。


やっぱり。


六。


「最初から?」


「はい」


「江戸出た時から?」


「はい」


「…………」


俺は。


周囲を見る。


蝦夷地。


広い。


めちゃくちゃ。


広い。


昨日。


昼。


地面。


夜。


宇宙。


測った。


海岸線。


長い。


進捗。


二十三パーセント。


そして。


測量隊。


六人。


「…………」


少なくない?


     ◇


「門倉」


「はい」


「確認なんだけど」


「何でしょう?」


「俺たち」


「はい」


「日本の地図作るんだよな?」


「まずは蝦夷地の測量です」


「最終的には?」


「先生は、そのおつもりなのでは?」


「…………」


そうだった。


俺。


伊能忠敬だった。


でも。


違う。


今は。


そこじゃない。


「六人?」


「はい」


「日本を?」


「…………」


門倉が。


少し。


考える。


「今後のことは分かりませぬが」


「少なくとも今は六人?」


「はい」


「…………」


俺は。


頭を抱えた。


「町内会の旅行じゃないんだぞ!」


門倉が。


首を傾げる。


「町内会?」


「忘れて!」


     ◇


出発。


今日も。


現地の人たちの。


助けを借りる。


案内。


人足。


馬。


いる。


でも。


測量隊そのものは。


六人。


俺は。


歩きながら。


何度も。


後ろを見る。


「…………」


六人。


少ない。


やっぱり。


少ない。


現代だったら。


どうだ?


日本地図を。


作る。


巨大プロジェクト。


専門家。


何人?


技術者。


何人?


事務。


何人?


車。


コンピューター。


衛星。


GPS。


「…………」


ここ。


六人。


紙。


筆。


測量器具。


足。


星。


以上。


「無理だろ」


「先生?」


「規模がおかしい」


「何がでしょう?」


「全部!」


     ◇


測る。


歩く。


記録。


また。


測る。


俺は。


みんなを見る。


門倉。


仕事。


してる。


宗平。


記録。


確認。


秀蔵。


動いてる。


吉助。


長助。


それぞれ。


やること。


ある。


「…………」


六人。


でも。


六人だから。


一人でも。


欠けたら。


大変なんじゃないか?


「門倉」


「はい」


「誰か体調崩したら?」


「程度によります」


「歩けなくなったら?」


「その時に考えます」


「…………」


出た。


その時に。


考える。


この測量隊。


事前に。


諦めるという。


選択肢。


ないの?


「じゃあ」


俺は。


さらに聞く。


「器具壊れたら?」


「直します」


知ってる。


もう。


見た。


「道分からなかったら?」


「現地の者に聞きます」


これも。


見た。


「川増えたら?」


「渡れる方法を探します」


これも。


やった。


「寒かったら?」


「袷を」


「暑かったら?」


「単衣を」


「…………」


俺は。


止まった。


門倉も。


止まる。


「先生?」


「お前ら」


俺は。


真顔で。


言った。


「何があったら諦めるの?」


「…………」


門倉が。


少し。


考える。


「測量が不可能であれば」


「それ以外は?」


「可能な方法を探します」


「…………」


俺は。


空を見る。


出た。


また。


出た。


これだ。


こいつら。


     ◇


歩く。


測る。


記録。


俺は。


考えていた。


人数。


少ない。


道。


ない。


器具。


壊れる。


天気。


変わる。


川。


増える。


寒い。


暑い。


夜。


星。


それでも。


毎回。


どうする?


を。


考える。


無理だから。


帰ろう。


じゃない。


どうしたら。


できる?


「…………」


俺。


こういう奴。


知ってる。


伊能忠敬。


俺だ。


正確には。


この身体の。


元の持ち主。


「…………」


そりゃ。


日本地図。


作るわ。


初めて。


ちょっと。


納得した。


頭のネジ。


外れてるけど。


     ◇


昼。


六人で。


飯を食う。


現地の人たちも。


いる。


俺は。


自分たちを見る。


少人数。


でも。


それぞれ。


役割がある。


門倉。


平山宗平。


伊能秀蔵。


吉助。


長助。


そして。


俺。


俺は。


名前を。


一人ずつ。


見る。


「…………」


最初は。


誰が誰だか。


分からなかった。


起きたら。


伊能忠敬。


知らない人。


いっぱい。


何?


どこ?


誰?


それが。


今。


違う。


顔。


分かる。


名前。


分かる。


何をする人か。


分かる。


「…………」


六人か。


今度は。


少し。


違って聞こえた。


たった。


六人。


じゃない。


この。


六人で。


ここまで。


来た。


     ◇


午後。


また。


測量。


一人が。


先へ。


一人が。


記録。


一人が。


確認。


声。


飛ぶ。


動く。


俺も。


動く。


「…………」


なんか。


チームっぽいな。


今さら。


そんなことを。


思う。


俺は。


最初。


この人たちに。


連れてこられた。


正確には。


門倉に。


首根っこを。


掴まれて。


引きずられた。


「…………」


思い出すと。


腹立つな。


「先生?」


「何でもない」


でも。


今は。


自分から。


歩いてる。


自分から。


測ってる。


「…………」


変わったな。


俺。


     ◇


夕方。


測量終了。


ウインドウ。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:23%】


「…………」


また。


二十三。


「なあ」


【…………】


「六人で頑張ってるんだから、ちょっとサービスしてくれない?」


【23%】


「二十四に」


【23%】


「ならない?」


【23%】


「…………」


交渉。


失敗。


     ◇


宿へ向かう。


俺は。


六人を。


見る。


今日も。


全員いる。


「門倉」


「はい」


「俺たち六人なんだよな」


「本日、何度目です?」


「いや」


俺は。


少し笑う。


「少ないと思ってさ」


「はい」


「こんな広いところ測るのに」


「はい」


「たった六人」


門倉は。


何も言わない。


俺は。


続ける。


「でも」


今日。


一日。


見ていた。


六人。


それぞれ。


動く。


現地の人に。


助けてもらう。


できないことは。


できる人に。


頼む。


そして。


自分たちは。


自分たちの仕事をする。


「…………」


案外。


なんとかなるもんだな。


門倉が。


少し。


笑った。


「先生」


「何?」


「まだ二割ほどなのでしょう?」


「…………」


俺は。


止まった。


「なんで知ってる!?」


「先生が昨日から、二十三、二十三と何度も」


「…………」


俺。


声に。


出してたのか。


「門倉」


「はい」


「忘れて」


「難しいかと」


「忘れろ!」


     ◇


歩く。


六人。


小さい。


蝦夷地は。


でかい。


圧倒的に。


でかい。


でも。


その小さな。


六人が。


今日も。


地図を。


少しずつ。


作っている。


俺は。


前を見る。


「よし」


門倉が。


俺を見る。


「何でしょう?」


「明日もやるぞ」


一瞬。


静かになる。


「何?」


「いえ」


門倉が。


笑った。


「参りましょう」


「うん」


俺も。


歩く。


その時。


ふと思った。


六人。


少ない。


本当に。


少ない。


だからこそ。


一人でも。


欠けたら。


困る。


「…………」


俺は。


みんなを見る。


頼むから。


誰も。


倒れるなよ。


俺も。


含めて。


その願いが。


どれだけ。


難しいことなのか。


この時の俺は。


まだ。


分かっていなかった。

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