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コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

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25/85

第25話「昼は地面、夜は宇宙」

朝。


目が覚めた。


「…………」


眠い。


ものすごく。


眠い。


昨日。


朝から。


荷物をまとめた。


歩いた。


測った。


荷崩れした。


直した。


川を渡った。


また歩いた。


また測った。


目的地に着いた。


荷物を下ろした。


そして。


夜。


星を測った。


「…………」


俺は。


布団から。


出たくない。


昨日。


門倉に聞いた。


いつ休むの?


答え。


今から。


そして。


今。


朝。


「…………」


短いんだよ。


俺は。


布団を。


頭までかぶった。


「先生」


来た。


「…………」


聞こえない。


「先生」


聞こえない。


「朝です」


知ってる。


「出立の支度を」


「…………」


俺は。


布団から。


顔だけ出した。


門倉隼太。


いる。


「門倉」


「はい」


「相談がある」


「何でしょう」


「今日」


「はい」


「休みにしない?」


「参りましょう」


「相談終わるの早すぎない!?」


     ◇


朝。


測量開始。


歩く。


測る。


記録。


また。


歩く。


「…………」


眠い。


歩く。


「…………」


眠い。


測る。


「…………」


眠い。


記録。


「…………」


眠い。


「先生」


宗平が。


俺を見る。


「何?」


「大丈夫ですか?」


「眠い」


「左様ですか」


「それだけ!?」


誰か。


休もうって。


言ってくれ。


誰も。


言わない。


     ◇


しばらく。


進む。


距離。


測る。


方角。


確認。


記録。


俺は。


測量器具を見る。


最近。


少しずつ。


分かるようになってきた。


最初。


これ何?


どうするの?


だった。


今は。


完璧じゃない。


でも。


何を。


やっているのか。


くらいは。


分かる。


昼。


地面。


測る。


距離。


方角。


地形。


そして。


夜。


星。


「…………」


待て。


俺は。


止まった。


「門倉」


「はい」


「今さらなんだけど」


「何でしょう?」


「俺たち」


「はい」


「昼間、測量してるよな?」


「もちろんです」


「夜も測量してるよな?」


「天測を行います」


「…………」


俺は。


指を折る。


朝。


仕事。


昼。


仕事。


夕方。


移動。


夜。


仕事。


「…………」


休みは?」


「先生?」


「いや」


俺は。


もう一度。


考える。


普通。


昼に働く人。


夜。


休む。


夜に働く人。


昼。


休む。


それが。


俺の知っている。


世界。


でも。


俺たち。


昼。


働く。


夜。


働く。


「…………」


これ。


俺は。


真顔になった。


「二交代制を一人でやってない?」


「にこうたい?」


「知らなくていい!」


     ◇


昼。


休憩。


俺は。


飯を食べながら。


空を見る。


青い。


晴れてる。


いい天気。


昔なら。


思った。


気持ちいい。


今は。


違う。


「…………」


今日も星見えるな。


嫌な。


予測能力が。


身についた。


門倉が。


俺の視線に。


気づく。


「どうされました?」


「今日」


「はい」


「夜、曇ると思う?」


「この空では難しいかと」


「…………」


希望。


消えた。


「先生」


「何?」


「天測がお嫌いですか?」


俺は。


少し。


考える。


嫌い。


と言えば。


嫌い。


眠い。


寒い。


長い。


でも。


「…………」


嫌いっていうか」


俺は。


飯を食べる。


「昼も働いた後にやるのが嫌」


宗平が。


笑った。


「笑うな!」


     ◇


午後。


また。


測る。


海岸線。


進む。


止まる。


測る。


記録。


俺は。


だんだん。


気づいてきた。


昼に。


地面を測る。


それだけじゃ。


駄目。


夜に。


星を見る。


自分たちが。


どこにいるのか。


確かめる。


昼の測量。


夜の天測。


両方。


必要。


「…………」


分かるよ。


理屈は。


分かる。


正確な。


地図。


作るんだもんな。


でも。


「一日に詰め込むなよ……」


「先生?」


「なんでもない」


     ◇


夕方。


今日の。


測量終了。


「終わった……」


俺は。


大きく。


伸びをする。


やった。


昼の部。


終了。


「先生」


門倉。


来た。


俺は。


先に言う。


「分かってる」


「何がでしょう?」


「星だろ」


「まだ何も申しておりません」


「どうせ星だろ!」


門倉が。


空を見る。


俺も。


見る。


晴れ。


「…………」


星だな。


     ◇


夜。


出た。


星。


たくさん。


出た。


「…………」


綺麗だな。


腹立つくらい。


綺麗。


俺たちは。


器具を。


準備する。


測る。


記録。


また。


測る。


「…………」


俺は。


空を見る。


星。


そして。


昼間。


歩いた。


海岸を。


思い出す。


昼。


地面。


夜。


空。


「…………」


なんか。


すごいこと。


やってるな。


ふと。


思った。


自分たちが。


どこにいるのか。


地面から。


測る。


空からも。


測る。


二つを。


合わせる。


そして。


地図にする。


二百年以上。


未来から。


来た俺でも。


普通に。


すごいと思う。


「…………」


伊能忠敬。


俺は。


心の中で。


本物に。


話しかける。


あんた。


すげえな。


でも。


一つだけ。


言わせて。


「スケジュールはおかしい」


「先生?」


「なんでもない!」


     ◇


天測。


続く。


測る。


記録。


確認。


「…………」


眠い。


やっぱり。


眠い。


感動。


した。


すごいとも。


思った。


でも。


眠いものは。


眠い。


「門倉」


「はい」


「あとどれくらい?」


「もう少しです」


「その『もう少し』信用できないんだよな」


最近。


分かってきた。


この時代の。


もう少し。


長い。


     ◇


ようやく。


終わる。


「終わった……」


俺は。


座り込む。


空を見る。


星。


綺麗。


今なら。


少しだけ。


素直に。


そう思える。


ウインドウ。


現れる。


【第一次測量 蝦夷地】


【測量進捗率:23%】


「…………」


消えろ。


【23%】


「今日は見たくない」


消えた。


「言うこと聞くんだ……」


そこは。


ちょっと。


驚いた。


     ◇


俺は。


宿へ。


戻る。


門倉たちも。


一緒。


歩く。


「門倉」


「はい」


「明日も?」


「測量です」


「昼?」


「もちろんです」


「夜?」


「天候が良ければ天測を」


「…………」


俺は。


空を。


見上げた。


明日。


雨。


降らないかな。


いや。


雨は。


測量できない。


進捗。


増えない。


「…………」


駄目だ。


晴れてほしい。


でも。


晴れたら。


夜も。


仕事。


「…………」


詰んでない?


門倉が。


俺を見る。


「先生?」


「晴れてほしいけど晴れてほしくない」


「はあ」


「この気持ち分かる?」


「分かりませぬ」


「だよね!」


宿。


着く。


俺は。


布団へ。


向かう。


今日は。


寝る。


すぐ。


寝る。


その前に。


一つ。


思った。


伊能忠敬。


日本を。


歩いて。


測った人。


違う。


昼。


日本を測って。


夜。


宇宙を測ってる。


「…………」


俺は。


布団に入る。


「仕事量バグってるだろ」


目を。


閉じる。


その時。


門倉の声。


「先生」


「…………」


嫌な。


予感。


「何?」


「明朝ですが」


「早い?」


「はい」


「もう聞きたくない!」


第一次測量。


蝦夷地。


進捗率。


二十三パーセント。


俺は。


今日も。


地面と。


星を。


測った。


そして。


明日も。


測るらしい。


「…………」


伊能忠敬。


やっぱり。


頭のネジ。


何本か。


足りないと思う。

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