第14話「赦しと誓いの陽だまり」
レオンハルトは、ルミナスの黒い装束と双剣を見て、すべてを察したようだった。
彼の顔には怒りも驚きもなく、ただ深い悲哀だけが浮かんでいた。
「……野営地の見張りが倒されていた。君の仕業だな」
「はい。彼らは、もうこの街には近づきません」
ルミナスは顔を覆っていた布を外し、かすれた声で答えた。
レオンハルトはゆっくりと歩み寄り、ルミナスの前に膝をついた。
大きな手が伸びてきて、ルミナスの血のにじむ手首をそっと包み込む。
「どうして、また一人で背負い込んだ」
静かな問いかけ。
その声の響きに、ルミナスは耐えきれずに目を伏せた。
「……あなたを、これ以上巻き込みたくなかった。私の過去のせいで、あなたの街が、あなたの仲間が傷つくのを見たくなかったんです。私は、あなたにふさわしい人間じゃない。血に汚れた手で、あなたの隣に立つ資格なんて……」
ぽつり、ぽつりと、心の奥底に溜まっていた言葉がこぼれ落ちる。
言い終わる前に、レオンハルトの力強い腕がルミナスを引き寄せた。
革鎧の硬い感触と、彼自身の高い体温がルミナスを包み込む。
「馬鹿なことを言うな。俺は、君の過去ごと君を愛しているんだ。君がどれだけ自分を貶めようと、俺にとって君は、この世界で尊い存在だ」
耳元で囁かれる声は、少しだけ震えていた。
その言葉が、ルミナスの心の防壁を打ち砕いた。
「……っ、あ……」
声にならない嗚咽が漏れる。
ルミナスはレオンハルトの背中に腕を回し、その大きな体を強く抱きしめ返した。
嵐の夜、鬱蒼とした針葉樹林に雷が落ちたときのような、暴力的で焦げついた木の匂いが、今はひどく安心できた。
もう、隠す必要はない。
逃げる必要もない。
この熱を、この香りを、自分のものにしていいのだ。
Ωとしての本能と、ルミナス個人の感情が、一つに溶け合う。
レオンハルトはルミナスの背中を優しくなでながら、静かに言葉を続けた。
「帰ろう、ルミナス。君の帰る場所は、あの温かい厨房だ。俺が、必ず君を守り抜く」
二人は立ち上がり、身を寄せ合うようにして洞窟を出た。
夜が明けようとしていた。
東の空が白み始め、深い森の木々が朝陽に照らされていく。
冷たい風が吹いたが、ルミナスはもう寒さを感じなかった。
隣を歩くレオンハルトの手が、ルミナスの手をしっかりと握りしめている。
アークライトの街へと続く道は、朝の光に満ちて輝いていた。




