↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/11

09 聖女

ここは東部の街から街道を王都に向かってしばらく進んだ場所


辺りはひたすら平原です

その何もない平原に私とタイヨー様はいます

私達は今から村づくりに着工します


「この辺りでどうかな?」


タイヨー様の問いに、私は辺りを見回して言いました


「そうですね。ではここから南側に向けて森を作りますね。強力な魔獣が発生しないように小さめの森にしましょう。では『木々は生まれ森となれ』」


私は世界樹さまの力を大地に送りました

またたく間に木々が生い茂り、直径10キロ程の森が出来上がりました


「さすがだねー!あっという間に森が出来ちゃったよ。」


タイヨー様が驚きます

世界樹さまの力は絶大で、これくらいの事は簡単にやってのけます


「じゃあ、まずは村になる場所まで道を作ろうか。『風の刃』『重力操作』」


今度はタイヨー様が力を使い、森の奥にむけて20メートルほどの幅で木を切り倒しました

そして伐採した木を重力操作でまとめておきます


「次は『掘り起こし』『重力操作』」


今度は木が切り倒された場所の土が掘り起こされ、木の根が取り除かれていきます

そして掘り起こされた土に重力をかけました

すると20メートルの幅の平らな道が出来ました


「タイヨー様もすごいです!素敵です!」


「でも本番はこれからだよ。」


タイヨー様は笑いながら答えました


森にできた道を200メートルくらい進んだところで、タイヨー様が私に聞いてきました


「この辺りに村を作ってみる?」


「そうですね。街道からこれぐらい入ったところが良さそうですね。」


「じゃあ2キロ四方くらいの大きさで作ってみるよ。『風の刃』」


タイヨー様から発生した風の刃が木々を切り倒していきます

あっという間に2キロ四方が切り倒されました


「次は『掘り起こし』『重力操作』」


なんと2キロ四方全体の土が一気に浮かび上がりました

そしてフカフカにしながら地面に戻しました

あまりにもスケールの大きな開拓です


「畑と居住地は半々位にする?」


私は少し考えましたがイメージできません


「そうですね。参考にするものも無いですし、とりあえず半々でいきましょう。やり直しは何度でもできますしね。」


「そうしたら『重力操作』」


木々を倒して出来たフカフカの土の広場半分に重力を与え、平らな大地を造りました

残りのフカフカの大地は農地です


ここから私の出番です


「じゃあ今度は私の番ですね。『木のお家』」


すると木が生えてきて、それが可愛らしい木の家になりました


「僕たちの新しい拠点が完成したよ!王女さま凄いよ!」


タイヨー様は喜びますが、私はちょっと不機嫌です


「どうしたの?王女さま?」


私は深いため息をつきました


「タイヨー様。私たちはこれからここに一緒に住んで、村興しをしようとしているのですよ。なのに王女さまって呼ぶのはどうかと思いますが?」


私は自分でそう言っておきながら、なんだか急に恥ずかしくなってしまいました


「そうだよね。ここで王女さまって呼ぶのも何か変だよね。じゃあロキシーさん。」


タイヨー様

分かっていませんね


「タイヨー様はユキ様の事をユキ、ライア様の事をライア、ディーネ様の事をディーネって呼んでいますよね?はい。もう一度私を呼んでください。」


タイヨー様はなるほど……と頷き言いました


「……ロキシー。」


途端に私もタイヨー様も顔を真っ赤にして俯いてしまいました


「でもノルディカさんやスミス王は僕の事をタイヨー君って呼ぶよ。タイヨー様はおかしくないかな?」


「そうね……わかりました。タイヨー君。」


今度はニッコリ微笑みながら言いました


「うん!ロキシー!」


「はい!タイヨー君!」


私達は、この瞬間からお互いの呼び方が変わりました


「ところでロキシー。木の家をとりあえず1軒建てちゃったけど……村の中の道はどうする?」


私はまったく考えていませんでした

そしてやっぱり村作りのイメージがまったく湧きません


「これは困ったね。」


「ええ、困りましたね。」


と言うことで私達は村長予定のラングさんに聞くことにしました

ラングさんは今は東部の街で、貧民層の住人の移住計画を立てています

なので私達はとりあえず東の街に向かうことにしました


「あ!ちょっと待って!いきなり森が出来て中に木の家があったら、街道を通った人がビックリしちゃうよね。今は、まだ人が入らないようにゲイルに見張っててもらおうか。」


私は疑問に思いました


「そう言うのはライアさんが得意そうじゃないですか?」


タイヨー君が顔を強張らせて言います


「んとね、ライアには何故か怒られそうな気がするんだ。」


「お呼びですかな?タイヨー様。」


「ビックリしたーー!」


いつの間にかゲイル様が後ろにいました

そして怖い顔をしたライア様もいます

タイヨー君は何故か挙動不審です


ライア様が静かに言います


「タイヨー様。何か怒られそうな事をしましたか?」


タイヨー君はオロオロしてます


「えっとね、森を作って村になる場所を作ったんだけど……」


ライア様とゲイル様が驚いて辺りを見回しました

この森をたった今作り上げたと?


「タイヨー様!!!」




私とタイヨー君は、ライア様の前で正座をしています


「ある日突然、こんな立派な森が出来ていたら、道行く人々が混乱するでしょ!道を間違えたと思うかもしれないでしょ!しかも入り口の道までご丁寧に……これでは入ってくださいと、言っているようなものではありませんか!御二人は神なのですよ!お気軽に怪奇現象を起こさないでください!」


「あ!これがタイヨー君が言っていた、目を三角にして怒るライア様なんですね。」


「ロキシー様!反省してください!」


ライア様に怒られてしまいました


「はい!」


私は肩をすぼめました


タイヨー君は言い訳をします


「でも、僕もやり過ぎたかと思って、ゲイルに見張っててもらおうかと思ったんだよ?」


「そんなの簡単です。」


そういうライア様が見せたのは1枚の看板

そこには


「王家直轄の森 立ち入り禁止」


と書いてあります


「え?それでいいの?」


「充分ですよ。」


まぁ確かに大丈夫でしょう




「ゲイルだけを呼ぼうとしたのに、ライアまで一緒に来ちゃったよ。」


タイヨー君は肩を落として言いました

でも私は違います


「私は怒ったライアさんを見ることが出来て嬉しかったです。以前、タイヨー君が面白おかしく話してくれましたからね。」


「そうだったね。でも1回見れば充分でしょ?」


「そうですね。」


私達は笑い合いました


今、私達はジロさんからお借りした馬車で東部の街に向かっています

馬車はトコトコのんびり進みます

御者台にタイヨー君と並んで座っています


「こういった荷馬車に乗ることは無かったでしょ?大丈夫?体あちこち痛くない?」


タイヨー君が心配してくれます


「いえ。とっても楽しいですわ。私、御者台に座るなんて初めてですもの。景色もとっても素敵ですわ。」


しばらく馬車を走らせると、やがて東部の街の領主館に着きました

タイヨー君が門兵さんに挨拶します


「こんにちはー」


「はい。こんにちは……って、ロキシー王女!?」


私が行商の馬車の御者台に座ってきたことに驚いていました


「はい。こんにちは。今日はラング財務官に面会に伺ったのですが、いらっしゃいますか?」


門兵さんは緊張しながらも答えてくれます


「先程、貧民層の居住地から戻ってきたところです。まずは中にお入りください。」


そう言われて馬車を領主館内に進めました


領主館に入り応接室で待っているとラングさんがやってきました


「こんにちは。今日はどのような御用で?」


ラングさんの質問に私が答えました


「はい。じつは新しい村作りで農地と居住地は作ったのですが、私たちは村とか街とかを作ったことがないので、何処に何を作れば良いのか分からないのです。それを相談しに来ました。」


「そうでしたか。でも住居建設とかは、こちらで行うつもりでしたよ。ともかく、私もその場所に一度連れて行ってください。」


こうして3人で新しい村に向かうことになりました


タイヨー君が御者台に座り、馬車の中にラングさんと私が座ります

私はラングさんに聞きました


「どうです?新しい村へ住んでくれそうな人は集まりましたか?」


ラングさんは難しい顔をして答えます


「中々難しいですね。やはり人身売買をしていた事で、街を出る事自体に懐疑的な者が多いのです。」


それはそうですよね

今まで食事を与えると言って子供達を誘拐していたのです

他に居住地を作ったとから行こうと誘っても中々信じてもらえないでしょう


「そもそも、働く気力が無い者が多いのが問題ですね。健康状態も精神状態も悪い者が多いのです。まずは地道に声を掛けていくしかないでしょうね。」


それを聞いて私は考えました


「それでは、今度は私達も一緒に伺いましょう。そうですね……炊き出しのタイミングが良いでしょうか。そこで身体に不調のある方々に回復魔法を使いましょう。その後で移住を勧めてみるのはいかがでしょうか?」


ラングさんは驚きました


「そうしていただければ助かります。炊き出しは毎日行っていますので、明日にでもお願いできますか?」


私はタイヨー君に確認すると微笑んで答えました


「ぜひ伺わせてください。」




しばらく馬車を走らせると、新しい村となる森が見えてきました

ラングさんが不安そうな顔をします


「はて……ここに森など無かったのですが……いったい何が……」


それに対して私が答えました


「森を作って、その中に新しい村を作りました。森の生命力で住民も作物も元気になりますよ。」


「そんな事をできる人がいるのですか?いや……ドラゴン様達と親交がありましたね。」


慌ててタイヨー君が答えます


「まぁそうです。いろいろな人の力を借りました。」


私はその様子を見てクスクス笑ってしまいました




馬車は森の中の道を行きます

ラングさんは物珍しそうに周囲を伺っています


「着きましたよ。ここです。」


ラングさんはとても驚いています

私達も驚いてしまいました


何故って、先程出発した時よりも、その場所は村らしくなっているのですから

どうやら私達を待っている間にゲイル様とライア様が、森と村の境界に壁を作り、木の家を十数件作ったそうです


ラングさんが納得しています


「深緑竜さまとドライアド様のご助力があったのですね。納得しました。」


タイヨー君は焦りながら答えました


「そうです。頼りになる協力者です。」


私はその様子に思わず笑ってしまいタイヨーに小声で言いました


「なるほど。タイヨー君は今までも、こうやって自分の実力をひた隠しにしてきたのですね。」


あらためて村を見渡したラングさんが感嘆の声をあげました


「凄い!なんて素晴らしい村なんだ!これなら私も胸を張って村人を募ることが出来ます!」


ラングさんの絶賛にライア様が言いました


「では森の精霊であるドライアドが、この畑を祝福しますわ。『豊穣』」


すると畑が淡く光りました


「私が祝福した畑です。豊作間違いなしですわ。」


ラングさんが褒め称えます


「おお!精霊様!ありがとう御座います!」




その夜、私は久しぶりに日記帳を開きました

本当に久しぶりです

何しろいろいろあり過ぎましたから……


私が死の淵から生き返った事


その過程で世界樹さまとひとつになり、生命神になってしまった事


でもそれらよりも、今こうしてタイヨー君と村を作って一緒に暮らし、お互いをタイヨー君、ロキシーと呼びあうようになった事……


まるで夢のようです


「ロキシー、何を書いてるの?」


「タイヨー君には秘密です。」


今、この時間、私はとても幸せです




翌日、タイヨー君と私は東部の街に向かいました

そしてラングさんと合流し、貧民層の居住地へと馬車を走らせました


周囲はだんだんと廃墟のような景色になってきました

腐敗臭も漂ってきました


さらに進むと広場のような場所に出ました

そこでは既に炊き出しの準備が行われており、多くの住人たちが集まってきています


集まってきた人々は皆やつれ目も虚ろです

それは大人も子供も同じで希望も何も無く、ただ生きているだけの存在でした


炊き出しを配給する前にラングさんが皆に話始めました


「皆さん。新しく村を作っているラングです。以前から村民を広く募っているところですが、今回はその村の完成の報告と、助力していただきましたロキシー王女に来ていただきました。」


さすがに王女と言う言葉に人々は反応しましたが、それだけでした

でも私は気にせずに話し始めました


「初めまして。私はバートン王国第2王女ロキシーです。この度は新しく農業を主産業とする村を立ち上げました。今は、その村の住人を募っているところです。皆様からも希望者を募っているところですが……まずは体力が無くては話を聞く気にもなれませんよね。そこで食事前に、私達が皆様に回復魔法をかけさせていただきます。」


そう言って私はタイヨー君を見て頷き合いました

私は呟きます


『生命の息吹』


すると人々が淡く光り始めました

そして人々の目に生気が宿り始めました


タイヨー君も呟きます


『癒しの雨』


すると人々に金色の光が雨のように降り注ぎました

人々は病から回復し、みるみるうちに元気になっていきました


「……おお……聖女さま……」


人々は私に跪きました


「私は聖女などではありませんよ。私と隣のタイヨー君が回復の魔法を使えるだけです。まずは皆様食事にしましょう。私達も多少の食材を持ってきましたので。」


そう言って、私はゲイル様が捕まえてきてくれた猪を提供しました

これには炊出しを行っていた人々が喜びました


「これはありがたい!早速解体します。みんな!今日はバーベキュー大会だ!」

「おーー!」

「火を起こせ!」


気力がみなぎってきた人々には少しずつ笑顔が戻り始め、肉を焼く準備を始めました

その様子を見てラングさんが目に涙を浮かべました


「ここの人々に、この様な笑顔が浮かぶ日が来ようとは……」


私はそんなラングさんに言葉をかけます


「これはキッカケです。人々を回復し、食事を与える事で体力も回復させます。そこで、やっと農村に来てくれる人を募る事ができます。その話を聞いてもらうことができます。ラングさんのお仕事は、ここからが本番ですよ。」


ラングさんは私の話を聞いて力強く頷きました


「わかりました聖女さま。こうして作っていただいた機会を無駄にはいたしません。」


「だから私は聖女ではありません。」


炊出しが振る舞われ、解体した肉も次々と焼かれていきます

人々は、お腹が満たされました


「ありがとう御座います!聖女さま!」

「聖女さま!ありがとう!」


私は困ってしまいました


「私は聖女ではありませんよ。それよりも皆さん。気持ちに余裕が出てきたところで再びお話をさせてください。私は王の命により、この街の近くに新たに村を興すことになりました。現在、村は完成し、住居と農地を用意してあります。いま、村民を募っておりますので、ご希望の方は村長になられるラングさんのお話を聞いてください。」


話を聞いた人々で関心を持った人がラングさんの元に向かいました

これで住民が集まれば良いのですが




後日、ラングさんが貧民層からの希望者を連れて農村にやってきました

見ると親子連れが多いようです

やはり貧民層の居住地では子供の未来に不安があったのでしょう


人々は広大な面積の村にとても驚いていました

子供達は木の家に目を輝かしていました


「ようこそ!森の村へ!」


私は皆を歓迎しました

人々が挨拶を返します


「聖女さま、よろしくお願いします。」


「ですから聖女ではありませんよ。」


人々はラングさんの指示のもと住居が割り振られました

皆、木の家に目を輝かして喜んでいます


「今回、この家を作ってくれたのは、こちらのライア様です。彼女は西にある、深緑の森の管理者であるドライアド様で、わざわざここまで来ていただけました。」


住民達は皆ライア様に感謝しました


「素敵な家をありがとう御座います。」


「喜んでもらえて良かったですわ。」


ライア様は嬉しそうです


すると、空から巨大な魔獣が近づいてきました

それは濃い緑色をしたドラゴンでした

住民達は驚き慌てました


「ドラゴンが襲ってきた!」

「ここもダメだ!」

「逃げろ!」


慌てる住民を、私は声を張り上げ制しました


「皆さん!落ち着いてください!あちらも深緑の森から来てくれた仲間です。あの方は深緑竜さまです。」


住民達は驚きました

元貧民層の人々と言えども、伝説のドラゴンの話は聞いたことがあります


「あれが……話に聞いたことがある深緑竜さま……」


その深緑竜さまが猪を捕まえて持ってきました

そして猪を皆の前に置きました

深緑竜さまはドラゴンから執事の姿に変化すると言いました


「皆さま。何はともあれ、まずは体力をつけなくてはなりません。早速歓迎の料理を用意いたします。」


皆の声が歓声に変わりました


「さすが聖女さま!」

「深緑竜さまを従えていらっしゃる!」

「聖女さま万歳!深緑竜さま万歳!」

「万歳!万歳!」


ゲイル様が皆を制し、話します


「ロキシー様は王女の立場ながら、先日人身売買されそうになった子供達を、まさに命懸けで救いました。民を守り平和を愛する、まさに聖女のようなお方です。その聖女さまが作ったこの村が平和になるのは当然の事です。そして聖女さまが信頼を置くラング村長は立派なお方です。皆は安心して、ついて行くと良いでしょう。」


ゲイル様の話を聞いた住民達が膝をつき私に頭を垂れました


「聖女さま……どうか私達をお導きください。」


「私は聖女では……いや、もういいです。皆さん。よく働き、よく食べ、この村を共に発展させていきましょう!」


「おーー!」

「聖女さま!万歳!」


そして始まるバーベキュー大会


皆が笑顔です

子供達も笑顔です

私はちょっと複雑な心境です


「どうしかしましたか?聖女さま。」


笑いながらそういうタイヨー君に、私は頬を膨らませて反論しました


「もう!タイヨー君まで!私は聖女では無いのに。」


「確かに聖女では無く、神さまそのものだからね。」


タイヨー君は悪戯っぽく言って続けました


「神さまって言われるより聖女さまと皆に慕われた方が、皆もロキシーに話しやすいんじゃないかな?」


ゲイル様も近くに来てタイヨー君の賛同します


「そうですね。更に王女さまよりも聖女さまの方が皆も親しみやすいでしょう。」


しかしゲイル様は少し顔を険しくして言います


「ただ聖女と言う肩書を、快く思わない人々もいるかも知れませんね。」


タイヨー君が驚いています


「え?そういう人もいるの?」


「はい。神を信仰する人々には、軽々しく聖女と言われる人が存在する事を快く思わないものもいるでしょう。」


私もその話に付け加えます


「そうですね。あまりにも聖女の名が広まると、宗教国家などは良い顔をしないでしょうね。」


「しかし、一国の王女が民を救い、貧民層にも分け隔てなく接する行動に対して、聖女のようだと評する事は何もおかしくはありません。ロキシー様が、自ら私は聖女です……等と名乗らなければ大丈夫でしょう。」


ゲイル様がそう言うので私は頬を膨らませて反論します


「私は自ら聖女なんて名乗ませんから!」




住居も落ち着き、バーベキュー大会でお腹も満たされた住人は早速畑に移動しました

ライア様の指導で、まずは育てるのが簡単なジャガイモを植えていきます


皆で種芋をせっせと植えていきます

皆が元気に汗を流しています


その様子を見て、私は確かな手応えを感じていました


「まずは自分たちの力で生きていく術を身につけていかないとね。ジャガイモ以外にも何か育てていきたいね。あと森の中にある村だから、狩りなども自分たちで出来るようにしたいね。」


タイヨー君がそう言うと、ライア様が答えました


「でしたら、まずはこの森を実り多き森にしましょうか。ロキシー様、森の中に行ってみましょう。」


「私にもできるでしょうか?」


不安げな私にライア様は優しく言いました


「ロキシー様は私などよりも遥か上位の生命神ですよ。イメージと力加減が分かれば、思い通りに森を作ることができるはずですわ。」


そう言ってライア様に連れられ、私は森の中に入っていきました


「ではロキシー様。お好きな果物を思い浮かべてください。そして、その果物がたくさん実っている様子を思い浮かべてください。」


私は赤いリンゴが実る木を思い浮かべました


「いっぱい実がついた『リンゴの木』!」


すると、赤くて美味しそうな実のついたリンゴの木が、目の前に生まれました

私は目を丸くして驚きました

ライア様が嬉しそうに言います


「そうです。今は1本ずつ木を生み出すのが良いでしょう。ロキシー様の力で一度に何本も木を生み出そうとすると、森の木が全てリンゴの木になってしまうかもしれませんので。」


「分かりました。1本ずつ、いろいろと生み出してみます。」


「ええ、徐々に増やしていってください。そうすれば、木の実を求めて動物達も自然に増えていきます。この森は豊かになるでしょう。」


「わかりました!」


こうして私は、ライア様に魔法の手ほどきをしてもらいました




その夜、日記帳を開いた私は、頭を抱えながらペンを取りました


聖女……

いやいや、聖女ではありません

だからといって神を名乗るのもムリですが……


ただ、まるで屍人のようだった貧民層の方々が生きる希望を得た事には私も喜びを感じました


これからも私は民の為に力を使います

その決意を記し、日記帳を閉じました



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。